【小説】『玉葉物語』前日譚「竹の園生の御栄え」第五話「聖断」(終)
※この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは関係ありません。
第五話「聖断」
(一)宸憂
一
身分を捨てたいというお考えに至られるまでの金枝玉葉の御悩みも、万々が一にも皇族がおいでにならなくなったら困るという政府の言い分も、それぞれよく理解できるものであったから、いつの世も上御一人におかせられては、宸襟を悩ましていらっしゃった。
平成の大御代以来、歴代の帝は御年七十五にならせられる頃には皇太子に位をお譲りになるのを常となさっていたが、応中の御代から