金融商品販売の裏表
23年6月、いわゆる「仕組債」の勧誘販売を巡って、証券取引等監視委員会による千葉銀行、ちばぎん証券、武蔵野銀行に対する行政処分の勧告が出されたとする報道がなされた。本欄でも、簡単にコメントさせていただいた。
勧誘販売にあたっての、説明義務違反、適合性原則違反を問題にするものである。
少なくとも地銀業界をリードする立場にある金融機関が、顧客対応の基本ルールを遵守することができなかったのはなぜか、疑問を感じざるを得ない。
その答えは、8月31日付けニュースリリース「改善・再発防止に向けた取組み」から、当銀行の考え方を読み取れそうである。
関東財務局による行政処分に関する改善・再発防止に向けた取組み 及び関与者の処分等についてhttps://www.chibabank.co.jp/data_service/file/news20230831_02_001.pdf
「改善・再発防止に向けた取組み」では、根本的な原因分析に基づき、再発防止策を含む業務改善計画を策定しようとするものである。
項目は多岐にわたるが、業務運営態勢の問題が重要である。
これについては、「紹介型仲介に関しては、千葉銀行がちばぎん証券に紹介したお客さまがちばぎん証券において成約することにより発生した手数料について、その手数料の2割が千葉銀行の収益としてちばぎん証券から還元される仕組み」のもとで、「千葉銀行の営業担当者にとっては、投資信託(以下「投信」)や保険と比べて煩雑な事務がなく、収益還元率の高い仕組債が、業務量対比で評価がなされる体系」であったことを根本的な原因と分析する。そして、これを受けた再発防止策を含む業務改善に向けた取組みは、「2022年7月、銀証連携検討委員会を新設し、ちばぎん証券の収益目標を凍結」、「千葉銀行によるちばぎん証券へのお客さまの紹介を原則停止し、2022年8月には仕組債の新規販売を全面停止」をあげる。そして、23年10月から、「千葉銀行における個人部門に対する収益目標を廃止し、お客さまの最善の利益の追求(FD:Fiduciary Duty)とお客さまへのコンタクト(活動量等)による評価体系に見直す予定」とする。
以上によれば、金融商品販売において、何よりも収益を優先して、勧誘・販売のルールはこれを阻害しない限りで遵守されるに過ぎないものであったことが見て取れる。つまり、収益を上げるためであれば、ルール遵守による顧客の利益が阻害されても目を瞑るといった営業手法がとられたものと推測され、このような機会でもないと改められなかったのは残念というほかない。