お茶をこぼした
落とした本の上にお茶をこぼした。
それほど面白くはないけど、それなりに金がかったものだ。
起きたばかりで頭が回らない。そんなことをしている間にも液はどんどん染み込んでいる。
それをただ眺めていた。主人公のセリフが染み込んでいく。
その光景自体とてもめずらしいように思えた。普通ならすぐにでも何かしらの処置をするが、この本が台無しになるまでじっとまっていることはないからだ。
ある程度したらこれを片付ける自分がいるんだろうなと思った。
こんな面白くない本でも、売れば買う人がいる。捨ててしまうのに罪悪感を感じた。売ったことなんて今まで一度もないのに。
自分が言ってしまった過去の失言、やってしまった失敗も、染まって捨ててしまえればどれほどよいだろうか。
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