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メカニカルアライメントとキネマティックアライメント。オペ看としてどう関われるか?

TKAはメカニカルアライメントをつくる手術である。

というのが僕なりのTKAの概念だったのですが、最近はキネマティックアライメントという言葉もよく聞くようになりましたね。

横文字的なというか、日本語表記でカタカナで表現される言葉って、なぜだか苦手意識を抱いてしまいます。なので少し説明しますが、

メカニカルアライメントというのは、大腿骨頭中心と足関節中心を結んだ線(下肢機能軸)が膝関節の中央を通るアライメントのこと。ニュートラルアライメントと表現されることもありますね。

下肢機能軸は体重がかかる線でもあるので、「下肢機能軸が膝関節の中央を通る=膝関節の関節面全体に均一に体重がかかる」ということであり、インプラントへの負荷も均一になるわけです。

これに対してキネマティックアライメントは、変形性関節症となる前のもともとの解剖学的なアライメントを再現しましょうよ、という概念。

あれ?

何かおかしいと感じたでしょうか?

下肢機能軸が一直線となるメカニカルアライメントをつくる=変形性関節症になる前はみんなもともとメカニカルアライメント

と考えてしまいがちですが、実は下肢のアライメントは人それぞれで、機能軸が一直線である人もいれば、生まれつきに内反、あるいは外反って人もいます。

生まれつきの内反のある人にTKAを行ってメカニカルアライメントを作ったとしたら、術後の日常生活ではおそらく違和感を覚えるでしょう。

だから画一的にTKAでメカニカルアライメントをつくるのではなく、その人の解剖学的特徴を考慮してアライメントを作りましょうよ、と言うのが、キネマティックアライメントのコンセプトなのです。

ところで、どのくらいの人が生まれつきの内反あるいは外反アライメントなのでしょうか?

ベルギーで健常成人250人の下肢アライメントを調べた研究があります。

健常成人のアライメントを調べたBellemans氏の報告

対象は20〜27歳の男女125人ずつ。レントゲンで下肢全長像を撮影しアライメントを観察。

ちなみに参加者には映画無料券2枚が配布されたそうです。何だかほっこりしますね。

結果には、

  • 男性の32%、女性の17%は 3°以上の内反があった

  • 男性の66%、女性の80%は内外反3°以内だった

  • 男性の2%、女性の3%は、3°以上の外反だった

と書かれています。

多くの男女はニュートラルなアライメントから±3°以内のアライメントですが、男性の32%、女性の17%にはもともと解剖学的に内反であったということですね。

この研究の中で著者のJohan Bellemans氏は、もともと存在する解剖学的な内反を

『Constitutional varus "生理的内反"』

と名付けておられます。

ベルギーで行われた研究なので日本人が対象ではありませんが、実は日本人の場合、この結果よりも生理的内反を有する割合は多いと言われています。

生理的内反を無視することがなぜ悪い

生理的内反を無視してニュートラルなアライメントにすると、患者さんは何らかの違和感を訴える可能性があります。

生理的に内反している膝の場合、MCLはタイトに、LCLは緩んでいることがほとんどです。

だから生理的内反を真っ直ぐなアライメントに矯正する場合、少なからずMCLの剥離が必要になります。これにより、患者さんは術前後で膝の屈伸の感覚が変わってしまうんですね。

かと言って、生理的内反に対するメカニカルアライメントが絶対悪というわけでもないんです。

変形性膝関節症の患者さんは診断されてすぐに手術を受けるわけではなく、末期になってから手術に踏み切ることが多いです。(自費での再生治療も盛んになってきてますし...)

だから手術を受ける頃にはかなりの不自由を感じていて、生理的内反を無視してメカニカルアライメントにしても、その違和感を感じないくらいしんどい毎日を送っていることが多いからです。

オペ看としての関わり方

メカニカルアライメントかキネマティックアライメントか。どちらを採用すべきかはメスを持つ整形外科医に委ねられますが、我々オペ看としては、

  • 術前アライメントの確認

  • 術後アライメントの確認

を行った上で、

  • 術前後での患者さんの主観的な感覚の違いを汲み取って整形外科のフィードバック材料となるよう記録に残す

というのが大事なんじゃないかなぁと思います。

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