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ビッグモーター問題と内部統制

 昨日の記者会見の模様が、今朝の朝刊各紙で大きく報道されている。日経7月26日朝刊によれば、兼重宏行社長は不正への組織的な関与を会見で否定しつつ、経営陣が現場でまん延していた不正の実態を把握していなかったことを明かし、「内部統制の不備」と分析する。

 このレベルの問題でもないように思うし、今後さらにいろんな問題が明らかにされると思うが、差し当たり現時点では、日経の分析に従い、内部統制の問題を改めて考えるきっかけとして捉えることムダではないように思う。

 内部統制については、会社法上の大会社では、「取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務並びに当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備」を、取締役会において決定することが義務づけられる(会社法362条5項)。
 これに基づき、コンプライアンス態勢の整備を構築することが求められることになるが、とくに、本件のような不祥事対応としてどこまでのことが要求されるかは、難しい問題である。。
 判例は、これについて、①通常想定される不正行為を防止し得る程度の管理体制を整えていたこと、②不正行為が通常想定しがたい方法によるものであり、その発生を予見すべき特別な事情も見当たらないこと、③監査法人も財務諸表につき適正であるとの意見を表明していたこと等をもって、不正行為を防止するためのリスク管理体制を構築すべき義務に違反した過失があるとはいえない、とするものがある(最判平21.7.9判時2055号147頁)。
 前述のビーグモーター社長の会見での発言を、これに照らして考えてみれば、どうひいき目に見ても、①②は問題にせざるを得ず、その状況で、「経営陣が現場でまん延していた不正の実態を把握していなかった」という発言自体、自らの取締役としての義務違反を認めることになるのではないかと思われる。