妖旅館_Ss 銀の二人
「ふむ、明日の受付担当は銀の嬢と一緒か……」
寝る前に明日の持ち場で一緒になる妖の名前を確認しながらボソリと蓮華は呟いた。
銀の嬢とは自分と同じ髪色を持ち、自分と正反対の焼けた様な肌の色をした蝙蝠の妖の名前だ。
普段は大人しいものの声をかければ気が合う為蓮華のお気に入りである。
まぁ、大人しいのもあるが嬢は一緒に過ごしていて我を楽しませてくれるからのぅ…
明日の勤務が楽しみじゃの…
クツクツと、喉を鳴らして蓮華は床についた。
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「おはよう、銀の嬢。今日はよろしく頼むぞ?」
「あ、蓮華さん…よろしくお願いします。」
翌朝、受付の椅子に腰掛ける銀の嬢と挨拶を交わす。
銀の嬢の隣に腰掛けると着物の裾に忍ばせておいたお菓子の数々を放り出す。
「銀の嬢も甘い物が好きだったら食べてよいぞ?
客をもてなすと言うのも悪くはないが甘い物なしには出来ぬからの。」
そういう間にも一つ、袋の封を切り1口大の饅頭を口に放り込む。
餡子独特の甘さが口の中に染み渡り思わず尻尾をパタパタさせてしまう。
「そういえば、銀の嬢が好きそうな和菓子に因んだ言葉をこの間教えてもろうたぞ。」
パタパタさせていた尾を止め、ふと思い出す。
なんと言っておったかのぅ…この間旅館に泊まりに来た顔馴染みの奴に教えてもろうたのじゃが……、なんであったかのう…
「思い出したぞ、確か"妖怪に、何か用かい"とな。
銀の嬢はこの様な言葉遊びが好きであろう?」
またもや尻尾をパタパタさせながらふんす、と言う擬音が似合いそうな自信満々な表情で銀の嬢に話しかける。
「ようかいに…なにかようかい……、ふふっ。いいですね…」
「気に入ったか!よかったよかった、一度聞いた時にこれはきっと銀の嬢が気にいると思ったのじゃよ。」
微かに口角を上げ、笑っている銀の嬢をみてニッコリしながら蓮華は煙管をふかす。
普段は静かにしておるがこういう所が銀の嬢は可愛いのう、喜んでもらえてなによりじゃ。
さて、今日も程々に働くとするかのぅ。
夜も更け、陽がのぼり始める気配に背伸びしながら受付に向かってくる客の姿を細めに見た。
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