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同じ下絵を違う描き方で描いてみた

絵のご依頼をいただいた際、どういうものを期待されたのか、コミュニケーションをとってイメージを掴んでいきたいと思っているのですが、意外と難しいと思うこともあり、ためしに同じ下絵で違う描き方したらどう見えるのか、描き分けてみました。(で、ついでに動かしてみました)10枚じゃ足りなかったような気もしつつ…

色鉛筆(筆圧高めグリグリ)

1コマ目。
この描き方、わりと気に入ってはいるんですが、
・塗る面積が増えるととんでもなく時間がかかる(そして筆圧高いので疲れる)
・ベタ塗りした上に描き足そうと思ってもあんまり色が乗らない
など、色鉛筆特有の問題もあって、解決策を探り中。

◎7thFLOORのイラスト(2013年2014年
カルピス冬限定ボトル(2017)
Netflixがスタートするときにカウントダウンで使っていただいた絵

などが、この描き方です。輪郭線はなるべく描かず、色面構成のフラットさに暖かい風合いを加味できる感じがいいかなーと思いつつ、過去の絵を見るとそんなに徹底してるわけではないですね笑。カルピスさんの絵などは、寒色だけでまとめた冬の絵なのに暖かい感じがすると、感想をいただきました。


シャープペンシル+色鉛筆

2コマ目。
シャープペンシルの細い線である程度細かい描写をしつつ、その上から色鉛筆でラフ目に塗っています。料理シリーズなどはこの描き方をしていることが多いです。

マレーシア屋台ごはん あ、こっちも
茅乃舎のカタログ「てまひま」のエッセイコーナー

マレーシア屋台ごはんシリーズは、プラスチックのお皿に乗ったあくまでも安いごはんなので、少しラフ目に振ってますが、茅乃舎さんの絵はそれよりもほんの少しだけ上品にしています。マレーシアごはんの感じが良いとおっしゃっていただいて、それを期待されることもあるのですが、料理の雰囲気に合うかどうかが大事だと思うので、多少、力加減を調整します。例えばケーキのスポンジなどは、ある程度優しいタッチで描かないと柔らかい雰囲気にはならないですね。(ただ、丁寧に描くと、それだけ時間がかかりますね。)マレーシアごはんシリーズは、A4の紙で、お皿の直径が12〜15cmくらいで描いてる絵が多いです。


色鉛筆線画+着彩

3コマ目
マレーシア屋台ごはんの料理をしてる人たちを、色鉛筆の線画で描いているのですが、この雰囲気で、カラーにしたい というときに使う描き方。着彩方法はいろいろあって、線画だけ取り込んで、着彩をデジタルでしているケースもあります。この絵はアナログのまま上から絵の具で塗っています。web上で探せる事例があんまりなかったですが、カット系イラストで描いてることが多いです。

見た目だいぶ違いますが、これもそうですね。これは色鉛筆で線だけ描いて、イラレで着彩しています。「ぼくらの未来シナリオ


アクリルガッシュ(ジェッソ+薄塗り)

10コマ目(解説の都合で飛びました)
ある程度大きな絵を描かないといけなくなったとき、色鉛筆ではもう無理だ!と思い開発した描き方。水彩と思われがちだけど実はアクリルだから可能な描き方で、ジェッソ(下地用の絵の具)を塗ったあとに、薄く溶いたアクリルで着彩します。ハードなエッジを保ちつつ、着彩自体はフラットに塗り(乾かないうちに一気に塗らないといけない+濃くしたいときは薄いまま重ねていく)、下地でつくった風合い浮かび出させる塗り方です。

このサンプルではいまいち特徴がわかりにくかったなと若干反省してますが、◎7thFLOOR 2015年5月
7thFLOOR 2015年8月
7thFLOOR 2017年3月
7thFLOOR 2017年8月
あたりは、この塗り方の特徴がわかりやすいかもしれません。

福利厚生倶楽部ガイドブック表紙
CREAの万城目学さんのエッセイ「眠れぬ夜には夢十夜」

などなど、大きい原画のイラストはだいたいこの描き方してました。

下準備に一手間かかる上に、塗り始めから完成まで一度も失敗できないので、割と緊張するのと、もっとラフな雰囲気を楽しめる描き方を考えたほうがいいのではとまた解決策を探り中。


ガッシュ+色鉛筆

4枚目
油性色鉛筆の風合い活かしつつ、もっと大きい絵も描けて、もっとラフな感じに仕上げられるのが描いてて一番楽しいんじゃないかと思って試し中の描き方。

7thFLOOR 2018
doodle #verb


透明水彩(文字はオブリークペン+カラーインク)

5枚目
仕事ではあんまり描いたことないんですが、ふわっとした絵になります。サンプルに文字入れてるのにちゃんとしたペン使って書いた文字ないなと思っていれてみました…

ボストンテリア
キウイ
横顔

↓オブリークペンってこういうのです。
PaperTypewriter
I'm out of ideas


Sketches app (iPad pro + apple pencil)

6枚目
いや、このアプリだとこういう絵しか描けないというわけではないのですが、このアプリの機能を使って、平日夜のちょっとしたエクササイズとして、主に生き物などを描き続けています。ちょっと切絵っぽい雰囲気になるのがいいかなと思っています。

Doodle_kirieppo


各種デジタルブラシ

描く内容についてあとで修正がはいる レイヤー分けしたい 動かしたい などの事情でデジタルで描くこともあります。何事も一長一短あるので、これからもちょいちょい研究しつつ、いい感じに描けるようになるといいなーと思っています。
(このサンプルはiPad proで、procreateで描いてます)

Masanori KATO 「PIANO COULORS」
展開の都合でレイヤー分けしたいとの希望で、Photoshopで描いています。
(アナログで描いたオリジナルのテクスチャも取り込みつつ、)

↓動くものも、だいたいPhotoshopで描いています。
What you want
nhhmbase「無明の門」
nhhmbase「水辺の鼓」
moools「単位」


線画+着彩(これはフルデジタル)

8コマ目
基本的には3コマ目と同じことしてるわけですが、線の種類と塗りの方法でだいぶ印象が変わるので、ちょっと違う印象のものももう一度いれてみました。


adobe illustrator

9コマ目
なんだかんだ、一番使い慣れてるツールのひとつ。イラレで仕上げない絵でも、実はイラレ上で配色プランを検討してるケースも多くあります。
イラレで仕上げる場合も、アナログのテクスチャを取り込んだり、エッジを工夫することでだいぶ印象を変えられますよね。


つなぐとこんな感じ

イラストレーターの方というのは、なんとなく僕のイメージでは、あの人はこういう素敵な絵を描いていて、あの人にお願いしたらこういう絵ができそうという期待感と安心感があって、依頼をするのだと思います。

実は、僕は画風のようなものを固定できる気がしなかったので、イラストレーターになるということをあまり考えていませんでした。(もちろん、憧れとか、嫉妬とか、そういうものも抱えつつ笑)

そして、なにかを伝えたいというお題があって、それに対して「ここにこういう絵があると伝わりそう」というイメージができ、それを、自分で描く。ということを(細々と)してきました。

そこから絵だけ切り離して、イラストのお仕事もするようになったとき、どういう着地の仕方を求められてるのか、きちんとコミュニケーションをとって確認をしたいところなのですが、それが意外と難しいと思うこともあるので、同じ下絵を違う仕上げ方で描くと、比較しやすくて便利かも?(完全に同じ絵を何枚も描くんだったらついでに動かしちゃおう)と思ったのでした。ただ、インスタが同時投稿できるのが10枚だったのでじゃあ10枚にしようかとあっさり考えて描いてしまったのですが、いくらでも枝分かれできちゃうし、10枚じゃ足りなかったかもしれませんね。いや、あんまり多くても大変ですけど。

普段のラクガキなど、わりと高頻度にアップしてるのはこちらです。
もうちょっと見たいとかあったら見てみてください。
naoya daily doodles

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