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「会って、話すこと」が難しい今だから

本が出た。

文字が大きくて、小難しいことは書かれてなくて、半分以上は冗談で構成されていて、大したことは書かれていないようで、実のところよくよく読むと「大切なこと」がしっかりと書かれてある。そんな気質の本だ。

この本を初期段階で購入した人はきっと読む必要があまり無い人だと思う。しかし、その人たちが心待ちにしていたのも事実だろう。私もそうだ。

そこにはいつもの田中泰延さんがいて、隣に今野良介さんが座っていて、いつも通りの会話をしている。特別なことは何もない。いつも通りに明後日の方向に会話が流れて、内容はつかみどころがない。

ツイッターで、そしてイベントで拝見する、いつも通りの姿がそこにある。
違うのは、1年半以上、会って話ができる世の中に戻っていないことだけだ。そんな「会って、話すこと」が難しい今だからタイトルが切ない。

ネットで現実で彼らを知る人たちは特別な心持ちで本を手にしたことだろう。

しかし、本来読むべき人は、おそらく田中泰延さんにブロックされている人たちなのかもしれない。テーマが会話だからだ。でも、悲しいかな、そういった人たちはネット上で情報が遮断されているはずだから書籍を手にすることはないのだろう。
と…そう思っていたが、Amazonのレビューを拝読するとちゃっかり初日に悪口が書かれてあったので、そういった人たちの手にもしっかり届いているのだと知り、私はすこし安堵した。

紙の本って凄いね。ブロックしててもちゃんと届くんだよ。こんな素敵なことはない。でも、残念なのはそこでも悪口しか言えないようだから、本の内容は大して読めていないことがわかる。それは哀しい事実だ。

◇◇◇

さて、そんなことはさておき、ちょっとだけ内容をばらすことになるが、ここでお話をしたいと思う。本意ではないが、全くのネタバレ無しでは紹介にも何にもならないからだ。

本書では、「会話はギブアンドテイクじゃないよ」という本質が語られている。ここがスタートラインにして要所である。

このフレーズだけではわかりにくい。

だが、ここを理解してないと「会って、話すこと。」は隣の席で展開されるマックの女子高生の会話程度で終わってしまう。実際しゃべっているのはおっさん二人なのだが、明後日の方向にそれる会話の流れが一体なんであるのか、「会話をギブアンドテイクだと信じてる人」にはきっと理解できないでしょうから。

いや、ウィットに富んだ冗談の多い会話なので横で聞き耳を立てて笑うことはできる。それはそれできっと楽しいことなのでしょうが、でも、それはきっと著者からすれば本望ではないだろう。だって、「会って、話す」ために書かれた本なのだから、読んだ人はそこから卒業しないといけない。「傍観者ではなく参加者になろうよ」が裏にある。

聞き耳立てて、こっそりツイッターでバズってる場合じゃないぞ。もっと人と人との会話をしようよ。

そのためにこの本を買ったんでしょ?

…とまぁ、このように煽ってみると、「よし!じゃあ相手に興味を持ってもらえるように身の上話をしてみよう」だとか「相手の話をじっくり聞く会話を心がけよう」だとかと皆は息をまく訳だが、ここですかさず「だから、会話はギブアンドテイクじゃないって言ってるでしょうが!」とハリセンで勢いよく頭を叩かれるのが本書の妙味である。

何のことだか分からないかもしれないが、本当にこうなのである。
ちゃんと書かれてある。

わたしの話を聞いてもらわなければならない
あなたの話を聞かなければならない

最初に、その二つを捨てたら楽になる。

これが会話からギブアンドテイクを捨てるという真意だと私は受け取った。
「~なければならない」ことはあなたの心を苦しめるだけで、そこから会話を楽しむ流れにはならないよと…

詳しくは本に書かれているので買ってみると良いでしょう。

会って、話したいな。


#会って話すこと

ここのコメントを目にしてくれてるってことは最後まで読んでくれたってことですよね、きっと。 とっても嬉しいし ありがたいことだなー