Kakshine(カクシャイン)☆多くの生物の核を輝かせる蛍光色素 【7】
名古屋大学には、世界を変える新しい分子をつくる研究で活気あふれる研究所があります。その名をトランスフォーマティブ生命分子研究所、英語名の頭文字をとって、ITbMと呼ばれています。
今回は、ITbMのユニークな研究を一般の方々にも広く知ってもらうお仕事を担当する三宅恵子さんから、イチオシの最新の研究成果をご紹介いただきます。
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こんにちは。ITbMの三宅です。
今回紹介するのは、細胞の中のDNAに色をつけて観察しやすくする画期的な色素分子を開発した研究です。
私たち人間を含む生き物は細胞でできていて、その中にあるDNAは生物の体の設計図と言われ、子孫に受け継がれる遺伝情報の本体です。
多くの生き物では、細胞の中に核のほか、ミトコンドリアや葉緑体などの機械でいう部品のような小さな器官があり、それぞれに独自のDNAがあります。
これらのDNAが細胞分裂にともなってどのように複製されているかを詳しく調べるには、生きたまま細胞を 顕微鏡で観察する必要があります。その際、重要となるのが、これらのDNAを識別できる色素です。
しかし、これまでの色素は、異なるDNAが同じように染まってしまいうまく識別できなかったり、識別するために生物に有害な紫外線を用いる必要があったりと、様々な問題がありました。
研究グループは、新たな蛍光分子の骨格に着目し、その分子に長さの異なる分子をつなぐことで、可視光のさまざまな波長域で光るDNA蛍光染色色素の開発に成功しました。
グループは、この色素をKakshineと名付けました。この名前には、当時大学院生でメンバーのカキシくんが合成した、核を光らせる、革新的な、という意味が込められています。
Kakshineは、さまざまな動物由来の培養細胞だけでなく、植物の葉や根の核DNA、ミトコンドリアDNA、葉緑体DNAを生きたまま染色でき、さらには、濃度によりそれらを染め分けることができます。
研究を行った佐藤良勝特任准教授からのコメントです。
「Kakshineは自由闊達で将来が楽しみな学生のアイデアにより生まれた分子です。多くの研究現場で役立つことを期待します。そして、現在ドイツに留学中のカキシくんには、もっと凄い分子を合成しました!と驚かせてくれる日を楽しみにしています。」
今後、KakshineがDNAを検出する強力な試薬として、基礎医学や生命科学の分野で応用されたり、先端顕微鏡技術の普及に貢献することを期待しています。
画期的な色素分子Kakshineについて、三宅さんからでした。医学や科学の今後も光らせてくれそうです。楽しみです!
詳しくは、2021年5月12日の名古屋大学研究プレスリリースもご覧ください!
制作協力:名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所
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