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消化管から胎盤を作った!?赤ちゃんを産むサカナのユニークな胎生のしくみ 【16】

みなさんは、卵ではなく、ヒトと同じように赤ちゃんを産むサカナがいるのをご存知ですか? 今回は、そんなユニークな生態のサカナの研究をご紹介します。

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この研究は、「ハイランドカープ」という、メキシコ原産のサカナを用いて行われました。ハイランドカープは、私たちヒトのように、お母さんのお腹の中で赤ちゃんを育ててから出産します。

胎内の赤ちゃんは、お腹のあたりから紐のようなものが何本も出ています。これらは「栄養リボン」と呼ばれ、お母さんから栄養を受け取るのに使われていると考えられています。

しかし、栄養リボンはへその緒と違い、赤ちゃんとお母さんを直接繋いでいるわけではありません。それでは、赤ちゃんはどうやって栄養を吸収しているのでしょうか?

その問いに答えるため、研究グループは、栄養リボンの遺伝子の全体像を調べました。遺伝子発現のデータから、「エンドサイトーシス」が栄養吸収の原動力だということが見えてきました。

エンドサイトーシスは、細胞が栄養分などを細胞の中に取り込み、細胞の中で消化するプロセスのことです。

そして、取り込みや消化を担う物質が、消化機能を持たない卵巣の中で育つハイランドカープの赤ちゃんの栄養吸収を助けていると考えました。エンドサイトーシスによる栄養の吸収は、他にも魚類や、哺乳類の赤ちゃんの消化管でも報告があります。

研究から見えてきた、栄養リボンと消化管の意外な共通点。グループは、ハイランドカープの栄養リボンの一部が、消化管に由来すると考えました。この研究に基づき、ハイランドカープが属するグーデア科の魚がお母さんのお腹で育つユニークなしくみの成立についての仮説を発表したのです。

研究を行った飯田敦夫いいだあつお助教からのコメントです。

今回の成果は およそ3万種いると言われている硬骨魚類のほんの端っこで起こった、我々人類にとっては取り留めのない出来事に関するものかも知れません。でも自分が取り組まなかったら10年後、いや、50年後も人類はこの事実を知り得なかったかも知れない。そんな重箱の隅を突いて、ひとつずつつまびらかにしていくことに、研究の醍醐味と爽快感を感じています。

私は、恥ずかしながら、この研究に出会うまで哺乳類と同じ胎生のサカナがいることを知りませんでした。卵を産む種類のサカナが多い中、胎生を選んだサカナたち。その謎の解明を、今後も楽しみにしていきたいと思います。

研究について詳しくは、2021年6月30日付けの名古屋大学研究プレスリリースもご覧ください!

            制作協力:井田明日香(名古屋大学文学部4年)

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◯ 関連リンク

 飯田敦夫助教

 ・Lab Travellerさん制作の飯田助教の研修室訪問動画

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