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【なぜなぜ期】

『ママ、なんで?』
おそらく今日で10回目の質問。私の愛しい娘は絶賛なぜなぜ期。
最初は、これが先輩ママたちの言うなぜなぜ期か‼と
根気強く向き合ってきたが、
そろそろこちらもキャパシティを超えそうである。
「なんでだろうね~」
そうやって誤魔化しては、
諦める気のない娘をあしらいながら、夕飯の支度をする。
よくないとわかっていても、100%で娘に向かい合うことができない。

「よ~しできた!みぃちゃん、パパもそろそろ帰ってくるよ~」
そういった途端、玄関のドアがガチャリと開く。
『帰ってきた!』
一目散にお迎えに向かう娘。
〈ただいま〉
「おかえりなさい」
『パパあのね、今日ね、幼稚園でね』
〈あぁみづき、後でママに聞いてもらって、パパ疲れてるんだ〉
『なんで?』
〈お仕事してきたからだよ〉
『なんで!』
〈はぁ…説明してもわかんないだろ〉
少し強めの口調で言う彼。
「ちょっと、そんな言い方しないでよ!」
〈こっちの身にもなってくれよ〉
そういって靴を脱ぐこともなく、また重い扉を開けて出ていくのである。
「ご飯は⁉」
私の声は扉が閉まる音でかき消されたのであろうか。
それとも無視されたのだろうか。
『パパ…またお仕事?』
娘がエプロンの裾を軽く引っ張り、見上げてくる。
そうやっていつもすぐ逃げては、娘が寝るころに帰ってくる。
私には"逃げる"なんて選択肢はないのに。
そう思うとなぜかわからないが、涙が止まらなくなった。
『ママ…?』
「ごめんねみぃちゃん…ママすぐ元気になるからね」
『みぃちゃんのせい?』
「違う!…違うよ、ママが泣き虫さんなの。
ママ、大人なのにかっこ悪いね」
『なんで?』
こんな時でさえ、なぜなぜ期は止まらない。正直、こっちだって聞きたい。
私だって疲れてる、彼のためにも娘のためにも、一生懸命頑張ってる。
どうしてわかってくれないの?どうして…どうして…。
もう問いかけられるのはうんざり…そう思った矢先、
娘は予想外の言葉をかけてきた。
『なんで大人は泣いちゃダメなの?』
「え?」
『先生が言ってたの、
泣いちゃうのは心がいたい、いたい、するからだって。
そういう時は、とんでけ~ってしてあげるんだって!」
そういって娘はその小さな小さな手を、私の胸にあててくれた。
「いたいの、いたいの、とんでけ~!かわりにみいちゃん飛んできたよ!」
ぎゅうっと抱きしめられる。
その体温の優しさにまた涙がこぼれそうになる。
もう心は痛くないのに…なんでかな。
大人になってもなぜなぜ期は終わらないらしい。


なごやん

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