俺がエビを殺した

 上野にエビを生きたまま食べられるお店があった。
「踊り食い」を注文すると下半身の殻を剝き、身が露出している状態で醤油?を泳がせてくれる。しばらくしたら掬い上げて、俺のお皿に置いてくれる

食べ方はかなり残酷で、片手で頭を、片手で尻尾を持って、下半身をまるごとかじるのが正式らしい

お皿では少し跳ねていて、食べようと思ったが少し待たなければならない。何か刺さったりしたら嫌だし
そんなかんじでしばらく置いていたら、かなり罪悪感が湧いてきた。お刺身だったらいくらでも食べられるのに、この「俺が食べ瞬間に死ぬ」生き物を見ていられなくなった。しかし、ここで引き返すことはできない。俺が注文したせいで、このエビは殻を剥かれてしまっている。どっちにしろ死ぬ運命。

なんか俺ってこういうところあるよなとか思ってしまった。目につく範囲でだけ正義ぶってるというか、かかわらなくていいマイナスなものは見ないようにして、自分ごとにしないようにしているというか。

俺は結局、一緒にいた人に先に食べてもらって、その残りを口に入れて、咀嚼した。刺身の味がした。なぜかその日以来、生の海老のアレルギーになって、食べるたびに喉が痒くなる。そんくらいの罰で済ませてくれてありがとうとすら、思う

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