見出し画像

ご神木が倒れた原因は雨?風?それとも…? 【28】

2020年7月、豪雨で岐阜県にある大木が倒れました。
その本当の理由を探るべく、環境学の研究チームが動きました。

今回は、樹齢何百年にも及ぶ大木の倒木についての研究をご紹介します。

↓ 音声でもお届けしています!

大雨や強風で、地域で大切にされてきた大木が倒れる…。自然災害の被害の規模が大きくなっている今、そのようなことが珍しいことではなくなってきています。岐阜県瑞浪市大湫町みずなみしおおくてちょうで、ご神木として町のシンボル的存在だった大きな杉の木も、その一つです。

2020年7月11日、豪雨のさなか、高さ40メートルにもなる樹齢670年の大杉は、その大きな根っこを露わにする形で倒れました。当然、雨が原因だと思いますよね。確かに雨はたくさん降ったのですが、その雨量は、この木が過去40年で経験したことのある範囲内でした。

本当に豪雨だけが原因なのか? 

調査に乗り出したのが、名古屋大学 環境学研究科のグループです。倒れた木全体を、レーザースキャナーを使って3次元データにし、その体積を調べました。

大杉スキャナ画像

すると、幹や枝など地上に出ている部分の体積に対し、土に埋まっていた根っこの部分の体積は3分の1以下でした。倒れた直後に片づけられて推定できなかった枝や葉を考えると、平均的な杉に比べて根っこが小さかったことがわかりました。

また、根の状態にも注目しました。最大9メートルにも横に広がる根でしたが、本来この木の大きさならば、広がりは12メートル以上必要だったそうです。さらに、その根の中心は腐っていて、倒れた後に土に残った根には、剥ぎ取られたような跡がありました。

木が倒れた時期は、大雨の影響で日照時間が例年と比べてとても短く、土や木が乾きにくかったという点で、根にとっては良い状態ではなかった、とグループは考えました。

これらのデータや考察を踏まえ、木が倒れた原因は豪雨に加え、根の生育状態にもあったという結論に行き着いたのです。

今回取りあげた大杉の倒木は、人的被害こそ出さなかったものの、停電など地域に大きな影響を出しました。見た目にはわからない根っこの状態を簡単に調べることができれば、事前の対策を打てそうですよね。

実は、今回の研究を行った平野恭弘ひらのやすひろ准教授は、根っこを掘り起こさなくても調べられる方法を開発しています。平野准教授からのコメントです。

「普段見ることのできない根が、大きな樹木や森を支えています。道路下の大きな穴を見つける”地中レーダ探査“という技術で、根の見える化にチャレンジしています。この技術で倒れやすい木を診断し、倒木被害ができる限り少なくなることを期待します。」

詳しくは、2021年9月27日発表の、名古屋大学 研究プレスリリースもご覧ください!

画像提供:平野恭弘准教授

ベーシック線

◯ 関連リンク

 ・平野恭弘准教授

 ・環境学研究科 地球環境科学専攻 地球環境システム学講座

 ・共同研究者 
  谷川東子たにかわとうこ准教授 

 ・生命農学研究科 森林・環境資源科学専攻 植物土壌システム研究室

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?