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妊娠中の海外出張、行く?行かない?

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シンガポール拠点での仕事のオファーを出してくれた人との出会いは、私の妊娠中にさかのぼります。

私はとても元気な妊婦でした。つわりらしいつわりは感じたことがなく、お腹だけが順調に膨らんでいきました。産婦人科に定期検診に行くと、毎回「問題ありません」としか言われないので、会社を早退してまで行く価値があるのかを迷っていたぐらいです。初めて妊娠で私も不安だったので、念のために通い続けました。結局、私の妊娠は、最後までごく順調に進みました。

そんな私の妊娠中に、海外出張の話が持ち上がりました。上司は私が妊娠中であることを知っていたので、「無理しなくていいよ」と言ってくれました。私は返事を保留した上で、インターネットで「妊娠中、海外出張」と検索してみました。

インターネットには、否定的な意見がずらりと並んでいました。万が一のことがあったら後悔してもしきれないというのが主な論調でした。その中で、実際に妊娠中に海外出張に行った人の話も、いくつか見つけました。問題なく行ってきた人もいる事が分かりました。

次に、通っていた産婦人科の先生にお伺いを立てました。「会社から海外出張を打診されたのですが、行っても大丈夫ですか?」先生は答えて言いました。「それは自己判断です。気圧の影響はほぼないと言われています。でも、出張先で何かあったら医療機関が見つからないなどの事態はあり得るかも知れません。その辺まで含めて、ご自身でお考えください。」

夫にも実家の母にも相談しました。二人とも「さあねぇ」と首をかしげるだけでした。

私は少しずつ膨らんでいたお腹に手を当てて考えました。どう思う?
そして答えを出しました。多分大丈夫でしょう、行こう!

その時の出張が、結果的にシンガポール拠点からのポジションのオファーにつながりました。

当時、グローバルが開発した製品を、日本でも発売すべきかどうかを検討しており、その検討結果をグローバルのCEOに発表する大役を私が務めたのです。日本としての意思決定をする前に、その製品が実際に導入されている海外顧客を視察することが、私の妊娠中の出張の目的でした。そして、出張の結果を踏まえて作成した発表資料に、シンガポール拠点の責任者が眼を留めてくれたのです。

私たちは、意思決定をするというと、AかBかを選ぶことだと思いがちです。

Aのメリットはこれとこれ、デメリットはあれとあれ、と比較検証します。でも人生は、洗濯機を買うなら日立か東芝か、というように単純には出来ていません。

もし人生の分かれ道が下の図のように明確だったら、どんなに良いでしょう。きっと誰も「地獄」と書いてある方を選んだりはしないでしょう。

実際の人生の分かれ道には、明確な道しるべはありません。それは、むしろ、下の絵ようなイメージです。

私たちは、自分が何を選んでいるのかは知らされないまま、日々、選択を繰り返しています。そしてその日々の選択の積み重ねが、いつの間にか大きな差を生み出します。

私は、妊娠中に海外出張に行くかどうかを迷っていた時、その出張に行けば海外赴任への道が開けることなんて知りませんでした。海外出張自体は、それまでにも、年に1回以上の頻度で行っていました。どの出張も問題なく遂行することは出来ましたが、私がずっと夢みていた海外赴任にはつながりませんでした。それなのに、妊娠中に敢えて飛び出したこの時の出張が、後に私に海外で働くための切符をもたらしたのです。

あなたが掛けようかどうかを迷う一本の電話、行くべきかどうかを悩む飲み会、真面目に取り組むべきかどうかを疑う仕事。そんなところに明日のチャンスが隠れているのかも知れません。

そこで、2つめのレッスン・ポイントです。

分かれ道は、往々にしてそんなに明確じゃない。私たちは、日々、何かを選び続けている。その選択の積み重ねが、いつしか大きな差を生み出す。

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