炎上する「おじさん構文」と「エモ文体」の共通点、本質が見えない危うさとは
「おじさん構文」とは何か説明しよう。『「"おじさん構文"でも大丈夫」部下とのLINEが苦手な人がやるべき"シンプルな解決策"』(高橋暁子・プレジデントオンライン)によると次のようにある。
<4年ほど前から、「おじさん構文」が定期的に話題に上る。おじさん構文とは、中高年がやりがちな主にSNS上での上滑りしたコミュニケーションのことだ。「汗をかいた絵文字」「!や!?などの絵文字」「〜だネ」「○○チャン」などの特徴を持ち、若者たちには面白がられたり、まねされたりしてきた>
エモ文体とおじさん構文の共通点に触れる前に、そもそも「エモ文体」とは何か、説明したい。
「エモ」とはエモーショナル(emotional)の略で、なんとも言い表せない素敵な気持ちになったときや、ある対象に対して“感情の変化”が起こったときに使われる若者言葉。「エモい」と表現される。
このエモさを感じさせる文章に使われるのが、「エモ文体」というわけだ。
しかし、エモ文体と言われるもので描かれる内容が感情を動かすものかといわれると、そうではない。実態は「エモくもないものをエモく仕立てる」文章技法だ。
まずはひらがなの多用、独特の漢字の「ひらき方」である。
私→わたし
思い→おもい
不思議→ふしぎ
また、エモ文体には、少し幼げな表現が頻出する。
大人が通り過ぎてしまう何気ないことにも目をとめ、子どものような物事の見方をすることで、“あどけない、無垢さ”を印象づける効果がある。
そして感情の動きや出来事を、少し大げさに盛って書くことで、エモさを醸し出すことができる。
そのほかにもセンチメンタル、または哲学風な感じ、ないしはドラマチックな物語のような感じの表現、がある。
また、エモ文体は特にタイトル付けで顕著に表れる。
タイトルとは、文章の顔であり、内容の要約の究極ともいえる。
しかし、エモ文体の使われた文章では、タイトルだけではおよそ内容の見当がつかず、あえて想像をかき立てるようなものがつくことが多い。
読者は文章を読んではじめてタイトルのさすところがわかり、「エモい」となるのである。
さらにもう一つ特徴を挙げれば、物事を端的に書かず、膨らませて書くことだろう。
エモ文体を観察していると、要旨を抜き出すとなんてことない内容をこねくり回し、くどくどと書いたものをよく目にする。
エモ文体やおじさん構文に共通するのは、文章の骨子、本質を覆い隠し、見えにくくする点だ。
文章に装飾やエフェクトがあまりに多く、いったん脳内で訳してから、内容の問題点を指摘しなければならない。
装飾を身ぐるみはがして平易な文章にすると、倫理的に問題のある内容だったりするのに、独特の表現によって深刻さがかき消されるのだ。
おじさん構文とエモ文体の共通点をまとめよう。
(1)文章の骨子、本質をぼかし、見えにくくする
(2)装飾が多く、批判の前に通訳が必要
(3)冗長で読者をふるい落とす
(4)文体への批判で論点がそれる
エモ文体への指摘で、「葬式にジーンズで参列しているよう」というものがあり、言い得て妙だと感じた。
真面目なテーマと癖の強いおじさん構文やエモ文体は「混ぜるな危険」といったところだ。
ただし、あくまで扱う内容の深刻さが炎上した一番の要因であり、深刻な内容の上に自分語りエフェクトをかけていることで、火に油を注いだ格好といえそうだ。
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