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54. 植物だって雨から身を守る!!植物の生き抜く術

上の画像で光っているのは、植物の葉の表面で雨を感じて免疫を活性化させる毛状の細胞「トライコーム」。今回は、植物が雨に打たれると免疫を活性化させるという、驚くべき事実を発見した研究をご紹介します。
理学研究科修士2年、宮田芙悠みやたふゆがお届けします。

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前回に引き続き、学生メンバー宮田&堀内が、植物研究の魅力を語ります。

みなさんは、植物にとっての雨というとどのようなイメージを持つでしょうか?おそらく「恵みの雨」のような、植物には不可欠なものと考える人が多いのではないでしょうか。私もそう思っていました。ですが、実は雨が病気の原因となることがあります。カビや細菌、ウイルスなどを運ぶからです。

脅威にもなる雨。植物は無防備なままなのでしょうか?
研究グループはこの「雨」に着目し、植物が体を守る仕組みである免疫系との関連を調査しました。

まず、実験でよく使われる植物、シロイヌナズナが雨に打たれたとき、体の中でどのような変化が起こるのかを解析しました。すると、免疫関連の遺伝子がよりたくさん働いていることが明らかになりました。雨によって免疫が活発になるのはどうやら間違いなさそうです。

それでは、この仕組みはいったいどうなっているのでしょうか。さらに調査を進めると、雨によって活発になった免疫は、ふだんはCAMTAカムタ転写抑制因子というブレーキの役割を持つ物質によって抑制されていることがわかりました。つまり、雨が降ったとき、免疫に対するこのブレーキが何らかの刺激で解除され、免疫が活発になったということです。

ブレーキの役割を持つCAMTA転写因子は、植物の中にあるカルシウムイオンが増えることで解除されることが知られていました。

そこで、カルシウムイオンがあるとその部分が蛍光を発するシロイヌナズナを用意しました。すると、雨に打たれたとき、葉の表面に大きな蛍光色の模様が現れました。葉の表面にある毛のような見た目をしたトライコームという細胞が雨を感知して、カルシウムイオンを発生させていたのです。

トライコームは、雨を認識して免疫を活性化する

まとめると、トライコームが雨を感知し、カルシウムイオンを発生させ、ブレーキであるCAMTA転写因子が抑制され、免疫が活発になっていた、ということになります。

植物は病原体を直接感知すると免疫を活性化させることは知られていました。しかし、雨に対してこのような応答があることはこの研究で初めて明らかになるました。

動かないように見える植物も人間と同じように免疫を持ち、自分で自分の身を守っていたのですね。梅雨の時期や降水量が多い地域での農作物の病害対策にも応用できそうなので、研究の今後がとても楽しみです。

研究を行った多田安臣ただやすおみ教授からのコメントです。

移動によって危険から逃避できない植物にとって、病原体は壊滅的な被害をもたらす脅威です。今回の研究で、逃避できないからこそ危機を予見する、植物の新しい能力を明らかにできました。名大の遺伝子実験施設では、次世代シーケンサーを用いた遺伝子解析業務を行っており、この技術が今回の発見に繋がったと言えます。

詳しくは、2022年3月9日発表のプレスリリースもご覧下さい。

(画像提供:多田安臣教授/文:宮田芙悠、綾塚達郎)

◯関連リンク
・名古屋大学遺伝子実験施設植物分子シグナル学グループ

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