幻覚
きみが描く地獄に浸る喜びのここからは遠すぎる熱帯夜
もう素面じゃいられないんだ箱庭にいつかは消える薔薇投げ入れて
御母堂にぞっこん エピソードトークに出てくる限り面白いから
将来はすぐにくるから 明かされるライナーノーツというでかい愛
見透かしたことを洩らせば罰当たり きみの、永遠の、ワンルーム
幻覚にむせても話し続けるしか夜勤を終えたきみにはないから
眩しさに踊れるうちは知り得ないきみの素顔に言葉を尽くす
鏡面を覗きこむとききみだけの銀河に共犯者はいらなくて
チケットを握って冬を明かすのはエゴ 信頼という甘い枷
美しい固執を見せてトランスの間潜んでいる赤い舌
天性のものじゃないから羨んだ きみが縫い合わせた薄い皮膚
きらめきの切り抜きに漏れた毎日を退屈だったことにしないで
造形を褒めるのに疚しさの影、けれど誇ってくれるのならば
声域は聖域 きみが操れる限りの熱に誰も黙って
沈む日のための救いだ 美しいばかりではない声帯模写は
一生が冗談めいていているうちは愛すよきみの一人遊びを
正装の中に火種を抱いているきみの変わっていく笑い方
肉声に宿る光があるとして愛を常套句で言うなんて
望んだように生まれたかった肉体に名付けは運命めいて光るよ
天啓を受けたときから始まったシナリオを溢れるほどの薔薇
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