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きょうだい会立ち上げの想い

皆さん初めまして。私は戸谷知弘と申します。2019年4月より、有志と共にきょうだい会@Nagoyaという自助会を立ち上げました。

「きょうだい」とは障害のある兄弟姉妹がいる人のことを指します。活動の認知度が上がるにつれて多くの反響をいただき、5回目の例会では30名が参加する会となりました。運営も2名から5名へと増え、次年度への取り組みを準備しています。

なぜ「きょうだい」に自助会が必要なのでしょうか。それはきょうだいが、自分自身が生まれた時、あるいは兄弟姉妹が生まれた時(あるいは障害を負った時)から、否応なく兄弟姉妹を支える責任を負うことになるからです。

介助者としての役割を期待される子ども時代、交際や結婚について悩む青年期、親と兄弟姉妹を同時に介護する必要が出てくる中年期、そして親亡き後の問題が後に続きます。

きょうだいは、ライフステージによって形を変えていく課題と向き合い続けなければいけません。しかし、その生きづらさは家族にも周りにも理解されにくく、人に話しにくいものです。

また、成年後見をはじめとする福祉制度についての情報はその多くが親で止まってしまいます。いずれ直面することになる課題についての情報を得る機会が得られにくい立場と言えます。きょうだい会はそんな悩みや生きづらさ、そして生活に必要な情報を提供しあう場として創りました。

私の兄は重度の知的障害と自閉症をもって生まれました。幼いころは周りの大人たちに「お兄ちゃんを助けてあげて」と言われ、それが当然のことと思っていました。一方で隣近所からは迷惑な家庭とみなされ、少しずつ差別を受けていると感じるようになりました。だからこそ、余計に家族を守らないといけないと強く思うようになりました。

しかし、家庭内では兄が不安定な時期を迎え、荒れました。学校では兄のことをからかわれるようになりました。私はどこにも居場所がなく、中学で不登校となりました。やり場のない怒りは親や兄に向かいましたが、自分を責めることで落ち着きました。そこから長く自尊感情を失った日々を過ごしました。

 転機は横浜で行われていたきょうだい児支援との出会いでした。「きょうだい児」は聞きなれない言葉でしたが、すぐにピンときました。苦しんでいた自分の姿を思い出したからです。そこで関わった「きょうだい」である子どもたちは一見普通の子どもでした。

しかし、その胸の内に、抱えきれない思いがあることを知り、感情を大きく揺さぶられる経験を重ねました。そして、ある気づきを得ました。自身が経験した苦しみや生きづらさを重ねることで、同じように苦しむ人の想いを理解できるのだということです。また、子ども達の成長によって自分自身が救われていました。


きょうだい会@Nagoyaは大人を対象とした会ですが、参加者それぞれの居場所になることを願って運営しています。
                

                発達協会『発達教育』2020年3月号より

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