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49. 超伝導の起源にせまる! カギは「揺らぎ」

今回は、ツイスト2層グラフェンという物質の研究をご紹介します。理学部三年、髙山楓菜たかやまふうなです。

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グラフェンを含めたナノカーボン分野は、名古屋大学が得意とする分野で、第45回でもツイスト2層グラフェンの別の研究をご紹介しました。

上の記事にもありましたが、ツイスト2層グラフェンは炭素原子をシート状に並べたものを2つ重ねて、わずかに回転させたもののことです。特に、回転させる角度を1.1度にしたものは魔法角ツイスト2層グラフェンと呼ばれ、超伝導が現れるため集中的に研究されてきました。

魔法角ツイスト2層グラフェンは、バレー自由度やスピン自由度という、回転に関する二つの自由度を混ぜ合わせるような高次元の回転操作が可能な、とても珍しい物質です。今までに実現できていない「相転移現象」を起こせるのではないかと期待されています。相転移現象とは、例えば水が氷や水蒸気になるように状態が変わることを言います。

最近、魔法角ツイスト2層グラフェンを使った実験で、超伝導のメカニズムに関わるネマティック秩序という現象が観測されました。ネマティック秩序とは、結晶の回転の対称性が自発的に破れる状態のことです。

「対称性が破れる」という表現はイメージしにくいかもしれませんが、例えば机の上に棒を立ててみると、少し揺れただけで倒れてしまいますよね。最初に立っていた時にはどの角度から見ても一本の棒でしたが、倒れた後は棒の「向き」ができてしまいます。つまり、対称ではなくなってしまったということで、対称が破れると言います。

ネマティック秩序がなぜ起きるのか…
実は、従来の理論ではこれを説明できていませんでした。

そこで、名古屋大学の研究グループは、バレー自由度とスピン自由度の二つを混ぜ合わせた複合自由度に着目しました。そして、複合自由度が量子的に揺らぐことで、電子がある一定方向に飛び移り安くなる量子相転移が起きることを発見しました。ボンド秩序と呼ばれるこの現象が起きると、回転の対称性が自発的に破れ、ネマティック状態が生じることを解明したのです(トップ画像はボンド秩序の例)。

私にとって量子力学や相転移の勉強はとても難しく、講義でも楽しいことばかりではありませんでした。しかし、超伝導のような面白い現象に関わっていると思うと、もっと詳しく知りたい、この理論を理解できるようになりたい、と思えてきます。この研究から、超伝導を身近に使用できるようになったら楽しいですね。

研究を行った大成誠一郎 おおなりせいいちろう准教授からのコメントです。

ツイスト2層グラフェンは相互作用が弱いグラフェンを2枚ひねって重ねただけで相互作用の強くなるという面白い新規物質で、その強い相互作用のために様々な相転移が見つかっています。

研究手法を改良し、試行錯誤を繰り返しながら、これらの相転移のメカニズムを解明することが研究の醍醐味です。様々な相を統一的に説明することを目指しています。

この研究について詳しくは、2022年2月15日発表のプレスリリースもご覧ください。

(トップ画像提供:大成誠一郎准教授/文:髙山楓菜、丸山恵)

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◯関連リンク

名古屋大学 理学研究科 S研 凝縮系理論グループ

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