本当に怖い後期高齢者医療制度

後期高齢者医療制度についてまとめてみました。

後期高齢者医療制度とは

2008年に施行された後期高齢者だけが独立した医療制度。
適用年齢(75歳以上)になると、現在加入している国保や健保から移行となる。
保険者は都道府県ごとに設置された後期高齢者医療広域連合。

後期高齢者医療制度の仕組み

出典:厚生労働省ホームページ -  https://www.mhlw.go.jp/bunya/shakaihosho/iryouseido01/info02d-26.html

後期高齢者医療に要する費用は、50%が公費(一般税収)で、50%が社会保険料で賄われる。
公費の内訳は、国:都道府県:市町村=4:1:1。

社会保険料(5割)の内訳は、被保険者(75歳以上)の保険料が約1割、若年者の保険庁社会保険料が約4割。

後期高齢者支援金の負担に苦しむ健康保険組合

加入者が医療機関にかかった場合の7割負担分の総額より、後期高齢者支援金(75歳以上)・前期退職者給付金(70-74歳)の合計額の方が多い組合が全体の2割に達している。

(参考)健保組合の2割強で「協会けんぽ」以上の保険料率、2割弱で支出の50%以上が高齢者支援金―2019年度健保組合予算 -  https://www.medwatch.jp/?p=26071

その結果、赤字の健康保険組合が増え、解散が相次いでいる。

(参考)赤字が7割を超え、解散報道が相次ぐ健保組合 - https://seniorguide.jp/article/1118627.html

14%の被保険者が33.6%の医療費を使う

後期高齢者医療制度対象の被保険者は…
・広域連合の区域内に住所を有する75歳以上の者
・広域連合の区域内に住所を有する65歳〜74歳の者であって、政令で定める程度の障害の状態にある旨の認定を広域連合から受けた者
※生活保護受給者、海外に住む人は除く。

2019年5月の被保険者数は全国で1778万人で総人口の14%を占める。

一方、国民医療費42兆円のうち後期高齢者医療は12兆円で全体の33.6%を占める。(平成28年度)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-iryohi/16/dl/data.pdf

しかし、後期高齢者医療広域連合も赤字が。

支出が収益を超えている(いわば赤字)の広域連合は2017年度には22となりました(前年度に比べて9増加)。

(参考)75歳以上の後期高齢者医療制度、2017年度は単年度で357億円のマイナス決算―厚労省 - https://www.medwatch.jp/?p=25957

市町村から見た後期高齢者医療制度

12分の1を公費負担しているが、運営主体は都道府県単位の後期高齢者広域連合となるため、財政責任を負わない。
1市町村が後期高齢者の医療費削減に取り組んだとしても、都道府県にまとめられるので効果は薄まる。市町村に直接的なメリットはない。
財政責任を嫌がった市町村に配慮した制度となった結果、行政の給付抑制のインセンティブが働かない、自助努力が生まれにくい構造になっている。

ちなみに連合長は域内市町村の首長が就任している。

後期高齢者医療における保険者インセンティブ

評価指標に基づいて広域連合の取組を評価し、平成28年度から交付する特別調整交付金に反映する制度。
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000163331.pdf

しかし、評価指標は「○○の取り組みを行ったか」といったプロセス指標であり、アウトカム指標(医療費を○%削減など)にはなっていない。医療費削減に効果があるかわからない取り組みを行って点数を稼ぐことでお金がもらえる状態。
http://tokuteikenshin-hokensidou.jp/news/2019/008423.php

参考資料

厚生労働省 平成 28 年度 国民医療費の概況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-iryohi/16/dl/data.pdf

厚生労働省 後期高齢者医療事業状況報告
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/iryouhoken/database/seido/kouki_houkoku.html

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