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Ideal Affection

こんばんは。持ち主です。
数ヶ月をかけて作っていたピロウズ35周年お祝いのカバー動画が完成し、8/16にリリースしました。未聴の方はぜひご覧いただけると嬉しいです!

カバー音源の収録は全てすてきなさんにんぐみさんにお願いして、僕が映像を制作しました。
自分が今年の35周年祝いで制作する物の中でも、メインに据えていたものになります。

5年前からLEGOや粘土で作っていたピロウズ関連/さわおさんソロ関連の作品をほぼ総動員し、加えて新たにラストシーンのためのライブフロアを組み上げた上で、ストップモーションアニメ制作に挑戦しました。

この記事では、この動画制作のスタートまでの経緯や、各シーンの解説、込めた想い、メイキングなどについて触れていきます。
(また、音源制作のすてきなさんにんぐみさんにもコメントを頂いて掲載しております!)


誕生秘話

正確な時期は覚えていませんが、LEGOでのピロウズ関連作品が溜まり始めた頃から、「ピロウズ35周年の年に、お祝いとして今までのLEGO作品を使ったストップモーションアニメの映像を制作し、音源を誰かに作ってもらってカバー動画を投稿しよう」と企んでいました。

高校性の頃から15年以上自分を生き永らえさせてくれる灯し火になり、他のバスターズと交流し始めた30周年の時から様々な経験をくれて、自分を大きく変えてくれたピロウズに、35周年の区切りは何か特別な方法でお祝いしたかったのです。

また、ピロウズ20周年や25周年で公式のカバー動画祭が開催されたときは、ただ他のバスターズが投稿された動画を観て楽しんでいましたが、「愛情をこんなにクリエイティブな形で表現できるのが羨ましい、でも自分には何も出来ない」という気持ちがどこかでありました。
これを作ることで、映像の制作だけでもこの時の憧れを実現したかったのです。

5年前、創作を全くやってなかった頃の持ち主のツイート

また一方で、「どうせ自分が動画一本作るなら、非公式企画として動画を募集したら他のバスターズのカバー動画も観られて面白いかな?」という想いもありました。
しかし「"演奏スキルもないわ、動画も今回初めて制作するわ"の自分が企画を主催進行するのは無謀か?」「じゃあ、完成した動画にタグだけ付けて乗っかってきてくれる人を待つ……?」「いや、そうすると9/16の数か月前に動画完成させておかないと誰も乗ってこられんな……。できるか?」などとグズグズ悩むことになりました。

そこに、せぼねさんという音源・動画制作の心得のある方が救世主の如く現れ、偶然、きちんとした企画として「the pillows 35周年非公式カバー祭」を開催してくださったのです。企画期間は今年の3/16~9/16。

"渡りに船"とはこのこと。大感謝です。
この企画への投稿を目指して、僕は自分の動画作りに専念できたのです。

お陰で完成日程の目標も決まりました。
企画自体の投稿〆切は9/16なのですが、自分の動画は8/16までに投稿すると決めました。

この5年、Twitter上のバスターズの繋がりで「おっ何か面白いことやってるな、じゃあ自分もやってみるか」と触発されて人が動き、それが伝播していくのを何度も目撃していて、また自分自身も他人に触発されて何かをやることが何度もあったので、動画を一か月前に投稿することで、9/16までのファンの盛り上がりの触媒として少しでも貢献できれば嬉しいと思っていたのです。(そして自分自身、一つでも多くの35周年お祝い創作物が観たかったのです。)


さて、カバー動画制作のために動き始めたのですが、演奏技術ゼロの僕には"カバー音源を誰かにお願いして録ってもらう"課題があります。それも、僕の作りたい「LEGO主体のストップモーションアニメ」との相性が良い人に録ってもらわなければなりません。

ピロウズに愛情があり、優しい声とポップでカッコいい演奏力を備えた方。上記の企画開始前から僕は、パートナーになってもらいたい人物に目星をつけていました。

それが他ならぬ すてきなさんにんぐみ さん [ 以降、"さんにんぐみさん"と記載 ] です。

数年前に観たこの"Back Seat Dog"や"パトリシア"の、おもしろカッコよくてポップなアレンジに、優しい声に心を射抜かれていました。
また、「ピロウズ30周年を勝手に祝うカバー動画」をTwitterに投稿されていたことにもシンパシーを感じていました。

さらに、さんにんぐみさんの投稿されているカバー動画の映像は「バスター君のストラップやKUBRICKの静止画」が多く、僕がLEGOでバスター君が主人公の映像を作ったらお相手にとってもWin-Winかもしれない、と思えたのも大きかったです。

とはいえ、当時さんにんぐみさんとは(Twitter相互フォローではあったものの)直接の面識はなく、自分の大喜利企画に何度か参加してもらっていたくらいの間柄です。
音源制作の依頼に当たって、候補曲選びやスケジュール提案などの準備は最低限整えた上で、まずは"自分が作ったストップモーションアニメ"を見せて信用してもらうのが筋だろうと思いました。

ちょうどその時開催されていた"桜バスターズ2024"の企画に向けて、Adobe Premiere Proという動画制作ソフトを、長年眠らせていたデスクトップパソコンにインストールして、人生初のストップモーションアニメを制作しました。

20秒くらいの短い動画で、撮影と編集を2日間で行ったものですが、自分の中でも「この延長線上で作っていけるな」という試金石になりました。

そして4月、満を持してさんにんぐみさんに音源制作のお願いをしに行ったのです。まずはTwitterで長文のDMを送ったのですが、内容を要約すると、

  • ピロウズ35周年非公式カバー動画祭に投稿する動画を一緒に作ってほしい

  • さんにんぐみさんにカバー音源を収録してもらい、僕がその曲に合わせてLEGO主体のストップモーションアニメの映像を作る形でやらせてもらいたい

  • 候補曲は僕の方で5つピックアップしているものの、最終的な選曲は音源制作されるさんにんぐみさんの意向で決めてもらうのが良いと思っている

  • 詳細は通話で打ち合わせしたい

旨をお伝えしました。

回答はすぐにもらえました。

さんにんぐみさんの、あまりにも男前な回答


か、カッコいい……!粋!!そして嬉しい、めちゃくちゃ有難い……!

自分が好きな音源を作られる方に、共作を快諾してもらって選曲まで希望を通してもらえるなんて夢のようで、すでに感動していました。

せっかくのお言葉に甘えさせてもらいたい!!

あっ、あっ

すいません、調子に乗りました。
やっぱりコレは"他人に全部録ってもらうヤツが出す選曲リクエスト"じゃなかったんだ…!!
中には公式のバンドスコアがない曲も、難しいと言われている曲もあったのです。(この5曲の選曲理由については後述します)
でも謙遜なさらないで!!

二日後、ZOOMで打ち合わせしました。
・作りたいと思っている動画の流れと、スケジュール感をこちらから説明し、さんにんぐみさんにご了解いただく
・選曲は「Ideal Affection」「モールタウンプリズナー」のいずれか(さんにんぐみさんの声質とのマッチによるご判断)にする

パワポで説明した動画の流れ。ここから大体変わっていません。
パワポで説明し、当日の打ち合わせでブラッシュアップしたスケジュール。
さんにんぐみさんに「仕事みたいですね」とツッコまれる。

打ち合わせ、これから面白い物が作れそうなワクワクで楽しかったです。
単純に昔から知ってるフォロワーさんと初めてお喋りできるのも、とても楽しかった。

そうして合意を取って、各々制作作業を進めることになったのです。

曲は、さんにんぐみさんの音源制作の過程で「Ideal Affection」に決定しました。(結局、一番作りたかったのがこの曲だったので嬉しかったです!)

ご体調を崩されて声が出なくなったにもかかわらず、6月末時点で尺の合ったデモバージョンを送って頂き、おかげで僕が予定通りに映像を作っていくことが出来ました。
後に歌入りのフルバージョンを頂いて聴いた時は感動しました。
世界で一番先にこれを聴けただけでも、制作のために動いて良かったです。

映像制作の方もトラブルやらで色々と手こずりながら進めて、何とか8/16に公開しました。次の章でその詳細を述べていきます。

選曲について

次の章に行く前に、5つの候補曲の選曲理由について。
元々この動画では、"ライブハウスでのライブシーンをラストサビの映像に持ってきたい"という構想がありました。今までに作ったピロウズのメンバーとバスターズのLEGOミニフィグを活かして、ライブの楽しさ・美しさを表現したかったのです。
よって、ライブで盛り上がる曲であることが条件になりました。また、どうせ作るなら"まだ映像が作られていない曲"が良かったので、既にMVがある曲は候補から外しました。
あとは曲の持つメッセージと、自分の曲への思い入れと、曲の長さ等を考慮し5曲に絞りました。

モールタウンプリズナー : 
つい最近の再現ツアーVol.4でも聴けた曲です。ライブで盛り上がる曲、と考えて真っ先に浮かんだのがこれでした。歌詞に「ハッピー・バースデイ」という一節があるのもアニバーサリーにマッチしていて良いなと思っていました。
(ただ、再現ツアー時の曲解説で、苦しい期間の入り口の曲、のようなことも言われていて、今考えるとお祝い動画で作るものとしては少し縁起が悪かったかも?でした。)

Stroll and Roll : 
この5年間、ピロウズの曲で最もフィーチャーされたのはこの曲だと感じています。2020年以前はあまり演奏されていなかったと思うのですが、行動制限下のさわおさんの弾き語りで演奏されてすごく盛り上がって、その後のピロウズのツアーでもセットリストの重要な位置に組み込まれたりして。
恐らく、数年の時を経て、よりさわおさんの心境にマッチしたんだろうな、と推察しています。僕自身も大好きになった曲でした。
ただ動画の曲に選ぶとしたら、長さ(3分半)がちょっとネックだったかな……。

ROCK'N'ROLL SINNERS:
他の候補曲と比べると個人的な愛着は少ないですが、歌詞を見ると最近のさわおさんソロの曲で歌っている事と近かったりして、アリだなと思いました。ライブで盛り上がる曲という点でもバッチリでした。
これもStroll and roll 同様、長さが少しネックでした。

Primer Beat:
もともと自分の中でトップ10に入るくらい好きな曲でした。二期っぽい演奏も、歌詞の「とっておきのロックンロールを昨日右脳でキャッチしたんだぜ 」以降のフレーズも大好きで。辛かったけど何とかやっていた大学時代、通学中にこれを聴いて気持ちが救われていたのを思い出します。
直近のLOSTMAN GO TO CITYツアー2023-2024でも主役級にピックアップされていて、さわおさんの今年の心境に近い曲とも言えるでしょう。

しかし、公式バンドスコアこそあるものの、「演奏が難しい」とMCでも仰っていたので、これを他人にお願いしていいものか……?というのと、直近のツアーで主役級だったからこそ、ここで動画の曲に選ぶのはちょっと意外性に欠けるかな……というのが悩んだポイントでした。

Ideal Affection 【採用】:
これも元々好きな曲でした。「生まれてきてみたら心を持たされていた」「70億の自己主張 それでも僕らは出会いたい」というフレーズが好きで。
もともとはピロウズ曲の個人的なトップ50に入るかどうかの"好きさ"だったのですが、この動画を作ったことで愛着が湧いて、今はもっと大好きになりました。
また、これは何故かは分かりませんが、僕が曲を聴いた時に一番"LEGOのバスター君が動いている"イメージが湧いてくるのがこの曲だったのです。
何かピンと来たのかな。

さらに、FC会報のさわおさんのこの曲の解説を読むと、自分がファンとしての活動の中で感じていたこと、悩んでいたことに重なっていたりもするし、さわおさんの想いも感じられて。
今、自分が作る動画のテーマにするのにピッタリだと思いました。
(10年前のものとはいえFC限定の内容を直接書くわけにはいかないので、僕なりの解釈で重要なメッセージをピックアップし要約すると

  • 正解のないテーマでは、例え悪意が無かったとしても衝突は起きるので、ギリギリ納得できる線引きがお互いに要る。

  • 理想通りにはいかないし、理想は人によって違うものだけど、それでも自分の理想は持って守るべき。

  • さわおさん自身、自分を"一癖ある"と自覚しながらも、"仲間と出会いたい"と思っている。



直感でも理屈でもとにかく、この曲を最終的に採用できたことはベストだったと思います。
調べた限り公式バンドスコアもない曲だったのですが、これを演奏してくれたさんにんぐみさんには感謝です……!

シーン解説・映像メイキング

撮影は、撮影ボックスの中にLEGOのセットを入れて、三脚に立てたカメラで行いました。

撮影の様子

結局、カット割の画は描かず、頭の中で描いたイメージをテキストでメモしていき、それをもとに撮影して映像化を行いました。

LEGOのフィグの可動域と、制作期間を考慮すると基本的に秒間5コマくらいで撮っていくのが良いと、撮影の序盤で決めました。
最終的に撮った画像は約2500枚、使った画像は900枚弱です。

制作期間は、「ライブハウスなど、今回初めて出すLEGO作品の制作」+「撮影・動画編集」だけで3か月くらいです。加えて既存のLEGO作品はこの5年間でちょっとずつ作っていったので、総制作時間となると不明です。

冒頭の缶バッヂディスプレイのシーンを除けば、基本的に動画の頭から順番に録っているので、以降、シーンごとに解説とメイキングを書いていきます。

1. バスター君出発シーン

自宅でくつろいでいたバスター君が、ライブのチケットを持って緑の自転車で出発する、というシーンです。

以前作成したLEGOブロックのバスター君の頭部を小さい家に改造して、ミニフィグのバスター君がここに住んでいるという設定にしました。
(よく考えると「自分の頭部を模した家」に住んでるバスター君、まあまあヤバい奴ですね)

一部の場面は、歌詞に合わせて画を撮っています。

「頭蓋骨を開けてどこへ辿り着く」
「'つく' のはため息と意表くらいが良い」


これが最初に撮影したシーンです。
ほぼ初めてのストップモーションアニメ、手探りで進めて行きました。
「LEGOの土台を両面テープで撮影ボックスに固定して、バスター君を動かした時に土台がズレないようにする」みたいな基本的なことも、試行錯誤のうちに覚えた感じです。
ストップモーションアニメはリモートシャッターという器具を用いてシャッターを切る必要があるのですが、いつもの癖で直接カメラのシャッターを押しちゃって映像全体がブレる、なんてミスも最初はやってました。

撮影ボックス内のセット後方にブルーバックを配置して撮影

撮影時の背景にはブルーバックを用いて、クロマキー(青い部分に背景を合成する処理)で、自分がアメリカ旅行に行った時に撮影した写真群を合成しました。何故アメリカの写真を使ったかというと、映像から「和」のテイストを極力排除した方がピロウズの曲にマッチすると思っているからです。

持っていたブルーバックの品質と撮り方が良くなかったのか、結局1枚1枚背景が綺麗に抜けるようPhotoshopで修正する必要があり、結構苦労しました。これは撮り方次第でもっと改善できたかもしれないですね。

動画制作の序盤も序盤なのですが、ここで、編集中にパソコンが頻繁に落ちる問題が発生します。
10年前の自作パソコンにグラフィックボードやメモリを追加で積んで動かしているのである程度処理に時間がかかるのは承知の上で進めていたのですが、写真を取り込んで編集したり動画にエフェクトを付けようとすると、前触れなく急にパソコンの電源が落ちます。マトモに作業になりません。
仕事で得た知識も動員して原因究明と解決を試みますが、時間だけが減っていきます。
このままでは間に合わないと判断し、将来への投資と割り切ってニューマシンを購入します。Adobe Premiere Pro推奨スペックの、ゲーミングPC。
買ってしまえばすんなり移行は完了し、ようやく本格的に編集が始められるようになりました。

新しい相棒

最新型のPCでも結構頑張って処理しているので、10年前のPCでやろうというのがそもそも無茶だったようです。(桜バスターズの20秒の動画くらいなら撮れたんですが、あれが限界だった様子……。)

新しい相棒には今後も何かしら頑張ってもらいます……!!

2. 緑の自転車で走り出すシーン

街路樹に挟まれた道を自転車で走り抜けていくバスター君。

気付いた方も多いと思うのですが、ここは完全に「白い夏と緑の自転車~」のMVの1シーン(1:38~からのシーン)のオマージュです。

元のMVのシーンを見て、撮り方はポンポンと浮かんできて比較的順調に撮っていけました。
順調とは言っても、自転車をこぐバスター君と進むたびに増えていく木、それぞれブルーバックで別撮りして、やはり一枚一枚Photoshopで編集して最終的に背景と合成して……とやっていくと、数日にわたる作業にはなってしまいました。

ちなみに、LEGOのこのサイズの木は持っていなかったので、このシーンのアイディアが思いついてから急遽メルカリで買い漁りました。(左側の木は編集で鏡面コピーしたものなので、本物は右側の木だけですが)

3. 自転車でキャラクター達の前を走り抜けるシーン

今までのピロウズの曲のジャケットやMVや歌詞に出てきたキャラクターが時系列順で並んでいる傍を、バスター君が緑の自転車で通り過ぎていきます。最近のさわおさんソロバンドからのキャラクターもいます。

「年中毛皮のハスキー 相棒は言う 'ニューヨーカーのふりをしてクラクションで歌え'(Give me up!)」「優雅に立つフラミンゴ(Subtropical fantasy)」は細かすぎたと思うけど、果たして伝わったでしょうか。
二期以降のどの時期のアルバムのキャラクターもまんべんなく出てくるようにはしましたが、キャラクターのチョイスには特に深い意味はなく、単純にこれまでに作ったものと、新たにアイディアが浮かんで作れたものを登場させた感じです。

このシーンで、今まで作成したアルバムの缶バッジディスプレイを並べようかとも思っていたのですが、透明なケースに密閉されているジオラマや缶バッヂとバスター君を並べるとあまりに現実味が失われてしまいそうだったので、ここは剥き出しのキャラクターのみにしました。
(缶バッヂディスプレイの方はオープニングムービーとして冒頭にくっつけています。)

冒頭の缶バッヂディスプレイのシーン。ここもアルバムの時系列順に並んでいます。

シーン3では、自転車をこぐバスター君の真横からの映像と、背景となるキャラクター達や街路樹の映像を別撮りして合成しています。
背景映像の撮影は、キャラクターと街路樹の全てを1コマごとに1ポッチずつ左に動かして撮ったのですが、失敗したまま進めてしまうとやり直しが大変なので、緊張して撮影中に汗が止まりません。あまりに汗が止まらないので、最終的に上半身裸でハイブリッドレインボウタオルだけ首に巻いて作業していました。ここだけで2日がかりだったかな。

背景映像作成中に撮った一枚

撮影は大変でしたが編集で弄るところは少なく、結果的に早く仕上がったシーンでした。

4. 自転車が壊れて酋長に助けてもらうシーン

自転車をこぐのに疲れてベンチに腰掛けたバスター君ですが、ベンチにガイコツが座っていたのに気づき、驚いたはずみで緑の自転車を壊してしまいます。

そして困っているバスター君を、一部始終を観ていた"ネイティブアメリカンの酋長"がバイク(Indian RED CHIEF)に乗せて助けようとしてくれるのです。

うん。
少しも不自然な所がない、説得力のあるストーリーですね。

ここは歌詞の「ウォーホ(ー)ルのバナナ」を登場させたくて、さわおさんソロバンド " Muddy Comedy " のMVに出てくるアンディ・ウォーホルのバナナのクッションと、ついでに同MVに出演しているガイコツと緑のピロピロを持ってきています。バスター君を自転車からバイクに乗り換えさせる舞台装置として働いてもらいました。

このシーンでは特に、各コマの秒数を細かく調整して、キャラクター達の感情が上手く表現できる"間"が作れるように気を配りました。

撮影は早めに終わったものの、編集で粗を取り除くのに最後まで苦労しました。ブルーバックは使っていたのですが、背景との間の端がブレブレで……ここの修正は公開当日の朝まで追い込んでます。

5. 酋長が会場まで送ってくれるシーン

酋長に送ってもらうバスター君。道中、"Dead stock paradise"のブルドッグのバイクとすれ違ったり、"彼女は今日,"の羊の車に追い越されたりします。

羊の車は去年LEGOで作ったものですが、車に乗っているのは公式グッズのKUBRICKバスター君たちです。
クリアカラーのKUBRICKバスター君は、訳あって35周年を祝うことが叶わなくなったバスターズのものを友人伝てにお譲りいただき、ここに登場させました。面識はないのですがピロウズが大好きな方と聴いているので、例え細やかでも何かが今年に残ればいいなと願って。

ここもバイクや羊の車などのキャラクターをそれぞれブルーバックで撮影し、背景映像と合成しています。
バスター君と酋長の乗っているバイクは設計上タイヤを回転して見せることができないので、下側を見切れさせています。

道路正面向き・横向きの背景映像はそれぞれ、「走行する車から撮った路面」のフリー素材から一番適したものを探し出し、バイク側が動かなくても前に向かって走行しているように見えるようにしています。それぞれ全く別の場所の映像素材なのですが、違和感の無いよう色味は合わせたので不自然さを軽減できているのではないでしょうか。

撮影より編集作業の割合が多かったシーンになりますが、キャラクターが何だかイキイキしていて見えて、個人的にここが1番好きなシーンになったかもしれません。

6. 会場到着~ライブ開演前のシーン

酋長にライブハウスまで送り届けてもらったバスター君。看板を撮ったり整番待ちして、ライブフロアに入場します。

名前をちょっとパロディっぽく変えましたが、LEGOで都内の某ライブハウスの入り口とライブフロアを今回新たに制作しています。実際に今のピロウズがここで演奏するとしたらキャパシティが足りないと思われるのですが、ピロウズに縁があって個人的にも色々と思い入れのあるライブハウスなので、ここにしました。(この作品の詳細は、10月までに別途紹介します。)

このシーンと次のライブシーンには、50名あまりのバスターズのフィグを登場させています。数年かけて集めた半袖シャツのLEGOミニフィグに、シールメーカーで印刷した"ピロウズTシャツを模したシール"を張り付けて作りました。首にかけているハイブリッドレインボウタオルは、布シールで印刷して作ったものです。

これらは全て"架空のバスターズ"ですが、モデルにした人物がいたりいなかったりします。モデルがいるものに関しては、「特に仲の良い人や好きな人を選んでモデルにした」というよりは、お会いしたことあるバスターズの中から「この方、手持ちのパーツで似せられるな」って方をモデルにして作らせてもらいました。
どれが誰をモデルにしたとかは特に言及しませんし、ここにいるから(orいないから)どう、ということはありません。単純にパーツの都合と理解していただければ幸いです……!

モデルを決めた利点はちゃんとありました。
約50名の観客バスターズのフィグ一人ひとりに、「何のTシャツを着てきて、ライブ中はどうノるのか」というキャラクター設定をちゃんと決めて撮りたかったのですが、ゼロから全員の設定を練っていたらとてもじゃありませんが時間が足りません。実在の人物をモデルに設定することにより、「その人に似合いそうなTシャツ、その人がライブ中にしそうな動き」をイメージして、服装や行動に反映することが出来たのです。
(もちろん僕の勝手なイメージでしかないので、実際にモデルに設定した方がそのTシャツを持っているかどうかも分かりませんし、ライブ中の振る舞いも異なっているかもしれません。)


またシーン6には、僕の理想というか願いの内の一つを描いた、何気に重要な場面があります。

バスター君がスマホで看板の写真を撮っている横で、初対面らしき青年二人が出会っているところです。

バスターズ同士が出会って、ピロウズというお互いにとって共通で大事なものを通じて直ぐに長年の友達のように仲良くなる。そしてその繋がりによって、お互いのピロウズへの熱も高まっていく。この5年間で、数えきれないほどそんな出会いを目撃し、また自らも体験してきました。
「独りの方がいい」と確信している人はともかく、「誰かと出会いたい」と思っている人達の中ではそんな出会いがまだまだこれからも色々なところで起こってほしい、という願いを込めて、この二人はあえて実在のモデルがいない二人を選定し、"まだ見ぬバスターズ同士の出会い"を演出しています。

7. ライブシーン

山場のライブシーンです。ピロウズのステージと、熱狂するバスターズ。
ここの観客の左右に押し合い圧し合いする動きは、最近のツアーでの前方のお客さんの動きをかなりリアルに再現できている気がします。

メンバーそれぞれのピンショットと、観客のバスターズの顔をじっくり見渡すさわおさん。最近のライブでさわおさんがこうして愛情を持って見てくれるのが大好きで、ここは特に丁寧に描写しました。

ミラーボールと関係者エリア。

盛り上がるステージとバスターズ。
僕が作ったセットでの撮影は、真上からの鳥観図や、ステージの真後ろから観客を映したショットなど、普通カメラが入れずにライブDVDでは観られない視点を描けるのが特色なので、意図的にそういうアングルのショットを入れました。

最後の"Amor!"に合わせて、さわおさんがギターピストルを撃ってライブシーンが終わります。

なお、流れているカバー音源は勿論"Ideal Affection"なのですが、「このライブシーンの映像で演奏されている曲」はIdeal Affectionとして観られなくてもいいな、と思って撮っています。Ideal Affectionが現実のライブで演奏された時にギターピストルのアクションは無かったですし。
ややこしいですが、厳密には「ピロウズのライブの中で好きな光景を、さんにんぐみさんのIdeal Affectionに乗せて映像として流している」と取ってもらった方が正しいのです。

ライブの撮影は映像のクライマックスシーンになり、また特別に大変なのが最初からわかっていたので、なるべく先に手を付けたかったのですが……ライブフロアとバスターズフィグのLEGO自体の完成がギリギリになってしまったので、結局最後に撮ることになりました。
ここに至るまでの撮影でストップモーションの撮影のノウハウが溜まってきていたので、結果的には最後でよかったのかもです。

カメラの画角外にも撮影用の照明を設置(画面左側)
撮影ボックスを床に置いてライブフロアを撮影。鳥観図はこの方法でギリギリいけました

やはり観客を引きの視点で撮るのは大変でした。50名それぞれミスなく動かさないといけないので……1時間に数枚しか撮れません。

あと、痛かった誤算は、「LEGOのミニフィグを密集させると、上げた拳が目立たなくなってしまう」ことです。
LEGOのミニフィグは、腕を一番高く上げても頭の上に拳が来ません。なので当たり前っちゃ当たり前だったのですが、フィグをたくさん並べてみるまで気づけませんでした……。

腕を挙げても頭の上に来ない

そこで、腕を上げるだけじゃなく、上半身を前後に振ることで少しでも動きを出すようにしています。

また、バスター君を含む数名は腕を上げるだけじゃなく、小さいパーツを使って足の下を底上げしてジャンプさせています。フィグが密集しているのでジャンプさせるには1コマ1コマピンセットで人形を取り出して底上げ用のパーツを取り外して元に戻す作業を行わねばならず、容易ではなかったですが、出来上がった映像を見るとその人たちは特別に生き生きと動いているように見えます。
もしかしたらもっと多くの人をジャンプさせれば、更にイキのあるシーンにできたかもしれません。

今の出来でも満足はしているのですが、一方で今の知見と反省を持ってシーン7とシーン1あたりを更にリアルに撮って、リメイク版としてもう一度上げたい気持ちもあります。
これからの予定は未定なのですが、もし他に着手したいことが出てこなければ、これをやるかもしれないです……!

すてきなさんにんぐみさんコメント


私はとてもめんどくさがりな人間できっかけがないと
何もせずタニシの様に日々過ごして生きているのですが
持ち主さんの誘いの言葉をきっかけに
ケツを蹴り上げられたような感覚で有意義に音楽を作ることが出来ました。
我ながら歌下手だなと思いながらも
これは「ピロウズへの感謝の副産物」ですので
自分も持ち主さんもバスターズもみんなで盛り上がり楽しんでくれたらと思います。


最後に

「自分にとってピロウズへの"理想的な愛情"」って何だろうな?という問いは、この動画を撮っている最中にも自問してきました。

この動画で描いた光景もその一つですし、また、さんにんぐみさんと僕がそれぞれ自分が好き(or得意)な表現方法を使って共にピロウズへの愛を紡いでいるこの動画の存在自体も、自分にとっては"Ideal Affection"の一つの形のつもりです。

Amor!

あ、以上です。

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