見て、つぶして、調べよう!名大温室で育てた砂糖イネ
「砂糖イネ」という名前を聞いたことがありますか?砂糖イネは、遺伝子の変異で、「米」ではなく「砂糖水」をつくるイネです。つぶすと甘い汁が出る不思議なイネで、名古屋大学などの研究チームが開発を進めています。
2024年8月9日、砂糖イネの実験を通して、砂糖イネを暮らしの中で活用する未来を考えるイベント「見て、つぶして、調べよう!名大温室で育てた砂糖イネ」を開催しました。
砂糖イネの糖度はどのくらい?
まずは、実験です。
砂糖イネをひと粒、稲穂からもぎ取ります。
粒の上の部分をハサミで切って、
マイクロピペットで、中の砂糖水を吸い取ります。
吸い取った砂糖液を、水が入ったチップに加えて、よく混ぜます。糖度を調べるために、20倍に薄める作業です。
ショ糖試験紙に垂らして、糖度を調べます。①まず、さまざまな糖度のショ糖溶液で、試験紙の色の変わり方を確かめます。②砂糖イネの砂糖水を垂らしたときの色の変わり方と比べます。下の写真の砂糖イネの糖度は、何%に一番近いでしょう?
写真の砂糖イネの糖度は0.5%に近いように見えますね。実際は20倍に薄めているので、0.5✕20の計算をすると、糖度は10%程度と考えられます。でも、イネの粒によって糖度にばらつきがあるようで、参加のみなさんからは「20%!」、「2.6%!」といった声が聞こえました。
講師の笠原さんの研究チームでも、1~20%のばらつきを確認しているそうです。
砂糖イネの砂糖で何つくる?
笠原さんは、砂糖イネが砂糖として私たちの食卓にあがる将来を描いています。イネは日本全国で生産できるし、砂糖イネから砂糖への製造プロセスはサトウキビなどに比べてシンプル且つ低コスト、とメリットも多いようです。
そこで会場のみなさんに、砂糖イネから作った砂糖で何を作ってみたいか聞いてみました。
食べる用途にとどまらず、エネルギーや環境問題への活用についても意見が挙がりました。砂糖イネが作り出す砂糖水は、純度が非常に高いショ糖溶液なので、とてもピュアな無水エタノールを効率よく作れるそうです。大量生産できれば、工業製品としてのアルコールやバイオ燃料への活用の可能性もある、と笠原さんは話します。
ただ、砂糖イネの実用化にはまだ厚い壁が残されています。砂糖水の糖度を80%くらいまで、ばらつきなく上げる必要があるとのこと。将来の食糧やエネルギー問題に大きく貢献していきそうな砂糖イネ、イベントを通じ、今後の研究へのみなさんの期待が高まりました。
(報告:丸山恵)
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