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【芝居人狼Me】変遷のアルカナ編 フランクという男について

今までこういった「キャラクターができるまで」のような投稿はTwitterで済ませていたんですが、今回は特に思い入れが強く(毎回強いですが)、なかなかに手こずったキャラクターでもあるので、覚書の意味も含めてこうしてnoteに纏めることにしました。

まず、今回の「変遷のアルカナ編」(Me内では通称”タロット編”と呼ばれる)では、その名の通りタロットカードの「アルカナ」をモチーフにしています。

全員が神のような存在で、このアルカナワールド、ひいては人間界に影響を及ぼす選ばれし者たち。
大アルカナの頂点《世界》>他の大アルカナ>小アルカナ
といった風に、選ばれし者たちの中にも「位」があります。

キャラクターづくりを始める前に、上記の世界観を共有していただいた時に、「そもそもアルカナって何?」ってところから私は始まりました笑

知識として、タロットカードということや、実際にそれをモチーフにした作品であるCCさくらやジョジョ、ペルソナシリーズは履修済でした。しかし実際にカードが人間の形をしたキャラクターとして存在して、喋って動くとなると、自分の解釈でキャラクターを形成する必要があると感じました。


最初にインターネットでタロットカードの起源を調べ、マルセイユ版とウェイト版の二つに大きく分かれることを知りました。Meのイラストでは両方の解釈を取り入れたデザインになっているかも。興味がありましたら、是非こちらも調べてみてください。

次にモチーフとする大アルカナそれぞれの正位置・逆位置の意味を調べました。フランクに合いそうだな~と思ったのは、《魔術師》《隠者》《節制》だったかな…。その中で一番今までのフランクのイメージを覆せそうな《魔術師》を強い意志で選びました。

海賊編のフランクが恐らく、一番大衆的なフランクのイメージには近いと思うんです。落ち着いていて紳士的で強かという、SP1が持つイメージをSP2で演じていました。(その後海軍フランクはイケメンというキャラづけが出来て更には腹筋を割ったことでその穏やかなイメージはどこか行ってしまったけど)

魔術師のカードは、正位置が「才能」「自信」「創造」「可能性」、逆位置が「スランプ」「消極的」「やる気の枯渇」などを意味していました。

え? それだけ??

この少ない情報からキャラ設定考えるの??

…これがカードの意味を調べていたときの第一印象でした。
とは言うものの、魔術師を選んだ時点でなんとなくイメージは出来ていました。ただし、正位置だけのイメージ。
自信家かつ努力家でリーダー気質があって一人称が俺、というところまではイメージが湧いていて、問題は逆位置との整合性でした。

これが実は、公演1週間前ぐらいまで逆位置のキャラを作れていなかったんです。

それについてはまた後ほど。

カードをキャラクターにするとはどういうものなのか?というところで、リーダー(クリス役)のときおさんが参考に教えてくださったのがこちらの書籍。

Kindle Unlimitedに登録していると無料で読めます。

これを読んで、全体のイメージ像が掴めました。
そこで気になったのは、「なぜ魔術師はこんなにエネルギッシュで強い意味を持つのに”始まりの1”なのだろう?」という疑問。

ここから《魔術師》フランクというキャラクターに私の解釈が混ざり始めます。

アルカナカードは「タロット占い」に使われます。
タロット占いは、カードが意味するものから使い手が解釈し、対象者にカウンセリングするようなものだというのが私の認識です。
つまり、ここからは自分で考えていかなくてはいけません。
キャラ創作のスタートです!

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正位置のキャラシート。
カミラ役でありデザイン担当のスズさんがこだわりを持って作ってくださいました。フランクはアルカナワールドに誕生してまだ1000年程度の若者なので、カードもやや新品に近い仕様のようです。

魔術師の正位置そのものの意味に「才能」や「自信」はあるが、逆位置に「自信喪失」や「スランプ」があるということは、その自信に裏打ちされる実力があれども決してプロフェッショナルに到達しているわけではなく、人間のように努力し苦悩し葛藤する…魔術師=神として不完全なものということではないだろうか?

だからきっと「始まりの1」なんだろう。
他の21のアルカナたちの力にも満たず、その溝をなんとか埋めようと研鑽を積む彼は、決して弱音を吐き出さず、愛する者たちの頼りになる存在でありたいと願い、まるで強者のように振る舞い、しかし明朗快活に周囲を笑顔にしていくポジティブさを併せ持つ。彼は道化であり奇術師――まさしく《魔術師》なのだろう。

しかしどうして、彼本人は恐らく「自信」も「負けん気」も虚栄でしかなく、地を這う蔦に足元を掬われている。足元を薔薇や百合の花畑で覆うことで、それを隠しているらしい。


ここまで瞑想して、私の中で「《魔術師》フランク」というキャラクターが能動的に動き始めます。しかし、それが結果的に、フランクというキャラクターの心の内を私が動かせなくしてしまっていたのです。

何を言ってるんだと思われるかもしれません。
フランクが足元に自信のなさを隠していることまでは気づけたのですが、その本心が一体なんなのか、彼が何を思い、何を取り繕っていて、一番触れられたくない所はどこなのか、私に教えてくれることはありませんでした。

そりゃ、そうだよね…
知られたくないことの一つや二つ、誰でも持っているよね…。

フランクの本質を知るために、もっと深く彼の感情を探っていきます。
今回の演技の方向性として近かった演技法の記事を紹介しておきます。

そして、私はもっと彼を知ろうと、彼の経歴を考えることにしました。
この辺りは物語に沿って組み立てていくことになるのですが、ストーリーから逆算して考えた結果、彼が「選ばれし者」ではないことに気付きました。


今回の公演は、見せたい物語・キャラクターを満遍なく配置することで、1~4章の各メインキャラクターを決めていきました。

例えば、1章の《皇帝》ニックは最もベーシックなアルカナで、アルカナワールドに誕生した瞬間から《世界》の啓示によって《皇帝》候補者に“選ばれて“います。候補者は、小アルカナという下積みを経て、先代アルカナの消滅に合わせて大アルカナへと出世します。

2章の《教皇》ショーンは、元人間という、生まれながらにして転生者としてアルカナワールドで《教皇》候補者として“選ばれて“います。

では3章のフランクはというと、そもそもアルカナの候補者でもなんでもなかった、ただ『農民』としてアルカナワールドに花畑を作りお世話をする役割を持って誕生しました。それがなぜ、《世界》になりたいなんていう大それた望みを持ってしまったんだろう。

この望みの本心は、人狼のカードを引いた時に語る予定でした。
決して綺麗な理由ではなく、彼の自尊心と自分の目的のためのようです。
最初こそ、本当に「みんなを笑顔にしたい」だったのでしょう。
しかし恋人メアリーとの出会いによって、この望みは大きな矛盾を抱えていくことになったのです。


愛するメアリーを想うばかりに、フランクの「《世界》になりたい」望みは「《世界》にならなくてはならない」という責務へと変わっていく。
そうしなくては、自分は他のアルカナたち、そしてメアリーにさえも、認めてもらえないのだと。

実際のメアリーは、フランクが《世界》になれなくたって、一緒にいられるならそれも幸せだと考えているようですが、フランクはメアリーの望みも勿論叶えてあげたいですし、メアリー自身も《運命の輪》が持つ「選定者」という責務を全うできずに苦しんでいるため、救い出すためにも自分が《世界》になり、新たなアルカナワールドを幸福へと導き、メアリーの真価も周囲に認めて欲しいのです。

アルカナワールドや人間界の「みんな」を笑顔に、幸せにしたいはずなのに、今の自分では、力が及ばない!力を、誇示する機会があるべきだ…!

そうした責務と重圧によって、逆位置へと反転した時に、一気に全てを投げ出したくなってしまったのです。
自分の掲げる目標が夢物語であることを知っているが故に、現状維持が最善の選択だと言い聞かせています。

タロットキャラシ-フランク-赤-1-1024x576

逆位置のキャラシート。
昏迷乱擾(こんめいらんじょう)とは、心を乱して判断力を弱らせて悩ませることを意味しています。

普段から弱音を吐かず、苦しさや葛藤をずっと心の内に秘めていた彼が、逆位置になった瞬間どのように解き放たれるのか、私は全く想像がつかなかったし、彼自身もそんな姿は見せたくはないと言うので、多分、彼は「強がり」でもあるんだなと気付きます。

これが、公演1週間前まで逆位置のキャラ設定が思うようにいかなかった原因。


彼の本心と向き合うために、何度も逆位置の練習をして(幸い、3章以外は全て逆位置での出演だったため、恐らく逆位置での練習が一番多いキャラクターでもある)その度に、さっき紹介した記事のメソッド演技法に苦しめられていました。

具体的なことを言うと、彼が報われない結末を迎える度に、彼の負の感情がぐわあっと私の中に入り込んできて、しばらくは食事も喉を通らないこともありました。

何度も何度も、「貴方が自分を認められなくても、私はちゃんと貴方の頑張りを認めている。貴方がまだまだだと思っていても、貴方の周囲のアルカナたちは貴方にたくさん救われている」と彼に言い聞かせ。

そうして苦しんだ先に分かったことは、もうしんどすぎて猛烈な吐き気に襲われていたこと。もうこれをそのまま逆位置のキャラにしてしまおうと決めました。
《世界》というワードを聞く度に重圧を感じてついつい「おぇぇぇぇ…」となってしまうように。

不思議とこういったインスピレーションが湧いてくるのは、ニック役の杏露さんを交えて雑談している時が多く、学園コメディ編でもなかなかフランクの役どころが決まらない時に、ドM教師ニックのことを考えていたら変態対抗したくなったので「じゃあ全裸で授業します」という流れに。

それはそうと、そんな逆位置フランクの口癖は「ぼかぁ魔術師であって魔法使いじゃあないんだよ…」です。友人らから、「フランクならきっとなんとかしてくれる!」と頼られることは勿論好きだけれど、それが魔法=才能のように言われるのは少し気が引けてしまう部分もあったのかもしれません。

自分が理想を目指して努力することと、周囲に”フランク”という理想のキャラクターを押し付けられるのとでは、全く意味合いが異なることへの皮肉を込めた台詞です。


最後にもう少し、タロット占いとしての魔術師についての話をします。
こちらのページの内容が面白かったので、少し紹介させてください。

魔術師自体、基本的なステータスはやはり高く、愚者よりも現実的で有益な楽しみを優先する傾向にあって、フランクでいうところの「サーカス団」がそれに当たるんじゃないかなと思っています。

3章冒頭でもちらっと触れている通り、アルカナワールドにおけるアルカナたちの活動源は「信仰力」です。これを高めることでアルカナとして及ぼす影響力が高まり、立派なアルカナとして成長していきます。

これをもっと、アルカナとしての役割を果たすだけでなく、楽しいことで集めていこう!と考えサーカス団を立ち上げたのがフランクでした。

もともと大道芸者として花の手品を各地で披露しながら一人で細々と活動していたフランクにとって、仲間が加わることはこの上なく楽しいことでした。毎日話し相手がいて、どうでもいいことで一緒に笑って、同じ目標を持って共に活動する、というのは彼にとって最大の娯楽と言えるでしょう。


また、物語で掛け合いをすることはなかった女教皇ですが、4章で判明した通り、劇中で消滅した前《世界》は元《女教皇》でした。

現《女教皇》であるローラに対しては、自分の本心を見透かされてしまいそうな気がして少しだけ苦手意識はありながらも、落ち着いていて自分とは真逆のオーラがあり、尊敬する部分も多いです。

そんな《女教皇》こそがフランクの目指した《世界》の前身だったのですから、それは道理で惹かれるものがあったのでしょうね。


正位置のイメージとして、第一話の主人公という記述がありますが、これもタロット編全体で見たら起承転結の「転」の部分、新しいアルカナワールドの在り方を提示する、本当の「始まり」の章であることを表しています。

奇跡的、いやむしろ運命的に3章の主人公が1の魔術師であり、4章の主人公が2の女教皇、真の主人公は0の愚者という、綺麗な収まり方になりました。

本編ではよく長生きをさせてもらって(その分苦しみもがく姿を晒し)、物語も各メインストーリーの全容をお見せすることが出来たので、ぜひ公演の動画をご覧ください。

《魔術師》フランクをかっこよく…そして美しく(重要)描いてくださったときおさんと、共演してくださるMeの皆様と、いつも応援してくださる観覧者様に最大の感謝を!


Chapter1. Eros
主人公・ニックとカミラとエリックが大活躍します。
ショーンとのバトルも見どころです。おすすめ。
お部屋の合言葉が【ラッパーフランク】だったせいか、自分もラップするかしないか迷いながら最終日を迎えてしまう。

Chapter2. Agape
元人間の主人公・ショーンが一生懸命がんばるお話。
メアリーに心を乱されてフランクはご乱心の回。
お部屋の合言葉が【なろう系ショーン】だったのは、公演前にMeの雑談で「転生したら神になっていた件」というショーンのスピンオフSSのせい。

Chapter3. Philia
農民出身の主人公・フランクが荒唐無稽な夢を掲げてがんばるお話。
フランクが唯一正位置で出演した回です。フレディはずっ友。
お部屋の合言葉である【身内切りフェイ】、多分一生許さん。

Chapter4. Storge
《女教皇》ローラと《愚者》クリスのダブル主人公。
物語はクリスルートに進んだようですが…結末は、その目で確かめてみてください。お部屋の合言葉は【この世界に祝福を】。


合わせて読みたい、こちらもどうぞ。

フランクの小話を軽くまとめるつもりが、書き始めるとついつい筆が乗ってしまって、これって書いちゃっていいんだろうか…?という内容も少しばかりありますが、今回はタロット編のまとめを最後に置いて終わります。

10月下旬予定となっていたタロットカードの頒布も、もう少しで始まるそうですよ。

タロットカード告知

Meでは次の第5演目の公演に向けて、鋭意練習中です。
最新情報や小ネタ、物販情報は今後も芝居人狼Meの公式Twitterから発信されていきますので、ぜひチェックしてくださいね!

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https://twitter.com/shibaijinro_me

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