うらくろ通りに打ち水をした軒先があった。
「どうぞ、いらっしゃい」と開いた店内から声がした。店主の堤泰二さん(64歳)が週に一度だけオープンする、『気まぐれカフェ』。
二間続きの座敷、奥に趣のある中庭。土間には看板犬のロクがかつてない暑さにうなだれていた。店内は何処もが古さと懐かしさがぎゅっと詰まった佇まいだ。
昔は蝋燭屋、その後祖父の代に新聞屋へ変わった。『近江毎夕新聞』という地元密着の新聞を発行していたが後に廃業し、商業施設の煽りを受け商店街の客足も遠退いた。
寂しくなる通りを活気付けたい思いで、奥様の伸江