2023年の始めに

最初に基本的な姿勢について。

 どのような価値体系あるいは教えが自分に合っているかというようなことを、今まであれこれと悩む時間があった。しかし、それだけ悩んでも、どれが正しいとか、自分にもっとも適しているとか、本当の意味で選び取ることはなかなかできなかったと思える。そもそも、どの価値体系を選ぼうとも、結局は選択の際に、なぜそれを選択するのかと問えば、最初から自分の中になにか説明のしようのない、意思というか指向というか、理由付けのできないものの存在があると考えざるを得ない。あらかじめ何らかの判断の基準が自分の中にないと、何も選びようがないということである。それ故、何かを選ぶ時には、結局は自身の直観に従って、エイッと決めるしかないと思える。誰がどのようなことを言っていても左右されずに、最終的には自分の直観を大事にして物事を決めてゆきたい。
 また、諸学問に対する向き合い方は、自分自身が主体となり、「充分納得のいくように」行う。学問の種類には依存せず、考える対象が何であろうが(医学であろうが数学であろうが)自分自身の見方、姿勢というようなものを貫くことが大事と思う。

 それでは、箇条書きにて。

1)現在の生業である、一般内科診療所における診療のレベルを維持し、今後も適切な診療が行えるよう、知識のアップデートと活動を継続する。common diseaseであってもできるだけ最新のデータにアクセスし、適切にアップデートしていく。そのために、コロナ禍で疎かになっていた各種学会や研修会、講演会などにも可能な限り出席していく。
 これは重要なことである。眼前の患者に現時点の最善の医療を提供できているかどうか心許なく感じる場合には、心のモヤモヤがとれないのである。これはやはり具体的で実際的なことである。

2)学位論文の完成を。もとより現在の生業に必須のものではなく、自分自身の医師としてのレベルを上げる目標で5年前に取り組み始めたことであった。すでに査読付き論文を2本publishしたところで、モチベーションが低下してはいるのだが、やはり大学に提出するものを作成し、最後まで当初の意思を通すことは大事と思う。

3)数学に対しても、きちんと時間をとって理解の向上を目指す。何年も取り組めない時期があったにせよ、ある程度の熱量を持って持続的に関心を持ち続けてきたものは数学である。自分の場合、数学を学ぶことが、世界全体の幅広い理解の助けとなるのかはやや心許ないが、それでも自分自身にとって追求する意味のある学問分野と直観的に思える。「医師がなぜ数学を学ぶ?」と問われても、自分に大事なものですからとしか返答のしようがないのである。そこで、やはり院のテーマであった2次形式の数論も含め、テータ関数、アイゼンシュタイン級数や保型形式の学習、また、類体論のしっかりした理解などが目標となる。最終的には、現代数学における最新の問題意識にできるだけ近づきたいと思う。

4)数学以外。思想的なこと、哲学や宗教など、関心のあったテーマを時間の許す限り深めてゆきたい。時間がいくらあっても足りないとは思うが、特に目標設定しているわけではないので、自分自身の内心の求めに応じ、「これは必要」と思われるレベルで知識を深めてゆく。

5)種々雑多な社会生活上の役割を、穏当に果たす。周囲の人々と距離を保ちつつも適度な関係を維持する。

 1年〜数年後に上記を読み返して自省し、その上でまた目標の再設定を行えばよいように思う。

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