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スカートが短いから盗撮するのか問題

報道や統計から見える盗撮の実態とネットパトロールの現場から見えるものの違い

 2023年7月にいわゆる撮影罪が施行され、それから約1年。法律の変化に伴い、メディア・社会全体の盗撮に関する意識も高まってきているように感じています。犯罪統計やメディアの報道など、私もできるだけチェックするようにしているのですが、実際にネットパトロールをしている中で発見する盗撮系アカウントの発信との差を感じることが少なくありません。
 あくまで私が活動している中で見たことを中心にした、私の観測範囲に基づいた私見ではございますが、今回はその差について書いてみようと思います。

スカートが短いから、は本当?

 盗撮事件の報道があると、「どうせ短いスカートを履いていたんだろう」といった、被害者の服装に責任があるようなコメントを見かけます。こうした言説はいわゆるレイプ神話と呼ばれるもので、被害者に対する二次加害にもなりえますし、どうにかなくなって欲しいと思っています。
 それと同時に、「盗撮被害にあう=被害者が短いスカートを履いていた」という被害者への責任転嫁ともいえるある種のステレオタイプは「被害者が傷つくからよくない」という倫理的な問題があるだけでなく、必ずしも実態を反映していないのではないかと感じています。

加害行為をしている人の本音はどこに

 SNSで盗撮行為をしているという書き込みや、盗撮画像や動画を投稿しているをアカウントをチェックしていると、そこには実際に盗撮行為をしている人の生々しい声があふれています。SNSへの書き込みは、逮捕された後に警察官からとられる調書や、裁判所で反省を示すために語られる言葉ではありません。だからこそ、そこにあるのは加害行為をする人の本心に近い思いなのではないかと私は注目してきました。

 これらは実際に発見した書き込みのスクリーンショットになります。
(既に凍結しているアカウントにはなりますが、アカウント名、アイコン画像、加害のヒントになり得そうな部分にはモザイクをかけました)

 こうした書き込みを見ると、加害者は必ずしも短いスカートを履いている女性を狙っているとは限らないことがわかります。

 また2024年6月8日に放送されたNHKスペシャルでは、加害者が集まるオフ会への潜入取材の様子が報じられました。
以下は番組をまとめた取材記事からの引用になります。

30代の主催者
「ふだんパンツとか全く見えない子のほうがよくて。全然見えないんだけど、俺だけは知ってるっていう状態。こんな恥ずかしいもの見られて大丈夫?っていう征服感みたいなのがある」
30代の会社員
「自分だけ見てやった感がでかいですよね」

 ここでのやり取りを見ても、必ずしも短いスカートを履いているから盗撮の対象になっているわけではない、ということがわかると思います。

犯罪統計と被害実態とのズレ

 警察庁の発表によると2023年の盗撮行為の摘発件数は5737件。撮影罪施行による影響もあるとは思いますが、前年より700件以上摘発件数は増えています。このうち、約8割がスマートフォンによる撮影だと言われています。
 スマートフォンはいまや誰もが持っているといっても過言ではないほど普及しましたし、カメラの性能もあがっています。特別な機材を用意しなくても撮影が可能なスマートフォンによる犯行を考えると、たしかに短いスカートをはいている相手の方が撮影は容易かもしれません
 しかし、この数字は「摘発された事件」の数で「被害者の数」とは一致するものではないのです。
 盗撮は繰り返し加害行為を行う人が多く一人の加害者が複数人に加害をおこなっている事例がとても多いですが、この「複数人の被害者」というのが数人~数十人といったものでなく、数百人数千人という単位にのぼる事例が少なくありません
 大物の盗撮犯が逮捕された際「加害者は20年以上前から盗撮行為を繰り返しており、被害者は千人以上にのぼる可能性があるとして警察は今後余罪を追及していく……」というように報じられているのを見たことがある方もいらっしゃると思います。
 しかし、このようなケースで千件単位に及ぶ加害行為が一つずつ摘発されるかというとそういうことはなく、事件として扱われるのはせいぜい数件の盗撮行為です
 そして、このような千人単位で加害をする人というのは、スマートフォンではなく、非常に見つかりづらい細工をほどこした小型カメラで犯行に及んでいます。
 盗撮というのは、被害者が被害にあったことを自覚しづらい犯罪です。事件として発覚するのは氷山の一角であり、摘発の8割がスマートフォンというのは事実ですが、被害者の8割がスマートフォンを用いた盗撮被害にあっているというわけではないのです。
 小型カメラを用いるような巧妙なやり口では、スカートの丈に関係なく被害にあう可能性があるのです。

悪いのは加害者

 盗撮加害者の中に、被害者が「短いスカートをはいていたから」狙ったという人が含まれていることは否定しません。しかし先ほど例にあげたように「長いスカートだから」狙う人も存在します。盗撮事件の報道記事に、被害者のスカート丈が何センチだったか書いてあるわけでもないのに、スカートが短かったから被害にあったのだと決めつけ責める風潮はおかしいと私は思っています。
 被害にあった人は周りに何も言われなくても自分を責めてしまうことが多いですし、被害者を責める風潮は被害の申告を躊躇させる原因になります。被害者のせいにする言葉は、その意図がなくとも加害者をエンパワメントする言葉にもなります。
 悪いのは加害者である、この当たり前のことが本当に当たり前になる日が一日も早く来て欲しいと思っています。

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