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おすすめに洗脳される僕たち

僕はほぼ全ての買い物をAmazonで済ませているのだが、おすすめ機能にいつも助けてもらっている。

例えばシャンプーを買うと、すぐさま「これを買った人はこんなものも買っています」と以前に買ったボディソープや洗顔料をおすすめしてくれた。どちらもちょうどなくなりそうだったので、ナイスタイミングだった。言われるがままカートに入れ、そのまま注文。Amazonのおかげで焦ってドラッグストアに買いに行く手間が省けた。

僕は本も同じくAmazonで買う。最近は電子書籍しか買っていない。紙の本と違って場所を取らないし、買ったらその場で読めるのが最高だ。これもAmazonのおすすめ機能はドンピシャで、いつも興味をそそられる本を僕に紹介してくれる。例えば最近は経済の本ばかり読んでいるのだが、まさに今読んでる分野の面白そうな本をピンポイントで教えてくれるのだ。これまたついつい買ってしまう。そして読めばちゃんと面白く、非常に勉強になる。本選びにおいてもAmazonは大活躍だ。

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このようにおすすめ機能はAmazonに限らずいろんなサービスで大活躍している。YouTubeは関連動画を山ほど教えてくれるし、Netflixは自分が好きそうな映画をパーセンテージでおすすめしてくれる。TwitterやInstagram、TikTokといったSNSも自分が好きそうな投稿やアカウントを紹介してくれるので、ずっと見ていても飽きない。現代においておすすめに触れない日はないだろう。

しかし、僕らは気付かないうちにおすすめに洗脳されている危険性がある。試しにこんな話を考えてみよう。

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カツオ君は毎朝、Google Chromeのトップページに出るおすすめ記事を読んで情報収集している。その日、カツオ君が気になったのは「海山商事の株価はまだまだ上がる」という記事だった。「これは気になる」とクリックしてザーッと読み、「なるほど!」と理解した。再びトップに戻ると、「海山商事の今期の業績は好調で前年比120%増の見込み」という記事がおすすめされていた。それも読んだカツオ君は、「よし!僕は正しいぞ。」とガッツポーズをした。実はカツオ君は海山商事の株を買っていたのだ。順調に伸びていく株価を見て、カツオ君は「もっと伸びろ!」と毎日願っていた。

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しかし1ヶ月後、海山商事の株は大暴落。カツオ君は大損を叩き出してしまった。「こんなはずじゃ…」カツオ君は泣きながらTwitterを開いた。彼はTwitterで有名な投資家を何人かフォローしていた。するとフォローしてるうちの何人かが「やっぱり海山商事は暴落したか…言った通りだ。」と呟いていた。よく見ると、彼らは1ヶ月前から「海山商事はそろそろヤバい。暴落してもおかしくない。」と発信していた。「どうして僕は気づかなかったんだろう…」カツオ君はがっくり肩を落としながら、大きくなっていく含み損を呆然と眺めながら、まだ上がるかもしれないという一縷の望みを捨てきれずにいたのだった…

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この話の怖いポイントはどこだろう。それはカツオ君がおすすめによって「自分にとって都合がいい意見」にしか出会えなかったところだ。Googleはカツオ君の検索履歴から、カツオ君が海山商事の株が上がると予想してることを完全に把握している。もちろんアルゴリズムに知性があるわけではない。アクセス数や滞在時間のデータから、カツオ君は海山商事に興味があり、そして株価が上がると書いた記事をよく読むという結論を導き出したのだ。カツオ君が記事をたくさん読み、読む時間が長ければ長いほど、カツオ君はGoogle広告を目にする。そしてクリック数や、見られた回数が多ければ多いほど広告主がGoogleに払う広告費は増え、Googleは儲かる。つまりGoogleはカツオ君がより多くの記事を真剣に読むよう、全力でカツオ君が興味を持ちそうな記事を見つけ出し、おすすめをしてくるのだ。

ここでGoogleは「カツオ君が株で損をしないように”海山商事の業績が悪化するかもしれない”と反対意見を書いた記事も読んでほしい」というようなおすすめは絶対にしない。Googleにとってはカツオ君が株で損をしようがどうでもいいのだ。反対の記事をおすすめしてクリックされないくらいなら、彼の読みそうな記事ばかりおすすめし続ければいい。カツオ君だって自分の楽観的な考えを否定される記事は読みたくない。そしておすすめされるがまま「海山商事の株価は上がる!」という記事ばかり読んでしまう。そしてカツオ君は「僕の予想は絶対に正しい」と考えが偏ってくる。反対意見に出会わなかった結果、自分を客観的に見ることができなくなったのだ。

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このようおすすめばかりに従っていると、自分に都合の良い意見しか目に入らなくなる危険性がある。閉ざされたシステムの中でのコミュニケーションや繰り返しによって、信念が増幅されたり、強化されたりする状況を「エコーチェンバー」と呼ぶ。エコーチェンバーとは直訳すると「反響室」のことだ。自分の声が自分に跳ね返ってくる部屋、これが今のSNSをはじめとするインターネットサービスだ。自分の趣味嗜好に合うものをアルゴリズムが導き出し、ひたすらそれがおすすめされ続ける。自分の居心地のいいものに囲まれ、いつしか自分が絶対に正しいと過信するようになる。

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おすすめの恐ろしさは情報の偏りだけではない。皆さんはYouTubeやTikTokのおすすめ動画を何十分何時間も何となく見続けたことはないだろうか。僕は何度もある。中学生まで野球をやっていたこともあって、よくプロ野球の動画を見る。今日の試合のハイライトを見ていたら、おすすめに今日のファインプレー集が出てくると、ついつい見てしまう。そして今度は日本を離れメジャーリーグのスーパープレイ集がおすすめされ、これまたクリックしてします。すると今度は動画に出てきた選手のモノマネ動画が出てきて、これまた見ると確かに似ていて面白い。すると今度はお笑い芸人の漫才の動画が出てきて、また見てしまう。気がつけば全く関係ない動画を延々と再生し続け、1時間、2時間とどんどん時間が過ぎてしまうのだ。

このようにおすすめの強力な誘惑によって、僕らは貴重な時間をどんどん吸い取られていく。おすすめによって好きなものだけに囲まれたインターネットは、北欧家具に囲まれた暖炉のある暖かい家のように、田舎のおばあちゃんの家にあるコタツのように、高級ホテルのフワフワのキングサイズのベッドのように、どこまでも居心地がいい。ここから出たくない。誰しもそう思う。そして身動きが取れないまま、思考が停止し、時間だけひたすらに奪われていくのだ。

こうした影響の恐ろしいところは、本人に自覚がないことだ。興味のある記事を読んで情報収集をし、本を読んで学ぶことは正しい。良い行いだ。しかし気づかないうちに流されていく恐れがある。自覚がない分、修正するのが困難だ。

僕が提案する対処法のひとつは、とにかく大量に情報を入れることだ。例えば僕は毎日自分がブックマークしてる30個ほどのサイトを一気に開き、気になった記事を片っ端から開いてドヒャーっと読む。ここで大切なのは同じ話題でも複数のサイトの記事を読むことだ。例えば東洋経済オンラインとダイヤモンドオンラインを僕は毎日チェックしているが、同じ経済メディアなので扱うテーマは被る。しかし被ったとしてもどちらもチェックをする。記者によって物事を見る角度が異なり、より客観的に情報を得ることができるからだ。そして片っ端から開いて大量に読み込む方法だと、おすすめされた少数の記事だけを読んで情報が偏る心配がない。

本も同じで、Amazonのおすすめばかりに頼ることをやめた。僕はほぼ毎日本屋に行くのだが、気になった本はできるだけ読むようにしている。毎日足を運んでいるにも関わらず、初めてみる本が必ずある。自分が決して読まないような本も、あえて手にとってみる。そうすることで世界がどんどん広がっていく。また尊敬できる友人のおすすめを参考にするのも手だ。僕はずっと「本くらい自分で選んで大量に読もう」と書いていたが、信頼できる友人のおすすめは参考にしている。これもまた自分の好きな本ばかり読んで視野が狭くなることを防ぐ作戦の一種だ。

そしてYouTubeやTikTokをボーッと見てしまう人は、アンインストールした方がいい。僕はスマホからどちらも消した。今までを振り返ってみても、YouTubeやTikTokを見たことで得をしたことが一度もない。それでも息抜きのためにYouTubeだけはiPadに入れたが、iPadは大きく何度も開いたりはしないので頻度はかなり落ちた。おかげでもっと大切なことに時間が使えるようになり、とてもハッピーだ。

おすすめの誘惑は想像以上に強い。気づかないうちに悪い方向に走らされている可能性がある。それほどまでに各種サービスのアルゴリズムは強力で、僕らの趣味嗜好を完全にキャッチしている。まずはこの事実を知ることがスタートだ。おすすめとの付き合い方を今一度見つめ直し、大切な時間を有意義に使っていこう。それでは素敵な1日を。


最強になるために生きています。大学4年生です。年間400万PVのブログからnoteに移行しました。InstagramもTwitterも毎日更新中!