【論文紹介】Effect of Temperature on Human Sensitivity to Sweetness

論文:Effect of Temperature on Human Sensitivity to Sweetness
著者:Yoko Okamoto, Keiko Yoshida
https://www.jstage.jst.go.jp/article/cookeryscience/47/2/47_97/_pdf
日本調理科学会誌

どんなもの?

 物質の温度が味の感じ方に与える影響を調べるために、8種類の甘味料と市販の甘味飲料を対象に、甘味の強さを官能評価法で測定した。実験の結果、8種類の甘味料のうち温度による甘味の強さの違いは、D-クラフトースとキシリトールに見られ、他の甘味料には見られなかった。市販の甘味飲料では、25℃よりも7℃のほうが甘味強度が弱く、25℃よりも43℃のほうが甘味強度が強いものが多く見られた。

先行研究と比較してどこがすごい?

 先行研究では、温度変化による化学物質に対する人間の感受性の変化は報告されているが、最近では報告されていない。また、報告された多くの結果は矛盾していた。そこで、物質の温度が味の感じ方に与える影響を調べるために、この論文では甘味料と市販の甘味飲料の甘味強度を官能評価法で測定した。

技術や手法のキモはどこ?

 8種類の甘味料をそれぞれ純水に混ぜて、サンプルの溶液を作成した。甘味液の濃度は、甘味が感じられるように設定した。市販の甘味飲料は酸味のない製品を11種類選んだ。
 糖度の測定には、携帯型屈折計を用いた。

どうやって有効だと検証した?

 被験者にはまず標準溶液(25℃)を飲み、順番に甘味飲料を飲んでもらった。標準溶液の甘さを0として -3 ~ +3 の7段階(+1は「やや甘め」+2は「やや甘め」+3は「かなり甘め」-1は「やや甘さ控えめ」-2は「やや甘さ控えめ」-3は「かなり甘さ控えめ」0は「同じ甘さ」)で評価してもらう。
 各溶液の評価スコアを平均値±標準偏差で表し、各変数はShapiro-Wilk検定で正規性を検定した。また、官能評価の評価点データを量的変数として分散分析を行った。

→7℃ではD-フラクトースとキシリトールが、それぞれの標準溶液よりも有意に甘く感じられた。43℃ではD-フルクトースとキシリトールは、それぞれの標準溶液よりも有意に甘くないと感じられた。
 甘味料の種類によって、甘さの感じ方が異なる。7℃~25℃、25℃~43℃では甘さの感じ方に違いはなかった。

→11種類の甘味料入り飲料のうち、7℃では5種類の飲料でそれぞれの基準に比べて甘さの感じ方が有意に弱く、43℃では7種類の飲料でそれぞれの基準に比べて甘さの感じ方が有意に強かった。
 甘味飲料の種類によって、甘さの感じ方が大きく異なる。7℃~25℃、25℃~43℃では甘さの感じ方が大きく異なる。

議論はある?

 市販の甘味飲料と甘味料の結果が異なったのは、市販の甘味飲料には甘味料以外の成分が含まれているからでは。

次に読むべき論文は?(気になった論文)

 CruzとGreen(2000) (Cruz, A. and Green, B. G. (2000), Thermal stimulation of taste, Nature)

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