ナノ素材による健康被害のメカニズムが明らかに! 【15】
今回は、ナノマテリアルと肺の健康についての研究をご紹介します。
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ナノマテリアルは、名前からもイメージできるように、肉眼ではとても見ることのできない小さな小さな素材です。原料は炭素やシリカなどで、食品や化粧品、医薬品などへの応用が進んでします。
ナノマテリアルの工業生産量が年々増加する一方、健康被害の可能性も心配されています。特に、肺は呼吸で外界と接するので、微粒子の吸引による健康被害が報告されていました。
そこで、名古屋大学の呼吸器内科の研究グループは、代表的なナノマテリアルであるシリカ粒子と、大きさや表面の化学的な特徴の異なるさまざまな粒子をマウスの肺に投与して肺の炎症を調べました。
その結果、大きな粒子や機能を変化させた粒子では、シリカ粒子に比べ、肺の炎症が大幅に軽減しました。一方、シリカ粒子は、肺の中でマクロファージという細胞に取り込まれ、エンドソームと呼ばれる細胞内の小さな器官に蓄積します。そこで活性酸素が異常発生していたのです。
発生する活性酸素の量は、シリカ粒子を取り込んだ細胞がつくる「ケモカイン」という炎症を引き起こす物質の量に関係していました。そこで、活性酸素を発生させる酵素の働きを弱めると、つくられるケモカインの量も減少しました。
このメカニズムをうまく応用することで、PM2.5など粉塵による健康被害の予防や、新たな治療方法の開発につながるかもしれません。
研究を行った橋本直純准教授と阪本考司病院助教からのコメントです。
ナノサイズの粒子が体の中のどの細胞に取り込まれ、さらにその細胞の中でどの部分に蓄積するかを追求できたことが、新しい発見のカギになりました。微粒子に関連した健康被害は今世界中で問題となっていますので、研究を発展させてその解決に少しでも貢献していきたいです。
詳しくは、2021年6月18日の名古屋大学研究プレスリリースもご覧ください!
制作協力:髙山楓菜(名古屋大学 理学部3年)
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