乙女ゲームの好きなヤンデレの話

百花百狼っていう乙女ゲームの黒雪くんがとてもいいヤンデレだった。
(ネタバレしかないので注意願います。)

~簡単な経緯~
なんかゲーム買おうとストアを漁っていたところ、ニンジャの乙女ゲームを発見。わたし、ニンジャが大好き。ネタバレなしレビューを読むと、そこには「ルートによってほぼ全員死ぬ」の文字が。重めのシナリオが好きなので購入を決意。
~簡単な経緯おわり~

黒雪くんがよかったのは何より「パンケーキ食べたい!って言ったらパンケーキ出てきた」みたいなところ。バターとシロップだけで、生クリームとか果物とかで凝ってないのが出てきたところ。

ヤンデレとしてオーソドックスな表現が多かった、という言い方をすると少し誤解されそうですが、やりやすい設定を使いながらも雑さはなく、感情の機微を丁寧に描き、圧倒的なハッピーエンド力で綺麗にまとめていました。
好きです。終わった瞬間拍手しました。スタンディングオベーションでした。

簡単なあらすじから。
舞台は戦国時代、ニンジャの里。ヒロインと黒雪くんは乳兄弟、要するに生まれたときから一緒の仲です。しかし、ニンジャとしての都合で黒雪くんは他里へ行ってしまいます。本編においての黒雪くん初登場は、8年越しの再会シーンでもあるという過去への余白ギミック。
黒雪くんを含め、同じ里のニンジャ仲間数人で任務に当たっていたところ、ヒロインが天下人殺しの罪を着せられてしまいます。投獄され、死罪という絶望に苛まれるヒロイン。そんな彼女を助けに来た黒雪くんと二人、命がけで逃亡する…というシナリオです。

このゲームのルート分岐はざっくり言って「誰と一緒に逃げるか」ですね。攻略対象が追手になるパターンもあります。でも根本は「世界を敵に回しても貴方を…!」というロマンチック概念。

物語は、天下人殺しの真相、離れ離れになっている間の黒雪くん、それがカギとなる形で進んでいきます。
でも結論から言うと、天下人殺しの犯人は黒雪くんなんですね。唯一の味方だと思っている相手が真犯人っていいですよね。しかも、その命令を下したのはヒロインの父でもあるニンジャの里長という絶望の二乗。
天下人殺しの手段はだいぶファンタジー要素強めで、なんかすごくヤバい瞳術です。この瞳術がとっても厨二で好き。いいぞいいぞ。ニンジャってそういうものだと思う。

真相を全部知っているくせに、黒雪くんは白々しく「お前の味方は俺だけ」「みんなお前を殺そうとしてる」「俺以外信用しちゃだめ」とひたすらじわじわ囲ってきます。洗脳独占排他系です。
そしてかなり早い段階でヒロインに好きだと告げ、ヒロインは困惑しつつも、過酷な状況下で唯一の頼りである彼に惹かれていく、という。

追手によりヒロインが負傷したり、道中で出会った一般人とひと悶着あったり、ヒロインが「こんなことがありましたよね」と昔話をしたりする度、黒雪くんの様子がおかしい描写が入ります。
彼の名前、ビジュアルやCV的に、最初から「ヤンデレ系統ぽいな?」とは予想できるんですが、情緒不安定な様子を見せることで、だんだん確信を得る感じです。

ヒロインから黒雪くんへの信頼が確固たるものになり、共依存の道へ差し掛かったあたりで、ストーリーが起承転結の転に大きく差し掛かります。

黒雪くんとはぐれてしまったタイミングで、かつて任務を共にした里の仲間たちと再会します。ヒロインは黒雪くんから「みんなお前を殺すために追ってくるはず」と吹き込まれているので必死に逃亡。
しかし、隠れている最中に聞こえてきた仲間たちの会話が黒雪くんから聞かされていた話と全く食い違っていた上、仲間たちが自分を殺すのではなく助けに来たことを知ります。
黒雪くんに疑念を抱いたヒロイン。真実を知るため、仲間の一人に声をかけようとしたその瞬間。
黒雪くんに見つかってしまいます。

待 っ て た
期 待 ど お り
オ タ ク の 歓 声 

ヤンデレの見せ場である「病んでるデレの病み」が一気に放出される、所謂本性発覚シーンです。緊迫した空気の臨場感、それまでのシナリオで積み上げてきたものが崩れる展開のスピード感が最高。
何より、知られてしまったことを悟った黒雪くんの声色が変わる瞬間の演技がメチャメチャ良くて、セーブロードを繰り返しそこだけ無限ループって感じでした。何回も聴いたし何回だって聴ける。

そう、こういうのでいいんだよ。
簡単にやってしまうと陳腐な表現ですが、ここに至るまでの感情ミルフィーユが効きます。ちゃんと時間を割いてから至れば、言葉や表情の端々に混ぜた違和感がきれいに爆発します。カモンベイビー本性!
ワントーン下がった声色はすぐにまた常時の優しく甘い状態に戻るので、一層怖かったです。
そういうのでいいんだよぉ!いいのこれでいいの!美味しい!!ぼくこういうの食べたかったんです!!

そのあとなんやかんやあり、ヒロインは仲間たちにより保護。黒雪くんは「絶対に攫いに行くから」と叫びながら逃げ、いったん離れ離れになります。
この期間、黒雪くんに惹かれている旨を仲間たちに話す流れがあるんですが、「それは恋じゃなくただの依存だ」と怒られるんです。そうなるように仕組まれたからそうなっているだけだと。
いやほんとにそれ…よく言ってくれたCV早見沙織(このゲームフルボイスだし声優がやたら豪華)…そうなんですよね…
でもその問いにもちゃんと答えは出る…!シナリオ内で…!ちゃんと結論を出す…!好き…!

ヒロインは自分の気持ちと向き合い考えます。そんな中、宣言どおり攫いにきた黒雪くんに自らついていき、きちんとお話をします。ここで大体の真相解明がありますが、同時に、ヤンデレにおいて重要である
・なぜその相手でなくてはならないのか
・病むほど好きになった過程と心情
・最終的にどうなりたい/したいのか
も発覚します。
詳しいエピソードは割愛しますが、ざっくり言うと、ヒロインのこと以外全部過去の記憶が飛んでしまっている感じです。黒雪くんの世界にはもうヒロインしかいない。
重い過去話なので「病んでも仕方ないね」と思うのは確かです。

そしてシナリオはクライマックスに差し掛かります。
ヒロインには幸せになってもらいたい、自分では駄目だと身を引く決意をする黒雪くんは、ヒロインを置いてひとり、全ての黒幕であるニンジャの里長(ヒロインの父)を倒しに行きます。
ここから熱い。やたら少年漫画っぽくなるんですよ。乙女ゲームなのに。

死ぬつもりの黒雪くんを救うため走るヒロイン。心情的にも物理的にも追われていた彼女は追う側に逆転し、戦いの最中へ飛び込み黒幕と対話、仲間の救援。
それでも命を賭そうとする黒雪くんにヒロインは叫びます。
「私は貴方と一緒にいきたい」「――私を攫ってください!」と。

相手から受けた言葉を、ここぞというときに投げ返すその熱さといったら!
そういうので!!いいんだよ!!!
それでいいよお~~~~!!(爆発)

戦線を離脱し、二人は話します。これは恋なのか?依存なのか?
黒雪くんとヒロインには「互いしかいない状況下で惹かれた」という共通点があります。
シナリオのテーマの一つであり、ヤンデレが抱える命題でもあると思うのですが、「この感情が恋じゃないならそれでもいい。互いに同じ感情なのだから、これは“両想い”だ。」っていう、ていう…ていう………

ヴァーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!
わたし!!!!その結論!!好きです!!!!!!!

いいぞ!いいぞ!!そういう感じで!そういうのが!!好きです!!
好き~~~~~~~~!!!!!(限界)(号泣)(拍手)


私はまさかと思うほどの王道を飾らず全力でやりきる物語を心から愛しているのですが、黒雪くんはそれ系でした。ヤンデレといったらこんな感じだよね、この表現だよね、をドストレートにやり切っただけでも好感度爆発なのに、ヒロインと黒雪くん二人の圧倒的なハッピーエンドぢからが好きすぎて、EDテーマ聴きがら「よ゛か゛っ゛た゛ね゛~~~;;;;;;(号泣)」ってずっと言ってました。こういうのでいいんですよぉ!!

乙女ゲームはそもそも人を選びますし、ぜひやってみてください!とは言わないんですけど、ヤンデレは最高であるという事実だけ覚えて帰ってください。ここまで読んでくださってありがとうございました!