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肩書きは人を育てるのか?

 策家(さっか)のないとうです。

 最近、音声SNSでいろんな人の話を聞いたりして「なんだかちょっとおかしくない?」と感じることが多くなったことってのがいくつかあるんですが、今日は「肩書き」について書きます。

「肩書きが人を育てるって言うじゃない?」

 なんてーことをこれまでの人生で何度か聞きました。正直言えば「それってつまり、現段階では力不足だけどひとまず納得してよ」ということですよね?って思ってました。言ってませんよ、口には出してません。あくまでも心の声です(笑) 会社や組織の中でいう肩書きには、本来はそれ相応の対価と責任がセットなはずで、肩書きだけを与えるとロクなことがないと思うんです。

 その仕事をするにはこの資格が必要っていう業界よりも、むしろ「特に資格がなくても名乗ればプロ」みたいな業界の方がこの手の違和感がたくさん感じるかもしれませんね。

「肩書きが人を育てる」をどう思いますか?

 月並みですがワタクシは「そうかもしれないし、そうでないかもしれない」と思っています。

「肩書きが人を育てる」って、その立場になったから気を引き締めたり、今までよりも責任感を持ってやることで成長するって話じゃないですか。だから、「そのとおり」ならなんの問題もないと思っています。問題なのはその逆。「育てなかったらどんすんの?」のほうがめちゃめちゃ心配になるんです。

 もちろん肩書きが「育てられなかったのはワタクシの責任です」と謝罪会見を開くこともなければ辞意表明もしません。会社組織においては「育つまで待つ」ことも「育たなかった」こともその部下はじめチーム一同が負担を追うハメになるわけです。

 ワタクシのいるクリエイティブ業界で言えば、「プロデューサー」とか「ディレクター」という肩書きがあります。ワタクシの解釈ではプロデューサーは全体の統括や予算・品質の管理で、ディレクターはプロデューサーの要望を叶える実務責任者で主には予算や期日の範囲内での進行管理や段取り。動画でもデザインでも音楽でも同じですが、基本的にはスタッフ経験をして、ディレクターのアシスタントを経験してディレクターになり、プロデューサーのアシスタントをしてプロデューサーになる、みたいな段階を踏まなければ、それぞれの肩書きに必要な能力が身につかないと思っています。

 ところが、そうじゃないルートで肩書きを手にする人も世間にはいるんですよ。例えば年功序列。会社は営利団体ですから「利潤の追求」という共通目的の組織のはず。それぞれの肩書きにはそれぞれ求められる結果があるので、その結果を出せる人に頼むべきなんですが、実際には「他にはいないからキャリアのあるあなた」と会社が指名してしまうという日本の悪しき伝統です。

 ワタクシもある業界の部長さんに多大なる不信感をいだきまして、その業界の大先輩に「なんであの規模の会社の部長があんなのなんですか?」と聞きに行って「ないとうくんはアホなの? 年功序列で晩年出世の部長なんてろくでもないに決まってるじゃん」と大笑いされました(笑
 要するに、腕がある人は会社のルールが窮屈になったりして早々に辞めていく業界なので、「勤め続けただけで活躍はしていない人」が年功序列で出世していくというわけです。

 ワタクシが読みの甘さを実感した瞬間でしたね(笑

 次が、小規模事業者や中小企業でよく耳にする世襲。創業者は創業時の苦労という経験を持っていますが、生まれた時から社長の息子だった人に社長を渡してつぶしちゃうってヤツですね。このケースは身近で関わったことがありますが、ホントにヤバいですよ(笑) 一緒に仕事をすればするほど「なにもできないヤツ」としか感じないのに、やたらと自分では「なんでもできる」と特別感出しちゃう、みたいな(笑

 それから、継いだ社長が自分の奥さんを副社長などの幹部につけちゃうパターンも多いですね。実務経験どころか業界経験もない人に肩書きを与えちゃうなんて、どれだけギャンブル好きなんだ?と思っちゃいます(笑
 実際にいくつもそういう会社が存在していて、そこで働いている人はいつ辞めるかわからない状態だったり、有能な人から辞めていくんだそうです。

 それからもう一つのパターンは自称。カメラマンとかビデオグラファーとか作曲家とかアーティストとか動画クリエイターとかカウンセラーとかセラピストとかコンサルタントとか。厳密には資格がないと名乗っちゃいけない職業も挙げちゃったかもしれませんが、そういう類です。

 例えばライブ音響の現場で聞いたことですが、本来音楽のライブとは「チケット買ってきてくれたお客さんに喜んでもらう」ことを基本にしているので、音をマネージメントする機材はちゃんとしたモノをそろえるとか、現場でトラブルが起きた時の予備を持っていくとか、「ちゃんといい音で楽しんでもらう」という準備すべてをこなすからプロなんです。

 ところが最近は予備もなく安い機材で「他社より安いですよ」と信じられない価格で仕事を奪っていく人がいるとか。で、ワタクシの知人は自社の価格の理由をちゃんと説明したんですが価格差で発注が奪われてしまいました。そしてそのオチは、そのクライアントのライブで機材トラブルがあり、予備持ってなくてライブ中断になったそうです(笑)
 主催者さんとかは数字で判断するのは致し方ないと思います。でもね、「通常1万円するものが10円」って言われたら誰でも品質疑うでしょ? クライアントさんもそのあたりを学習しないと、ライブに来てくれたお客さんにそっぽ向かれたらおしまいですよね。

 結論。

 肩書きが人を育てるかどうかは、やっぱり「その肩書きを得た人次第」だと思います。課長に昇進したならいくらでもググればヒントが出てきますし、なんならChatGPTに自分の職場環境と会社の目標、業界の状況などを入れて質問してもいい。プロもそうです。名乗るのはいつでもできますが、それで「繰り返し信頼を得て活動していく」にはちゃんとやる覚悟と、そのためには何が必要なのかと知識も必要。「まだかけだしだから」ってすぐ口にする人がいますが、かけだしだからこそ誰よりも覚悟を持ち、調べるべきを調べていけばいいんです。そうすれば、肩書きを得たことで油断した人は、もう競合でもなんでもありませんよ。


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