水車 第三章 エピローグ
森の麓に水車車が来ていた。見張りに立つ森人はその車に見覚えがあった。以前見た時にはピカピカに磨き上げられていた車体は薄汚れアチコチがベコンベコンに凹み部品のもげたらしい破断面もある。森人は隠蔽から姿を現し手招きをした。今森の客人となっているクウグンの長の車だからだ。
参謀長が出迎えた。
「長官ご無事で」
「司令君はどこ?」
まだ戻ってきてはないが、森人と組んだ陸戦隊の救出班が確保に成功して連行してくる所だと伝える。
「連行?」
「はい、勝手に単機で飛び出して、飛竜と空戦したそうです。なので暫く営倉に入って貰います」
「相変わらず血の気が多いね」
後部座席から小柄な女性がそっと降りる。
「シャオさん!」
「どもども」
手刀を切ってその場を離れようとするシャオ。その襟首がむんずと掴まれた。
「やっと捕まえたぜ、溜まってる図面何とかして貰うぞ」「工厰長は理不尽」
ズルズルと引き摺られていくシャオ。
司令がやっとの事で帰還すると、広場で長官と犬が取ってこい遊びをしていた。声を掛けようとするが何故か喉が詰まる。そこへ少女が走り込んできて背に当たる。噎せた。振り返るとシャオだった。
工厰長が逃げ出したシャオを見付けたのは広場で、シャオは大声で泣く司令に抱き付かれて途方にくれた顔をしていた。
完