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【28】今もあの空が呼んでいる

小学校の頃、担任の先生が2/29生まれだったのをよく覚えている。
自分の誕生日は4年に一度しか来ないから、自分はまだ若者なんだと豪語していた時のことは、教室の風景まで鮮明な記憶がある。

多分だけど、当時から興味があった。
その先生から、4年に一度の閏年のあらましについて理科の授業で習ったのもよく覚えている。


太陽が黄道を一周する周期が暦と微妙にズレていることによる、微調整の1日。
神の心を知りたいと科学を追求した研究者たちが辿り着いた、世界と学問の帳尻合わせ。

これが無くなると、バランスが取れなくなる。
大して学もないし、そうなった世界を見たことが無いから、それがどういうことなのか、具体的には分からないけれど。
分からないけれど、無くてはならないもの、なのだ。


今年は生まれてから何度目かの閏年。
本日、2/29にシアターKASSAIにて「FOUR.」は開幕した。

たった4日間、たった4人で取り扱うのは、4つの物語、4つの配役。
舞台上にある4つの椅子と4つの出はけ口を限界まで駆使して繰り広げた90分は、幕が上がって見れば、稽古場のどんな景色ともまるで違ったものだった。

楽しかったと言えば軽薄な気もするし、
高尚だったと言うのも違う。
浴びた、という事実だけが確かだった。


何でもかんでも4に結びつけるのは品が無いのは承知の上で、先月僕は34歳になった。
noteでは誕生日以降、記事を更新していなかったけど、沢山のお祝い本当にありがとうございました。

誕生祝いで友達に貰った日本酒をいつ開けてやろうか悩んでいる。
日本酒は、その土地の空気をいっぱい吸い込んで、味を変えていくらしい。だから土地ごとに違った味になるんだと、仕事で出会った蔵元さんが教えて下さった。

素敵な話だと思ったのを覚えている。
日本酒に関する知識はないけれど、僕はそういう科学とロマンの間にあるような話が好みなんだと思う。


本作で演じている物語と、その物語に存在する粒子。
紐解こうと思って紐解けるものではないけれど、舞台で演じて、皆さんに届けて、自分のなかでの答えは見つかったようにも思えた。

筋書きを追うことでもなく、
言葉を連ねることでもなく、
あの手狭な空間のなかで共に神経を張り巡らせ、
共に松本さんの描く物語を浴びた。
出演者も観客も垣根なく、
「FOUR.」という作品を構成する粒子なのかもしれない。

自我を持って走り出す物語の粒子が存在するかは分からないし、
日本酒がその土地の空気をいっぱい吸い込んで変質していくのかは分からないし、

それでもそれらにわくわくして、夢を見て、今日を生きる力になったりもする。

分からないけど、無くてはならないもの、なんだろうと思う。
たとえそれが、チープな帳尻合わせだとしても。


辿り着く結論がこんなに粗末なものなら、本来はいちいち考える必要もないことなんだろう。
理論派ぶるのはやめて、明日からの本番に備えたいと思う。

楽しい日々です。

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