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世界最大サイズができました!―Cのすごい構造― 【45】

今回は、今注目の新しい炭素材料の開発に関する話題です。
経済学研究科修士1年の堀内愛歩ほりうちなるほです。

今日は「超伝導」というキーワードが登場しますが、身近な炭素が超伝導体になるなんてすごい!と思い、このトピックを選びました。

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炭素には、グラフェン、グラファイト、フラーレンなどと呼ばれる様々な同素体があります。例えばシャープペンの芯はグラフェンがたくさん重なったような構造をしたグラファイトでできています。

グラフェンは、炭素原子がシート状に並んだ物質で、その厚さは原子たったの1個分です。シャーペンの芯の例のように、グラフェンの層を組み合わせると新しい性質が生まれます。例えば、2層のグラフェンを重ねて、角度をわずかにずらすと、「超伝導」が発現することが知られています。回転させるようにずらすので、「ツイスト2層グラフェン」といいます。

「ツイスト2層グラフェン」は、グラファイトを機械的に剥離して作ります。ただ、この方法では、大きくても0.05mm角ほどのとても小さな試料しか作れません。この大きさでは、性質や機能を詳しく調べることができません。より大きなツイスト2層グラフェンを作る技術が求められていました。

そこで、名古屋大学の研究グループは、SiCエス・アイ・シー熱分解法という、炭化ケイ素を加熱してグラフェンを作る方法で、5mm角のツイスト2層グラフェンの作製に成功しました。面積にして、従来の数千倍の大きさです。

→作り方の6つのステップはプレスリリースをご覧ください!

市販のグラファイトから剥離する従来のやり方とは違い、グループが作ったグラフェンをそれに最適な方法で転写しています。かかる手間や時間を増やすことなく、改良に成功したそうです。

グループは、この方法で超伝導を発現するツイスト2層グラフェンを作成し、超伝導の起源といわれるフラットバンドという状態を、直接観察することにも成功しました。大きな試料を作れるようになったおかげです。

このように、原子の層を回転させて重ねることで、超伝導など、新しい性質や機能を得る技術は、「ツイストロニクス」と呼ばれます。使用する物質や重ねる角度を、少し変えるだけで、まったく別の性質が見られるツイストロニクスの無限の可能性を感じます。

研究を行った乗松航のりまつわたる准教授からコメントをいただきました。

ツイストロニクスでは、これまでにはなかったツイスト角という新しい自由度を変えることで、様々な性質が現れます。今回、大面積の試料を作製する技術を確立できましたので、さらに応用の道が広がってきました。
またこの研究は、大学院生が、別の共同研究を行っていたアメリカのMIT、マサチューセッツ工科大学まで、グラフェンの転写技術を習いに行って、できるようになったものです。MITは、特にテクノロジーの分野で世界でも高い評価を受ける大学です。その学生は、MITと共同研究を行っている企業に就職し、現在も一緒に楽しく共同研究を続けています。

詳しくは、2021年12月15日発表のプレスリリースもご覧ください。

(文:堀内愛歩、丸山恵)

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◯関連リンク

乗松研究室HP

・乗松研究室では、今回の成果を↓の動画で解説しています!



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