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NICO Touches the Wallsと私


私には大好きなバンドがあった。

その名は NICO Touches the Walls。


このバンド名、どこが大文字か小文字かわかりづらいし、まあ ぶっちゃけ 長過ぎる。


「今日初めて俺らを見る人たちも、俺たちの名前だけでも覚えて帰ってください」というのが多数のバンドが出演するフェスの常套句だと思うけど、このバンド名の長さはそもそも初見の人に覚えてもらう気があるのかすら正直わからない。

それに、しばしばボーカルが「ニコタッチ と略されるのが嫌だ」と言っているのを聞いた。
「ニコ」と略して欲しいらしい。

ここまででもすでにおわかりのとおり、
“一見さんお断り” みたいなものがこのバンド名からして凄く滲み出ている。

私が人生で初めて好きになったバンドはなかなかの面倒臭いバンドだった。





数年前、ドン底オブドン底にまで落ちている時に、私はこのバンドと出会った。


その時すでに発売から1〜2年過ぎていたと思うが、彼らの代表曲とも言っていい「手をたたけ」を聴いたのが始まりだった。

彼らの曲を聴き進めてもらえばわかると思うが、この曲のキャッチーさは、彼らの曲の中では異質だと思う。
耳馴染みもいいし、一緒に歌いたくなる。

だけど、私が引っかかったのはそこじゃない。

手をたたけ 手をたたけ
願う日は来ないけど
愛を歌え 君を歌え
この空が晴れるまで


まあ とりあえずツッコんだよね、「願う日 来んのか〜〜い」つって。

こんなにキャッチーなのに。こんなに底抜けに明るい曲調なのに。

私は何でこんなに悲しいと思うんだろう。

このアンバランスさの謎が知りたくて。
気付けば、自分も驚く程のスピードで彼らの他の曲を聴き始めた。


聴けば聴く程、彼らの音楽は面白かった。
「手をたたけ」から彼らを知った人なら、「夏の大三角形」や「ホログラム」から彼らを知った人なら共感してもらえるかもしれないが、
それらの曲は彼らの音楽のほんの一面でしかなかった。

だって初期曲で「そのTAXI.160km/h」だよ??
「GUERNICA」って曲なんか9:46もあるよ??
色んなアーティストのどんなカバーでもアレンジが全部NICO色だよ??(ドリカムの決戦は金曜日、チャットモンチーのハナノユメのカバーが特に好きだけど、他のもマジで最高)
ACO Touches the Wallsのアコースティックアレンジなんか訳わかんないくらい演奏力の高さ 凄いよ??(取り急ぎHowdy!!のアルバムは聴いた方がいい)


曲を聴けば聴く程、知れば知る程、
(何これ……何かわかんないけど、音楽の専門的なことなんて私には全然わかんないんだけど、むちゃくちゃ捻くれていて むちゃくちゃ かっこよ……………)とすぐに引き摺り込まれていった。

この機会なので、NICOの好きな曲を貼る。
NICOファンからしたら、ド定番過ぎて、面白みがないはずだけども。


私の人生初めてのライブデビューはNICOだ。

その時、私はすでに20代半ば。
怖かった。アーティストのライブには人生で一度は行ってみたいと思っていたけど、何か、怖かった。
だけど、最終的に 行ってみたい が勝った。

絶対に生で、目の前で、NICOの音楽を聴いてみたくて。
ライブというものが生まれて初めてにも拘らず、1人で参戦した。


目の前で初めてNICOの音楽を体感したあの日のことを、今でも覚えている。

感動した という言葉では全く足りなかった。
音がダイレクトに突き刺さってきた。
ボーカルの声で、ギターの歪みで、ベースの圧で、ドラムの躍動感で、足元がずっと揺れていた。
興奮の匂いがしていた。
周りを見てもみんながみんな目の前の音楽に没頭していた。

まさに 今、この瞬間に目の前で鳴っている音が、今、私に届く。

あぁ、凄い。ライブって凄い。


初めてライブというものを体験したあの感動は、多分忘れられない。

NICOは私に初めて音楽を聴いて震える気持ちを教えてくれた。


だけど、ずっと感じていた。
言葉にしづらいけど、表現が合っているのかわからないけど、
「何か、この人たち、生きづらそうだな」
ってこと。

ボーカルのみっちゃんには 特に。
こんなに魂を削りながら、時にとても苦しそうに叫びながら、複雑な感情を複雑なままに歌う人を初めて見たから。

でも、当時ドン底にいた私は、その“柵の中でもがいてる感”に無意識に惹かれたんだと思う。


だから、2019年11月15日に突然バンドの活動休止のお知らせを目にした時、強い衝撃とともに、何か、こう、妙な納得感も感じてしまった。

こんな事を言うと、昔からのファンの方々に怒られるかもしれないけど、4人を見ていると ギリギリの形を保っているバンドだなと思ってしまっていたから。


ライブの楽しさを教えてもらったあの初参戦から、その後も何度かNICOのライブに参戦していたけど、終わりはあっけなく訪れた。


メンバーがどんな気持ちなのか想像もできなかったけど、
寂しさを語れる程、私は詳しいファンじゃなかったけど、
それでも もうNICO Touches the Wallsの新曲は聴けないのか…と思うと、わかりやすく心に穴が空いた。



あの虚無感から2年ちょい。
数日前、ボーカルみっちゃんの新しいプロジェクトが発表された。

元NICO Touches the Wallsの光村龍哉が新バンドZION結成 (音楽ナタリー) 

https://u.lin.ee/miOViOa?mediadetail=1&utm_source=line&utm_medium=share&utm_campaign=none


光村龍哉という人は音楽がなければ生きられない人だろうなとは感じていたけど、活休後にアコギ1本で転々と路上ライブをしている姿をSNSで見かけてはいたけど。

あぁ、この人は今日も音楽をしている。




NICOのギター古くんがインスタのストーリーで、このみっちゃんの新バンドの結成を紹介していた。
そこには古くんのこんな言葉があった。

みっちゃんの新しいバンド!
それぞれ自分の求める次なる景色、人生に向かっているわけなので、もちろん応援するよ。
彼の可能性は理解してるので、とても楽しみです。
おいおいって思ったら普通に言うけど。
何があっても光村龍哉ですから。

https://instagram.com/daisuke_furumura?utm_medium=copy_link

私の好きだったバンドはもういない。
NICO Touches the Wallsはもういない。
NICOのみっちゃんも古くんもさっかんも対馬さんももういない。
そして、NICOに出会ったあの頃の私ももういない。

時は流れるし、人は変わる。


でも、確かに特別だった。
初めてNICOに出会った時、初めてNICOのライブに行った時。
私は決して彼らを支えられる程のガッツリなファンではなかったけど。
それでも、確かに私にとって、NICO Touches the Wallsは唯一無二の特別なバンドだった。


気付いたら別々の道だとしても、
みっちゃんにはみっちゃんの、古くんには古くんの、さっかんにはさっかんの、対馬さんには対馬さんの、そして、私には私の、それぞれの音楽がそれぞれの場所で今日も鳴っている。

そして、どれだけ時が流れても、どれだけ私もみんなも変わっても、
NICOの音楽が私を救い上げ、私を動かし、新しい世界を見せてくれた
その事実は未来永劫変わることはない。


2019年の11月から今まで言えなくてごめん。
活休に納得感 とか強がって言ってみたけど、多分ライトなファンである私でさえ納得できてなかったよ。それは正直今も、かも。

でも、もう、そろそろちゃんと、一区切りつけなくちゃ、とも思う。


さようなら 忘れない 忘れられない
今までありがとう 
NICO Touches the Walls。





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