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どこまでも

ねぇ、次の連休空いてる?

それは唐突な誘いであった。
しばらく連絡を取っていない友達からの久しぶりのアプローチであった。
不仲なわけではなく、それぞれの生活があるという忙しさがいつの間にか私たちの間に横たわり、たやすく手が届かなくなっていたのだ。
私はそう感じている。

どこかへ行こうよ

彼女からの連絡
彼女の提案に私は一瞬うろたえた。
どこかへ行こう、その言葉がまるで、ともに駆け落ちてくれないかという意味に感ぜられたからである。

しかし彼女の方はいたって普通に遊びのお誘いをしただけであった。

なぜ私は共に駆け落ちようなどという感じを受け取ったのか。
それは私自身がこの現実から逃げたいからではないだろうか。
そして彼女との関係がいっそう私に、ともに逃げようという感を起こさせたのではなかろうか。

私はふと懐かしい気分にとらわれた。
何が懐かしいのか、どこへ戻りたいという感情なのかはわからなかった。
なんとなく悲しさを伴うこの懐かしさ。
どうなりたいのかわからなかった。
ただ一つわかったことは、私はもう大切な何かが失われた地点にたっているということ。
私の心は淡く揺らぐ。
"ねえ
私を置いていかないで
知ってるの
今のあなたは私の知らない世界でキラキラしてるもの。
私は動けないの
私は未だに過去に足を絡め取られて
私のいない世界であなたが輝いているのを
直視できないの
私は私の世界を作れないでいるの
あなたがいなくちゃ、
そしてあなたが私のことだけを見ていなきゃ
そうじゃないなら私はずっと孤独なの
ねぇ

私このままずっと一人なのかなぁ。

あなたは私を置いていくし、
私は動けないし、
…私を連れ出してくれる人なんて、
…私を見つけてくれる人なんて、、ねぇ。"

ともに駆け落ちてくれないか。
そんな提案をしたいのは私の方。
恋じゃないけど、
ただ大切と思う気持ちだけでどこまでも行こうよ。
逃げようよ。
王子様なんて、待ってても現れてくれないんだからさ。