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フォード・フォーカス 『福野礼一郎のニューカー 二番搾り』

2013年3月15日

フォーカス・スポーツ 車台番号:MPB1XXMXB1CT22037

市街地は普通ですが

 東名高速・沼津インターチェンジを降りておよそ20kmほど走った伊豆の国市の伊豆長岡温泉にある三養荘は、もともと1929(昭和4)年に旧三菱財閥の岩崎家別邸として造成されたもので、壮大な日本庭園は、近代日本庭園の祖として知られ、平安神宮神苑や円山公園、山縣有朋別邸の無鄰菴などの作庭もおこなった小川治兵衛という人物の手によるものだという。どのようないきさつがあったのか、戦後1947年には早くも西武鉄道の経営で旅館としての営業を始めたようで、現在もプリンスホテル&リゾーツの傘下にある。
 エントランスや駐車場はこじんまりとしているが、中に入ると広大なお庭に本館と新館が造られ、渡り廊下をえんえんと行くと、客室や宴会場、大浴場などに繋がっている。下足を脱いで上がるのは当然としても、廊下はすべてカーペット貼りで、スリッパは用意されていない。洋装の人間は靴下のまま、はたはたと歩くしかなく、そこがなんだか面白い。
 フォードが日本市場にひさびさに投入したCセグメントカー、フォーカスの報道試乗会は、こういう素晴らしいロケーションで開催された。
 我々が借用したのはマスタードオリーブという名前の、強烈な色合いのメタリックに塗装された1台。黄色味と緑味が強くてフレークが粗い感じは、ゴールドメタリックというよりもブラスメタリック(=真鍮色)と呼びたい感じだ。
 以前から写真で見てカッコいいなと思っていた巨大な台形グリルのフロントマスクは、近くで見ると、両サイドの三角形の部分が思いっ切りダミーグリルだった。これは若干ショックだった。
 スペックを見ると全高が1480mmもあって、同クラスのライバル車より50~60mmも高いはずなのだが、ボンネット後端を持ち上げつつ、大きく傾斜したフロントウインドウにスムーズにつなげたユニボックス的なシルエットと、サイドウインドウを上下に薄くして、後方にむけて跳ね上げて行くことでキャビンをうすべったく見せる視覚効果、そして誰よりも広い1810mmもある全幅のせいで、まったく腰高な感じには見えない。
 テールランプの大胆な意匠は、遠戚関係にあるボルボV40と好勝負という感じだが、その意匠にフューエルリッドを溶け込ませたアイディア(右ハンドル側)は見ててなんか嬉しくなった。

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