キャッシュポイントを明確化する
大学生の頃、イノベーションに関する講義を受けていたことがあります。
そこでは、様々なモデルケースからどのようにして製品・サービスを革新させて売っていくのかということをテーマにレポートやディスカッションをしていました。
その講義の中で今でも記憶に残っているのが、ネスレのバリスタのケースでした。
ネスレでは本格的なコーヒーを楽しんでもらうべく、コーヒーマシンであるバリスタ用のコーヒーメーカーを破格の値段で提供し、結果的に売上を伸ばしました。
なぜコーヒーメーカーを破格の値段で提供できていたかというと、通常のコーヒーメーカー製造会社はコーヒーメーカーそのものを売上の対象にしていたのに対し、ネスレはコーヒーメーカーを使ってネスレのコーヒーを飲んでもらうというサービスを売上の対象としていたからというのが強い要因です。
実はこうしたビジネスモデルはネスレに始まったことではなく、例えばゲームのハードも本来であれば数十万で回収できるレベルであるにもかかわらず、数万で提供し、ソフトウェアで儲けるというモデルが当たり前になっていますし、
プリンタもプリンタそのものを安価にして、インクやトナーなどで収益をあげているのが慣習的になっています。
私はこのようなケースをキャッシュポイントの明確化とよく呼んでいます。
つまり、商品の検討、購買、使用、修理/交換/保守といった一連の使用サイクルやハード/ソフト/サードパーティ等の商品の関係性の中でどこでお金をとっていくのかが今重要になってきているのではないかと思います。
特に、近年ではデジタル化が進み、デジタルで解決できること(プログラミング、音声、画像データのアップロード等)ではほとんどお金を稼げなくなってきている時代に差し掛かっています。
実際に音楽業界でもCD、物販、ライブ等、様々なキャッシュポイントがありましたが、今ではCDも売れなくなり、どこでお金を稼ぐのかという問に苦労している会社も少なくないのではないかと感じます。もちろん先行者利益とか、人気があればそこまで考えなくてすむかもしれませんが。
自身もベンチャー企業で働いている以上、どこでお金をとっていくのかということをすごく悩まされます。どれだけいい商品であったとしても、新しいモノ/サービスを導入するにあたって、お金は意思決定における一番の壁であり、色んなポイントで少しずつとっていくのがいいのか、一気に1点集中というモデルにしていくのか日々喧々諤々しています。
とはいえ、エンジニアの身分である以上、まずはいいモノ/サービスを作っていくことが何より大切なのかなと思い始めたところで終わります。
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