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「音楽で食べていく」ということ。

 策家(さっか)のないとうです。名古屋を拠点に企画者として活動しています。策とは企画、企画とは「誰かの手助け」。動画・音楽・ウェブや印刷物などのクリエイティブやイベント、販促、組織の体質改善など、ノンジャンルで企画を立てております。

 実は、名古屋の音楽制作会社「アースウイングミュージック」にもワタクシのデスクがあります。ここでの役割は(肩書きとはあえて書きません)は「企画プランニングディレクター」です。要するに、「何の目的で、誰に向かって、何を作るんですか?」と問いを立てて、それができる人にお願いして完成まで一緒に走る役です。

 同社は音楽、効果音、声などの「音」に特化した制作会社です。コマーシャルソングや社歌(会社の歌)、市民映画やショートムービーのオリジナル音楽、企業やブランドのサウンドロゴ、店内放送、テレビ番組のナレーション制作、遊技機器の音演出制作、著作権フリー音楽のリリースなどをしています。昨今は動画に連動してYoutubeチャンネルのオリジナル音楽を作ったり、TikTokの方々とコラボで音楽を作ったり、マジシャン用に音楽をマジシャンと一緒に開発したりしています。ワタクシが動画も守備範囲なので、ブランドムービーもオリジナル音楽含めて提案したりもします。

 さて、そのアースウイングミュージックに、地元名古屋市内の高校からインターンを迎えることになりました。実は昨年も高校からインターンを迎えた(受け入れとは書きたくない)んですが、ワタクシは企画者ですので「慣例としてのインターンなどやりたくない」と申し入れがあった段階で話しまして、「その方がありがたい」という場合のみ会社に話を通しています。

 で、実際今日本日先ほどまで、インターン初日ということでワタクシがオリエンテーションを担当しました。作曲もDTMもワタクシにはできませんので、説明役とコミュニケーションをとる役割ですね。

 ①インターン生が今思うことはなにか?
 ②アースウイングミュージックがしている仕事の内容説明
 ③このインターン中にしていただくことはなにかの説明

 と、ざっくり3つに分けて話をしました。インターン生は2名で、両名共に鍵盤楽器には幼少期から触れていて、将来的に「音楽を仕事にする」ということを視野に入れてこのインターンに臨んだという。

 ここからは問いを投げての対話と、出てきた質問にワタクシのわかる範囲でお答えするというやりとりでした。

 Q「音楽の仕事」で思い浮かぶのはどんな人?
 A「頼まれて演奏する人とか、自分の作品を出して買ってもらう人、頼まれて作る人もいると思います」

 よく観察していますよね。その通り。ざっくり分けると「奏者と作者」なんですよね。ワタクシも最近思い知ったことがありまして、実はピアノを演奏する人にも「決まった楽曲を演奏するだけの人と、自分の作品も作る人」で違っていたり、オペラの伴奏を専門的にやっている人がいたり。

 Q「作品と製品の違いってわかりますか?」
 A「作品は自分だけで生み出すもので、製品は予算を出してもらって作るもの」

 おおむね合っています。誰かに頼まれて作るものは基本的に「製品」で、自分が生み出して世に発表するものが「作品」。たまに「自分が手掛けたものはすべて作品」とおっしゃる人もいますが、そもそも頼まれたから生まれたのでワタクシは製品だと考えています。
 また、頼まれて作る音楽はすべて製品ではあるんですが、発注してくれる方々は自分では作れないから頼ってくれているので、雰囲気や長さ、構成(どこで盛り上げるか、など)、メインの楽器をなににするかなどの条件はあるものの、わからないところは「おまかせします」となるわけなので、そこは作品性を存分に出していいと思っています。ただし1点だけ。仕事とは必ず「人とする」ものなので、何をおいても大事にしたいのは「相手に喜んでもらう」こと。
 なのでそこには「対話」が必須だと思っています。具体的には「問いの立て方」がポイントになると思います。誰かが音楽を作りたいのには、必ずワケがあるんです。何の目的で(Why)、誰に(Who)、そして何を(What)伝えるのか?を丁寧に聞き取るってこと。

 Q「なにか聞きたいことがあればなんでも言ってね」
 A「音楽を仕事にするために今からなにをしたらいいですか?」

 それなりに真剣に音楽を仕事にすると考えていればこその質問ですよね。ざっくり言い過ぎと言われても、まずは「よく食べて、よく寝て、よく遊んでください」が第一声でした(笑
 インターン生の二人は明確な意思を持っているので、「流されて生きる」という可能性は低い。となれば「主体的な行動と、それによる経験の積み重ね」以外には答えはないんですよね。
 昨今はAIによる音楽の自動生成も素晴らしい音楽を生み出せるようになっていて、まだ権利とか作ったあとの利用方法など不明確な部分はあるものの、インターン生の二人が社会に出るであろう(大学進学をいまのところ希望している)数年後には、そのあたりも明確になっている可能性が高い。
 かといって、「どのように音楽を作るのか?」ということを理解しておくことは無駄じゃないのでDTMのソフトに触れるのもいいですし、触れてなくても「音楽を作る機会」を増やすことも大事だと思います。お友達に記念ソングを作ってあげてもいいし、市民映画などに参加して音楽作りにも関わってみるとか。作品と製品の違いを認識してもらったんですが、実は製品づくりを重ねたことがよりよい作品を生み出すことにつながったり、自分の作品を持つことで製品にもオリジナリティーが出せて、それによってお相手が喜んでくれたりするので、実は作品と製品のどちらにも関わることが一番いいと考えているんです。
 個人が活躍する時代にはなっている今とこれからだからこそ、そして情報がいくらでも手に入れやすすぎるくらいの現代だからこそ、その人だけ最高の財産は「経験」だと思うんです。

 それからもう一つ。インターン生の二人は「音楽」という具体的な指標を持っていますが、実はもっと大きな枠で考えれば音楽も「自分を表現する方法の一つ」なんです。なのでせめて学生のうちだけでも、音楽以外の表現に触れる機会もたくさん作るといいな、と思いました。動画、アニメーション、ダンス、演劇など。絵画を見て思い浮かぶことを音楽で表現してもいいかもしれませんね。

 こんな感じの話をしたわけです。いやぁ、楽しかった。

 一応ね、気をつけたのは「ワタクシが出す比喩が世代違いでわからないのはヤバいぞ」です(笑) だって、どう考えてもインターン生のご両親よりもワタクシの方が年上ですもんねー。

 例えば「ホラー映画の最高に怖いシーンでBGMがなかったら」の例で出した映画のタイトルがわからなかったらどうしよう?とか、「トムとジェリーの前期の作品はセリフじゃなくて音だけで表現されていた」のトムとジェリーを知らなかったらどうしよう?とかね(笑

 あとはね、今や「自分の作品を世に問う」のハードルがとても下がっているので、手段は問いませんが作品ができたらぜひ世に出してほしいとも思いました。

 

 

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