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サクザクリスキー


ふと世界を見渡すと、世界は幸せそうに見えました。
ウミガメに乗った若い二人も、クジラが潮を吹いたらそのまま炬燵ごと天に召されることがわかってる老夫婦も、みんな充実してるように見えました。
こういうとき、自分自身に意識を向けると、なんだか自分だけ穴が空いたような気持ちになるんです。

一度穴に気づいてしまうと、なんとも寒々しい気分になります。とても寒い。自動車が飛んでも、自分のことのほうが大きいのです。そんな中、一羽の鳥に。


鳥を穴に住まわせました。鳥は毎日歌い、大きく育ちました。

自由な鳥が、いつまでも穴の中に住んでいるわけはありません。
ある日、突然飛び去ってしまいました。

気が付くと、動物たちに拾い上げられ、運ばれていました。
クジラもキリンもヘラジカもラクダも、鯨偶蹄目。人間とゾウは違います。

到着したところで、他の人間たちに会いました。
彼らは彼らでなにかを抱えているように見えました。

穴が空いたような気分も、なにか楽しいことをしていれば埋まるかもしれない。そう思って遊びにいってみます。

みんな、楽しそうだなあ。

やっぱり穴はふさがりません。
ふらふらと魚の泳ぐ森のなかを彷徨いました。

ああ、あの蔓、ちょうど良さそうだなあ。

蔓に絡まって地面に落ちたとき、蔓が弦になって、綺麗な音が鳴りました。あ。この穴、音が出るんだ。

人はみんな、子どもで大人で、天使で悪魔で、サンタで七面鳥。
諸人こぞりて、歌いましょう。


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