見出し画像

相場操縦行為等の禁止の実効性確保のための行為規制の違反

 2024年1月12日、SBI証券において、相場操縦行為等の禁止の実効性確保のための行為規制である金融商品取引法第38条9号に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令117条第1項20号に違反したとして、金融庁は証券取引等監視委員会よる行政処分を求める勧告を行った旨のニュースが翌日13日の朝刊各紙に大きく報道された。
 規制の対象になった行為は、「実勢を反映しない作為的なものとなることを知りながら、当該上場金融商品に係る買付けの受託等をする行為」である。
 本件では、当社が新規上場にあたり引受主幹事会社を務めた3銘柄について、初値を公募価格以上に変動させ、もしくはくぎ付けし、固定し、もしくは安定させるために、上場日当日の寄付前までに出て来ると予想される売付注文数に見合う買付注文数を目標として設定するなどした上で、顧客に公募価格と同価格の指値で当該株式の買付けを行うことを勧誘し、顧客から、当該株式の相場を変動等させることにより実勢を反映しない作為的なものとなることを知りながら、各銘柄の上場日当日の寄付前までに公募価格を指値とした買付注文を受託・執行したことがこれに該当するとされた。

 あくまで、本件で問題になったのは行為規制の違反であるが、相場操縦は金融商品取引法(金商法)159条において刑罰をもって禁止されており、本件行為は同条2項1号の「現実取引による相場操縦の禁止」に該当すれば、刑罰法規が適用されることにも留意が必要である。
 金商法159条2項1号では、①有価証券の売買等のうちいずれかの取引を誘引する目的をもって、②一連の有価証券売買等またはその申込み、委託等もしくは受託等をすることが対象になり、有価証券の相場を変動させる一連の売買取引がすべて違法とされるものではない。
 判例は、「人為的な操作を加えて相場を変動させるにもかかわらず、投資者にその相場が自然の需給関係により形成されるものであると誤認させて有価証券市場における有価証券の売買取引に誘い込む目的をもってする、相場を変動させる可能性のある売買取引等を禁止するものである」(最決平成6.7.20協同飼料事件)とする。
 誘因目的の要件を立証するのは困難であるが、本件は、この点さえ明らかにされれば刑事罰が適用される問題であることに留意が必要である。