トイガンと法律 その3「模擬銃器とは?」
前回、トイガン、特にモデルガンに対して2回の銃刀法の法改正があり、それが現在のトイガンの取り締まりや規制の基礎になっていることはすでに述べました。
1971年(昭和46年)の銃刀法改正で、金属製のモデルガン(ハンドガン)の外観を規制する法律が施行されました。これが前回、お話しした「模造けん銃所持禁止」に関する規制です。
今日お話しするのは第二回目のトイガンに関する銃刀法改正、1977年(昭和52年)のいわゆる52年規制についてです。
52年規制では、モデルガンの改造防止のため構造を規制するものとなりました。その主旨は新たに定義された「模擬銃器」の販売目的の所持禁止です。
はて、前回出てきたのは「模造けん銃」でしたが、今回の「模擬銃器」とはなんでしょう?
その定義については銃刀法と、それを捕捉する内閣府令にて確認ができます。
まずは銃刀法の条文です。
(販売目的の模擬銃器の所持の禁止)
第二十二条の三 何人も、販売の目的で、模擬銃器(金属で作られ、かつ、けん銃、小銃、機関銃又は猟銃に類似する形態及び撃発装置に相当する装置を有する物で、銃砲に改造することが著しく困難なものとして内閣府令で定めるもの以外のものをいう。次項において同じ。)を所持してはならない。
2 前条第一項ただし書及び第二項の規定は、模擬銃器の所持について準用する。
「模造けん銃」は規制対象はハンドガンだけでしたが、22条の3では拳銃、小銃、機関銃、猟銃となっています。小火器ほぼ全般が規制対象になったわけです。
さらに、内閣府令を見ると模擬銃器についてさらに定義しています。
(模擬銃器に該当しない物)
第百三条 法第二十二条の三第一項の銃砲に改造することが著しく困難なものとして内閣府令で定めるものは、銃身、機関部体、引き金、撃鉄、撃針(回転弾倉式けん銃の撃針に限る。)、回転弾倉、尾筒、スライド及び遊底に相当する部分が、ブリネル硬さ試験方法(日本産業規格Z二二四三)により測定した硬さがHB(10/500)九十一以下の金属で作られているもので、別表第二の上欄に掲げる区分に応じ、同表の下欄に掲げる構造等のいずれかに該当するものとする。
法律とはややこしいですね。上の条文は、模擬銃器に該当しないものを説明しています。
銃刀法の22条の2と内閣府103条、さらにこの内閣府令が「模擬銃器に該当しない構造」を具体的に説明した「別表第二」を総合して模擬銃器を定義を簡単に説明すると下記のようなものになります。
(模擬銃器)
○撃発装置(ハンマーや撃針)がついた拳銃、小銃、機関銃、猟銃に形態が似たもので、鉄砲に改造することが可能なもの。
○バレル、スライド、ボルト、フレーム、トリガー、ハンマー、シリンダー、ファイアリングピン、ストックの部品の硬さが、ブリネル硬さ測定法によるHB91以上のもの。
○バレルがスライドやフレームから取り外せる分離式のもの
○リボルバーのシリンダーの内部に隔壁(切り込み)が作られてないもの。
○バレルの基部にインサートが入ってないもの
○シリンダーの前部にインサートがないもの
ざっと、模造銃器とは上記のようなものになります。
この定義に該当するトイガンは販売目的での所持を禁止するというものです。
つまり、販売してはならない、よって製造してもならないということになります。
単純に所持禁止ではないのは、1971年の46年規制以降に販売されている「模造けん銃」ではないハンドガン型のモデルガン、小銃、機関銃、猟銃などのいわゆる長モノのモデルガンは既に所持を認められてきたところであり、これに対しては販売しない所有者は引き続き所持しても良いということです。もしも、手を加えて改造を試みようものなら、殺傷能力を持たせればそこで銃器の不法所持、武器製造法違反とより重い罪になって取り締まりを受けることになります。
つまりは、改造などしない限りは、それら(法改正以前のモデル)の所持は許されているということになります。
この所持容認はこの法律が施行される以前の製品を対象にしているのは明らかです。
なぜなら、販売目的の所持を禁止しているのですから、この法改正以降、新たな模擬銃器は存在してはならない。よって、新たに新しい模擬銃器を所有できるはずがないという法理になります。
よって、新規購入の所持はありえないということになりますから、その所持は許されていないということです。つまり、実質、法改正以降の製造販売のものは所持禁止と同等と考えられます。
さて、皆さんからよく質問を受ける、よくわからないというのが、材質についてです。
この法改正の頃はエアソフトガンもなく、モデルガンは主に金属製でしたので材質は金属を想定して「ブリネル硬さ」測定法による基準値の91以下の強度でないとされています。
なんだこの91は?
ブリネル測定法は、金属の球体を落下させて被検金属の凹んだ度合いを測量して、その金属の強度を数値化するものです。
91とされたのは、もちろん実銃のような機能改造に耐えない強度ということですが、その強度を持たない金属に限定している数値なのです。
金属製のトイガンであろうと、樹脂製のトイガンであろうと、金属部分には亜鉛合金が使用されているのはみなさんも、よくご存知でしょう。
亜鉛合金は、ブリネル硬さのHBが90を超えることはありません。よくある真鍮製のトイガンですが、これは亜鉛合金よりも強度が弱く、HBが50ないし70前後です。
アルミニウムは30から50。
ではHB91を超える材質とはなんでしょうか?
鉄は100以上400前後、ステンレスはさらに高い数値となります。
じゃあ、アルミパーツは大丈夫だね? という声が聞こえてきそうですが、純粋な自然体アルミニウムはブリネル硬さは低いものの、製品に使われるアルミ合金はブリネル硬さのHB値を100超えるものはザラにあるのです。
ですから、アルミバレル、アルミボディだから大丈夫だと考えるのは、ちょっとまったになります。
つまり、亜鉛合金や真鍮以外のモデルやパーツ(パーツは組み込んだ場合)は法に抵触する可能性があるということで注意が必要です。
特に鉄製やステンレスは測定するまでもなく、ブリネル硬さはHB91を超えるのは明らかですから危険です。
ですから、亜鉛合金か真鍮以外の材質のモデルを所有する、または主要部分のパーツを組み込むということは危険であると一般的に言われる所以なのですね。
厳密に言えば、ブリネルの硬さ91を超えるパーツ自体を販売や購入することは、違法行為ではないですが、これをトイガンに組み込むことは、法に抵触する可能性が出てくるということなのです。
常識的にパーツを購入して、パーツ単体を眺めて鑑賞目的で所持することは、考えにくい。
パーツである以上、使用目的は部品として使用することになるでしょう。
そこは危険が伴うということなのです。
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