「オリエンテーリング競技者における、ナビゲーションミスに関する研究」という私の卒論をガバガバに紹介する

こんにちは。
楽しいことしかしたくない、どうも、なっちです。

1.オリエンテーリングに関する卒論を書くに至った経緯

私は筑波大学野外運動研究室という、野外教育を学ぶには日本一であろう研究室におりました。

夏には南会津の山奥のA藪を切り開いて一週間野宿をさせられたり、冬には菅平・根子岳にスキー板を担いで登り、山頂から滑り降りてくることが出来ないと卒業させてもらえません。

また、私が属しておりました筑波大学体育専門学群にはそれぞれの人間に「専門種目」というものが存在します。飲み会でも、話したことがあまりない相手への最初の一言は「専門種目何?」
かっこいい男の子がいたら遠くから「たぶんあの子の専門種目、蹴球だよ」など、多くの場面でその人間の代名詞のように使われます。

私の専門種目は、もちろんオリエンテーリング。そしてもちろんそんな人間は私だけ。
そんな私が野外運動研究室に入り、さあ卒論、となればそれはオリエンテーリングを描くのが筋。しかしあまのじゃくな山岸は最初は頑なにフォトロゲイニングについて書こうとしておりました。しかし色々な大人の事情により、結局私はオリエンテーリングについての論文を執筆することになりました。とさ。


2.序章

いつも私ばかりミスをして、なんであいつはミスをしないの!?
いつになったら私はこのポンコツミスをしなくなるの~!?
とか、おもったことないですか?

アナリシス書いて反省しないから!練習しないから!とかいうド正論なんてノンノン。(私は一度もアナリシスを書いたことはない)私は統計上の話をしてるのよ!って人向けに、ってわけじゃないけど、データを集めてみました。面白いよね、きっと。くらいでですけど。

統計データでもいいから、どんな人がどんな分野が得意で…とかわかったら、なんかうれしいですよね。きっとうれしいはず。


3.結果までの過程

・ミスを分類する
まず、世の中の人が一体どんなミスをしているのか、そのデータを集める必要があります。
データ集めの第一次調査では、男性37名女性14名のいろんなクラブ、いろんな競技レベルの方に協力いただき、ミスを挙げていただきました。

・簡単な道走りで走りすぎる
・類似特徴物を勘違いした
などなど、約100種類のミスをあつめることができました。ありがとう!

この100種類のミスを、まあ複雑な分析をかけまして、
最終的に、「距離感の把握」「イメージ」「自信」「現在地の把握」「方向感覚」「プラン」の6因子、30項目(各因子最大7項目最小4項目)に削減、分類しました。

最終調査用紙はこんな感じ。

無題

これを、
調査対象者のパーソナルデータの、(1)年齢(2)性別(3)経験年数(4)競技開始年齢(5)1か月に行うオリエンテーリング回数(6)競技レベル(7)3000m自己最高記録(8)得意種目によって、どう異なるのか分析しました。方法はSPSSによる一元配置分散分析と多重検定で有意差を出しました。たいへんだった~


4.結果

まず、年齢での比較です。

画像2

こんな感じになりました。と言ってもよくわからんですね。

右にお花がいっぱいついている項目が、差が大きいよ!って項目です。
Mの列の数字が大きいほうが、ミスをしちゃうよってことです。つまり、年齢差による比較では、距離感の把握、現在地の把握、方向感覚に一番差があるということですね。対して自信は変わらない!WOW!


お次にね、性差ですね。あらまあ、対象者数が違いすぎるじゃないの!
まあオリエンティアだからしょうがないね!

画像3

こっちだと自信が違うのね~
この結果だと、女の方が自信がない、ということになります。

でもその他のナビゲーション能力において有意差見られないので、「話を聞かない男、地図が読めない女」説はとりあえずは論破ですね。女でも地図読めるから!(オリエンティアになる女子がそもそも特殊説はあります)

とりあえず自信もって!女子!


次に興味深い結果になったのは、こちら。競技開始時期

画像4

「イメージ」の項目の有意差がすごいんですよ。
しかも、中学高校から始めたいわゆる「経験者」の方々のイメージ能力がすごい。(高い)
ちなみに、中高生にも調査をとったので、経験者の実力ある勢のみにかたよったデータではありません。(たぶん)
小さいころから地図に親しむと地形把握能力というか、3Dで想起する力が身につくのかなあ、やっぱりオリエンテーリングっていい教育?おしえて!すごいひと!

お次はメインテーマ、競技力比較になります。
いやいやいや、なんでプランの因子有意差でないの!?
初心者、プランできるの!?すごない!?ってなりました。

これは、
1.自分が出来る簡単なプランしか組まないから
2.初心者でもプランは組めるが、実行が出来ない(故に初心者)
3.誰しも皆、自分はプランを組めると思っている

のどれかかなあ、うーん。ってなりました。
ちなみに、
「競技力の違いにおけるオリエンテーリング選手の心理的特徴に関しては、橘ら(1989)や一木(1979)は、競技中の不安に違いがあることを指摘し、競技力が高いほど心理状態は安定し、積極的なものになると報告している。本研究においても、「自信」の因子で有意差が認められたことは、これらの研究知見を支持する結果となった。」
と書いたように、必要以上の不安は積極性の無いレースの元になるから、自信もって!みんな!

画像5

このデータだけは、わかりやすいように競技力ごとの回答のグラフが見つかったので置いておきます。なんで折れ線グラフなのかは私にもわからない。(頑張って拡大してみてね)(下の番号が上に貼った調査票の質問番号とりんくしてるよ)

ミス画像

これを見ると、具体的な項目では

Q6.集中力が切れてミスをする は競技力関係なく全競技力の対象者が「よくする」けども

Q12.地図上に表記されていない薄い藪に惑わされる は、初心者はするけど上級者になるにつれてしなくなることが分かります。藪だけじゃなくて地形も読んで!

…解説に疲れてきたのでだんだん雑になりますが、3000mのタイム比較、得意種目のタイム比較もおいておきます。

・3000mタイム比較

画像6

ちなみに、これの対象群は「調査対象者のタイムを上位から順に男女別で3分類し、男女それぞれの上位群、中位群、下位群が均等の割合になるように合わせた。この際の「上位」の男子の平均タイムは598.65秒(9分58秒65)、女子の平均タイムは717.29秒(11分57秒29)、「中位」の男子の平均タイムは681.45秒(11分21秒45)、女子の平均タイムは896.95秒(14分56秒95)、「下位」の男子の平均タイムは867.12秒(14分27秒12)、女子の平均タイムは1212秒(20分12秒)であった。」って感じです。

男性陣の平均タイム速すぎん?盛ったやろ!

・得意種目

画像7

スプリンター、ナビゲーションがんばれ!!


まあ夜も遅いのでまとめると、現在地の把握、距離感の把握といった地形把握能力が上級者と初級者を分けるカギなので、そこに特化して練習を進めれば上達の近道なんじゃないですかね(ハナホジ)(あたりまえ体操)

まぁでも早くから始めるといいし、10代から20代に移るときに能力がガッと上がるし、みんなはオリエンテーリングいっぱいして、考えて、うまくなろう!未来は無限大!

卒業論文本体では75ページ45000文字にてくそくそくそ真面目にオリエンテーリングについて分析しているので、もしほしい人がいたら会場でAir Dropで無料プレゼントいたします。けど、内容おかしくてもボコボコに言わないでね。

いい感じの考察が出来た人いたらおしえてください~

オリエンテーリングを卒論で扱うと、自分の出来ていないことがたくさん見えてきたり、オリエンテーリングが上手いってなんだ…と哲学モードに入ったり、まだお前のこと、わかんねぇよ、もっと教えてくれよ。それまで俺、追いかけ続けるから… っていうお話でした。なかなか辞められないね。

みなさん、よきオリエンテーリングライフを!


■最期に

初期調査でナビゲーションミスの例を集めていた際に、すべて川柳で答えてくれたT柳Tもろうくんの回答を抜粋して紹介します。(本人了承済み)

・直進が うねりうねるよ 藪の中

・「とりあえず いけばあるやろ!」ありません

・隣ポかな?わかっていても引力が

・逆正置 目指すポストは 真後ろに

・かけぬけろ 分岐見逃し まっすぐに

・地図折れば 勝てるルートも 裏側へ

・ラフ直進 ラフも過ぎれば 地図の果て

座布団100枚!

では!


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