Foeget me (NOT)が終わった

よ~やっと終わりました 6年だか7年だか書き続けていたものが…
noteに移してからは4年ぐらいなんですけど、もともと個人サイトに載せてたものなのでちゃんとした時期がわかりません!
最初はこんなに長く書くつもりはなく、高校生編で終わるつもりだったのですがこういう話が書きたいな~という構想に失恋した海月ががっちり合ったので大学生編を書いて、カツターくんのご厚意で昴のキャラデザもしてもらいなんだかんだで大学生編が一番書いたのかな。ありがたや…。

海くんと海月が別れるとは書いた当初全く思っていなかったんですが、なんとなく二人がこのままずっと一緒にいることはないだろうなと思っていたのも本当です。世界観が現代日本なので男二人が合法的にパートナーとして生きていくのも難しそうだしね。でも喧嘩したとか気が合わなくなったとかじゃなくて、もとの友達に戻ろうねという形で二人は関係を解消するんじゃないかと思って書きました。海くんはそもそもカツターくんのキャラクターなので私には何を考えて生きているのかっていうのが全く分からなくて、でも海月が好きになる人だからこうするんじゃないかなと想像して書いています。海月にも海くんのことってあんまりわかってないんじゃないかなと思います。理解しあえるから一緒にいられることもあるし、理解できないことを理解しながら一緒にいられることもあって、海くんには海月のことはわかっていたと思うんですが海月から見ればわからなかったんじゃないかなと…だから一緒にいられなかったのかもしれないし、海月が海くんを失ってしまったらどうなるかも想像がつかなかったんだと思います。
渺々たる空の鏡は今読むとめちゃくちゃ恥ずかしいんですけど高校生編の始まりの話なのでできるだけ加筆や修正をせずに個人サイトからそのまま引っ張ってきました。これを書くにあたって一通り読み返してきたんですけどマジで…読んでてもうちょいうまく書けい!て思うんですけど当時のパッションを感じるので一生このままで置いておこうかな…。

もう二度と進まない秒針からが大学生編になります。幸希と昴が出てきます。二人は海くんの要素を少しずつ分けたキャラクターになっています。
幸希はその後ずっと出てくるキャラクターとして、海月とバランスが良くなるように設計しました。彼は海月に会う少し前に家族を交通事故で亡くしていて、彼の言葉で言わせるとありふれた不幸の被害者です。自分に言わせてみれば最悪の出来事で、けれど俯瞰してみれば年に何百何千とある事故のたった一件に過ぎないギャップに苦しんでいて、自分の一人の人間としての苦しみを素直に抱えられていないキャラクターです。彼にはその自己を一生分の不幸として嘆く道もあったはずですが、それを選べなかったことで苦しむと同時に、それを選ばなかったことが強さの一つでもあります。世話焼きな気質が海くんからもらった要素の一つで、幸希は海月を半ば信仰するように想っている面もあるので海くんのことは強く憎んでいます。同族嫌悪。けれど海月のことを試すような行動をしたり、海月の意に反する行動をしたりもします。それは海月がどれだけ自分のことを許してくれるか不安に思っての行動であり、それに対しての罰があれば受けるし、もし許してくれなかったら謝る素直さも持っています。
昴は作中にも出てくる「僕が突然いなくなっちゃって、しばらくしてから見た目の似てる全然違う人が現れたら、どうする?」「その人を僕の代わりみたいに見ちゃうと思う?」という問いかけのために生まれたキャラクターです。なのであんまり個性を出さず、海月にとって毒にも薬にもなりうる怪しい人間として設計しましたが、カツターくんによる天才キャラデザのおかげでだいぶ薬寄りの人間になりました。海くんを彷彿とさせながら無害そうなデザインをしてくれたのハオすぎるぜ…海くんを重ねて見てしまっているって言ってないのにこのデザイン上がってきましたからね。すごすぎる。柔らかな風の下では昴が薬になってくれたおかげで生まれた話です。彼は幸希とは逆に普通の家庭で普通に育ち、これからの社会の一員として普通に生きて普通に結婚して普通に死んでいく人間です。だから海月との関係も学生を終えればなくなるし、けれど思い出は一生抱えていくんだろうなと思います。話は少し戻りますが、海月は昴のことは海くんの代わりとしては見ていません。けれど海月は昴に海くんを重ねて見てしまっていて、その中で海くんが与えることのできなかった安らかな居場所をくれる昴のことを好きになっていっていました。そこらへんは昴は無自覚ですね。彼にとっての普通が海月の手が絶対に届かない欲しかったものなんだと思います。海月は家族愛が足りなかった人間なので…。
作中で投げっぱなしになってしまったかなと思っている幸希と昴の関係性なんですが、二人は海月がいなければ絶対に交わらないタイプでありながら、海月への感情を抜きにすればいい関係を築けると思っています。昴から見れば幸希は海月と同じような自暴自棄な人間に見えているし、でもそれを隠そうとして海月の世話を焼いていることを昴は知っています。幸希から見ると昴は家族が事故に遭う前の自分を見ているようで羨ましくもあり憎くもあるのですが、何せ昴が無害な人間なのでそういった負の感情を向けていることは隠しています。昴は幸希のことを友人として好きですし、同情で恋人になることは不誠実だと思うから友人としての距離を保とうとしています。幸希の過去についてもなんとなく察しているだけで深く立ち入りはしませんし、海月との関係についても幸希が不安定になるほどの何かがあったということだけを知っていてそれ以上は知りません。幸希も昴に救われていった人間の一人ですし、二人はこれからもいい友人で在れると思います。あと幸希は割と快楽に弱いところがあるので、自分で制御できる攻め側を選びがちなのですが、昴に抱かれてめちゃくちゃになっているシーンをかけて楽しかったです。
薄片、あるいはコマ送りの日常と柔らかな風の下での二本では昴と海月の関係が深く描かれています。というか書きたいようにサイドストーリーを足していったらいつの間にかメインになっちゃうぐらいの内容になったのがこの二本です。
薄片、あるいはコマ送りの日常は一番大学生編の空気が出せたと思います。この三人に似合う季節は春だと思っているので、夜桜と海月が描けたのが良かったなと思います。この花見のシーンがなければ柔らかな風の下での独白はなかったと言っていいでしょう。仮に海月の告白で昴が恋人になる道を選んだとしても、昴が言うような「同じ場所には立てないという本能」は正しく、二人の間には溝が残りお互いが傷つけあう結果になっていたと思います。海月の性質として誰かと一緒にいるときほど孤独を感じてしまうというものがあるので、深く立ち入らずに本当に道を踏み外してしまいそうになった時に手を差し伸べてくれるぐらいの距離にいるぐらいがお互いにとって適正なのです。
柔らかな風の下では海月が今まで誰にも明かさなかった海くんへの感情や海くんを失ってからの心境や、次第に昴や幸希に救われていったことを明かしてくれます。もちろん幸希なしでは生きていけなかっただろうなというぐらい身の回りのことは何にもできなかったのですが、精神面では昴がまっすぐに向き合ってくれる中で「わかり合えないことをわかっている」というのが海月と昴の共通認識としてありました。そのおかげで二人は恋人としてではなく(限りなく恋人には近いけれど)お互いに一歩引いて接していられたことがお互いの居場所を作っているいい関係で、もう二度と会わない相手だからというのもありましたが、海月が一番信用している相手として心情を素直に吐露できたから生まれた物語でした。きっと昴は海月を失って海月と同じようにどこかに面影を求めたりもし会えたらなんて思うことがあると思います。けれどそういう反応が正しいことを海月が教えてくれたおかげでそんなに苦しまずに生きていけると思います。これは海月が海くんに抱いていた感情が大きかったとかそういう違いではなく、ひとえに海月が最後にかけた「呪い」のおかげです。この漢字にルビを振らなかったのは昴自身が初めには毒でもあり薬でもあったのと同じように、海月の言葉で彼が傷つくのと同時に救われることを指しています。

さて、終章のえにしのむすびめとアイの為の寂光についても一応…話しますか…。
えにしのむすびめが一応ちゃんとした終わりの話でアイの為の寂光はIFなんですがnoteで公開してるのがアイの為の寂光だからわかんないよね。えにしのむすびめは表紙の印刷が最高なのでよかったら物理本を買ってください。まだBOOTHに置いてるので。宣伝終わり この二本については言いたいこと全部言っちゃってるというか今更説明いるか?ていう感じなんですが一応ね…全部振り返る名目だし…。
「えにしのむすびめは、海月が彼女を救うことを選んだ世界線だと思ってほしい。そしてこれから上げるものは、彼女が彼女自身を救うために海月が必要だった世界線。海月でなければいけなかった理由とか、正直ない。そういう運命だったとしか言いようがない。」
この文章はアイの為の寂光をアップするちょっと前にあげたnoteからそのまま引っ張ってきましたが、この文章以上のことってあんまりない。というか今読み返してみて思ったけどこの二本に関しては作品中で語られてることがすべてかもしれません。いや全部の作品がそうだったら一番いいと思うんですけどね?いらんこともしゃべらせてくださいよ 喋りたさが先行してミスタイプばっかだよさっきから
というかアイの為の寂光で本当の本当に最後って言ってるのに全然追加しちゃっていますね~これ書きあがったらまたなんか増えてるかもしれないですね~もうさすがに引き出しないですよ。本当。
アイの為の寂光のあとの海くんの話とかめちゃくちゃ読みたいですからね。海月が自殺できない理由は作中でも書いた通り海くんなんですけど海くんは…どうなんだろうね…友人が死ぬってどういう感じなんだろうね…しかも昔の恋人って…。

最後に海月について書きましょうか。全体を通して海月って群像でしかなくて、彼自身の言葉で彼が語られることって少なかった気がするので。
海月は裕福な家庭に生まれました。海月の姉は海月が生まれたことで家を継ぐという責任から逃れられることを喜び、遊び歩くようになりました。海月はそんな自由な姉を見て育ったので、性への奔放さはここからきています。海月の母はそんな姉を自分が育てた子供だと信じられなくなり、海月を姉と同一視し始めるようになります。女の子用の服を着せられたり、等々。そのため海月は母のことが苦手で、それを見て何もしなかった父に対しても怒りを覚えています。が、決して反抗することはなく、親から望まれるままのいい子を演じ続けました。
中学までは恋愛に興味はなく、かといって勉学に熱心だったわけでもなくそれなりの生活をしてそれなりの高校への進学を決めました。ここで恋愛に興味を持てなかったのは性別の問題ではなく、付き合ったり別れたりすることが周囲のコミュニティでの話題として扱われることが嫌で、恥だと感じたためです。周囲から見れば聞き分けのいい子、親から見ても言うことをよく聞く子供です。この頃姉が自殺をして、その傾向は強まっていきました。
高校に進学し海くんと出会ったことで海月の世界は一変します。今まで周囲に合わせて性格を使い分けてきた海月にとって、飾らずに接することのできる相手は初めてでした。また一人暮らしを始めたこともあり、誰にも縛られずにいられる時間を手に入れたことで初めて自分が哲学的な分野に興味があったことに気が付きます。
初めて人を好きになるという経験をして、海くんからの愛情を受け取ることで、自分は海くんへ与えられた以上の愛を与えられているのかという疑問が浮かびます。誰かに頼るという経験のない海月は次第に不安になっていきます。どこまで許してくれるのか。失望されないか。その不安は膨らんでいき、海くんの海外留学を機に別れることを決意します。嫌われて別れるぐらいなら、お互い好きだったといういい思い出だけを残して別れるほうが幸せだと信じていたからです。
大学は文系の哲学を学べるところへ進みましたが、どのコミュニティにも属せず孤立していきます。そうしてふらついていたところを素行があまりよろしくない名前も知らない先輩に目をつけられて、アルコールと煙草とセックスに塗れ、溺れていきます。そのうち学業には身が入らなくなり、自分が空っぽになっていく感覚が海月を襲いセルフネグレクト気味になります。留年を繰り返し、つるんでいた先輩たちが卒業していったことで海月はまた孤独へ戻ります。先輩たちに立っていた悪い噂も次第に海月一人へのうわさに立ち代わり、昴をはじめとする普通の学生の耳にも入るようになります。
そんな時に現れたのが幸希です。基本的にどんなことでも言いなりになる幸希を海月は気に入り、また適度に世話を焼いてくれることで海月は少し健康さを取り戻します。また昴と出会ったことで海くんとの別れを選んだのがもしかしたら間違いだったのかもしれないと考え始めます。昴は海月に何も与えませんでしたが、幸希とはまた違う普通というものを海月に再認させました。その後も海月は不特定多数と関係を結びましたが海月に深く立ち入ろうとしてきたのは二人だけでした。
そのうち海月は海くんのことを考えなくても平気な時間が増えていきました。それと同時に学業にも少しずつ復帰し、どうにか卒業にありつきます。留年を繰り返し家族との関係はあまり良好とは言えなくなっていき、特に母はあんなに真面目な子がどうして留年なんかしているんだろうと不思議がりました。ですが父はあまり気にせず、生きているならそれでいいと自身の持っていたアパートの管理を任せることを決めました。
海月は卒業し、特に定職には就かず父親に任されたアパートに住み住人の管理をすることにしました。海くんのことは過去のこととして気持ちの整理がつき、その翌年には幸希が卒業し適度に監視を続けてくれるようになりました。その後は特に大きな事件もなく、何もない日常をただ続けていくことになり、海月はそれが一番の幸福と感じるようになりました。

一通り書きたいことを書きました。Forget me (NOT)を全部読んでこの記事まで読んでくれたガチ勢のみんな、ありがとう。私は自分のために海月の物語を描いたし、たぶんこれから生きていく中に海月はいないと思う。だからこれで終わり。私も海月みたいに何もない生活をただ幸せと感じるようになりたいなと思います。

無理な金額は自重してね。貰ったお金は多分お昼ご飯になります。