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イヤフォンの思い出話

【1】

海風が肌寒いベンチ、後ろには高速道路。
最新のイヤフォンからは、ピンク色の空によく似合う英語の曲が流れていた。
そこには、無垢な女と何かを諦めた彼がいた。

人生で最高の瞬間だと思った。

あぁ、もう月が沈んでしまいそう
昼夜が逆転するにはまだ早いんじゃないか
もっとじっとりと、時間をかけていただきたい。

【2】

船に乗るのは何年振りだろうか。。
嬉しくて写真を撮る私に、
「落ち着きないね」と言う彼女は少しの嫌味もなく可愛い。

窓から白い波が消えていく様子を眺めていると、突然右耳を触られた。
というか、イヤフォンをぶっ刺された。

聴いたことのない、明るい声の洋楽が流れていた。
白い波の行方はどうでも良くなった。

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