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女性トイレが無くなる!? 検証してみた☆

歌舞伎町タワーのトイレ改修は当然の帰結と思いますが、街中の公衆トイレや公園トイレ等もひっくるめて「女性トイレが消えようとしている」旨の報道が多いため、新宿区の公開資料とストリートビュ―に首っぴきで検証してみました。

1.女性トイレは消えようとしているのか

まず、新宿区の公衆トイレ等149箇所を設備により5つの類型に分け、箇所数を集計しました。個人作業につき、多少のミスはご容赦くださいな。

表-1 類型別箇所数

各類型のうち、女性用個室の設置があるのが「A1」(バリア+男性用+女性用)と「B」(男性用+女性用)になります。新宿区の女性用個室設置率は30.2%と、23区平均として報道されている4割弱と比べると低めです。
最も多い類型は「C」(男女共用の個室のみ)で、過半数の56.4%を占めています。

続いて、類型ごとの設置年代と女性用個室の設置率の変化を見てみます。

グラフ-1 年代別設置状況

類型「C」のトイレが平成前期に急増し、それに伴い女性用個室設置率が大きく下落しています。これは法令に基づき、主に児童遊園への簡易的な箱型トイレ設置を推進した影響と思われます。(参考:「児童遊園の設置運営について」平成4年3月26日、厚生省児童家庭局育成課長通知)
しかし、その間も含め女性用個室のある公衆トイレ等が減少した事実はなく、近年では箱型トイレの更新等もあり、女性用個室の設置率は平成18、19年の22.8%を底に上昇を続けています

以上から、「女性トレイが消えた」論者は「公衆トイレエアプ」であると断言させていただきます。

類型「C」の箱型トイレ(余丁町児童遊園)

ちな、平成前期にばら撒かれた箱型トイレとはこんなやつです。たぶんピーピー言ってる人たちに、このイメージはないんじゃないでしょうか。私も使ったことは一度もありません。

2.公衆トイレの設備は男性優遇か

しばしば男性優遇のやり玉に上げられる類型「A2」(共用+男性小用)のトイレは、新宿区に5箇所存在します。また他区においては、バリアフリーと男性用個室のみのタイプもそれなりに見られます。
果たしてこれらは、「男性優遇!女性蔑視!」なのでしょうか。

新宿区の公衆トイレ等のうち56箇所について、平日日中における男女別の利用状況を纏めました。なお、56箇所に箱型トイレは含まれていません。

グラフ-2 施設別利用者数
表-2 利用者数と男女比

利用者数の中央値は100人前後ですが、特筆すべきは男女比で、何と94対6の大差がついています。
「共用トイレは危険だから女性は使わないのよ!」という主張があるかもしれませんが、利用者数第2位の鶴巻南公園は女性用個室完備の類型「A1」ながら、利用者557人のうち女性は僅か4人です。

この圧倒的な男女比の前では、女性用個室がなかったりバリアフリー併用だったりすることが、ひどく妥当に思えるのですがいかがなものでしょう。
男性用トイレが多いのは男性優遇の結果ではなく、単なる需要と供給によるものです。逆に女性用個室が「過剰設備」「税金の無駄遣い」と反撃されてもおかしくないレベルと感じます。

☆☆☆
23区全体をざっと見渡してみると、財政力があり整備が進んでいる都心3区(千代田、中央、港区)と、独自進化を遂げている渋谷区を除いては、概ね新宿区と同じ状況と言えそうです。
渦中の渋谷区に関しては、やる気が起きれば掘り下げてみたいですがやる気が起きなさそうです←

断っておきますが、私は女性トイレ廃止派でもアンフェ姫でもありません。ただ、公衆トイレの整備を含む街づくりには、感情論ではなく客観的事実に基づく議論が必要と考えるため、今回このnoteにしたためた次第です。


※ 都市公園法上の制約について

都市公園には、公園施設として設けられる建築物の面積上限があって、公園トイレもこの制約を受けることになります。これが都市公園法上「100分の2」だということで拡散されていましたが、だいぶ前に法改正があって「100分の2を参酌して条例で定める」となりました。
まだ多くの自治体は100分の2ですが、新宿区は「新宿区立公園条例」で100分の5に緩和していて、法令上も選択の幅は広がっています。


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