「失敗した時に言われたく無い言葉」 Rev.1

「時間もったいないし、行きますか。」
「そうだね!行こう!」

親友であるBのテンションが高い声に、少し笑いながらコントローラーのボタンを押した。

今、このオンラインゲームに夢中だ。クラスでもやっている子は多いけど、多分上位に入る上手さだと思う。もちろん、ゲームの時間制限無しの家もあるから、そんな子達には勝てないけど、同じ時間だったらきっとオレの方が上手いはずだ。

いつもは上手い奴らと一緒にやっているけど、今日は塾があるらしく、親友のBと一緒にやる事になった。と言っても、誘ったのはオレだし、たまには勝ちにこだわらずにのんびりやるのも良いよね。でも、負け過ぎてランク下がるのは嫌だけど。

「おお、だいぶ上手くなったじゃん。」
「ありがと!Aくんは教えるのが上手いからね!」

Bはこのゲームを始めたばかりだし、のんびりしてる所もあって、正直あまり上手くない。でも、早く上手くなって欲しいし、文句ばかり言ってもつまらないからね。

「まあ、そうだね。感謝してくれて良いよ。」
「あはは、そうだね、ありがとうございます!」

わざとらしく偉そうに笑いながらプレーしていたのは、最初だけだった。

「ああ、ごめん!またやられちゃったよ。」
「はぁ〜〜、まあ、ドンマイドンマイ、しょうがないって。後はオレがやるし、大丈夫だから、のんびり見ててよ。」
「今回も、ごめんね。」
「いいって、Bは始めたばかりで下手なんだから、すぐにやられても仕方ないよ。」
「・・・なんかその言い方、嫌だなぁ・・・」

小さな声だったけど、Bは「嫌だ」と言った。え?なんで?こっちは気を使ったのに、言われたくなければ、ちゃんとやれば良いじゃん。色々と教えてあげてるし、オススメの動画も紹介して、それに負けてポイント減らさないように頑張ってるの、オレだよ?感謝してくれたって良いくらいなのにさ。

「ああ、しまった、Bごめん、やられちゃったよ。」
「ドンマイドンマイ!失敗は誰にでもあるし、しょうがないよ!後は任せてよ!」
「え、あ、うん。」

・・・なんかムカつく。集中切れたのはBが変な事言ったのが原因なのに、なんだそれ。そもそも、ミスったBを守るために動いたからで、なんで「ドンマイ♪」とか言われなきゃいけないんだよ?オレより下手なヤツに、上から目線で「任せてよ」とかマジに屈辱だ。

「あ、やられた・・・。」

だから言ったじゃん、調子に乗ってるからやられるんだよ。

「いや〜、さすがの先生も、勝てませんでしたねぇ。」
「ごめんね・・・。」
「いえいえ気になさらず、下手な人が調子に乗れば、それは勝てませんよ。」
「ちょっと!なんなの、その言い方!」
「は?Bが先にバカにしてきたんだろ!」
「え?ボク、バカになんかしてないよ?なんでボクがバカになんかするのさ!」

は?あれだけバカに・・・あれ?確かにバカにはされてないのか・・・。

「ボクが下手でヘマしてばかりで、Aくんが途中からイライラしてるのわかってたから頑張ったけど、やっぱり足でまといだったね。」

そうか、初めは余裕があって楽しんでたけど、負けが続いてポイントが減ってきて、勝手にイライラしていたのかも。そもそもBは始めたばかりで、下手なのは当たり前なのに、自分と同じくらいやれるでしょ、って思い込んでいた。

「ねえ!聞いてる!?」
「ああ、うん聞いてる。オレの方こそごめんな。Bは始めたばかりで下手なのわかってたし、不器用なのも知ってたのに、なんか期待し過ぎたみたいでさ。」
「言い方!」

え?本当の事を言っただけなんだけど、言い方ってなんだ?

「えーと、母さんが帰ってくる時間まであと1回か2回できるだろうから、これからは最初みたいに楽しくやろう・・・で、どう?」

時計を見ながら、残り時間を少しでも楽しくゲームしたくて、言ってみた。でも、これで合ってるのかな?ちゃんと謝った方が良い気もするけど、よくわからない。

「うん!いいよ!」

Bの元気になった声が聞こえて、ホッとした。良かった。まあ、減ったポイントはまた上げれば良いし、イライラして終わりたく無いもんね。よし、気を取り直していくか。

と思った時に、玄関が開く音がした。

「ただいまー!あ!またゲームやってる!宿題はしたの!?」

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