【論文紹介】The drinking experience: Cup or content?


論文:The drinking experience: Cup or content?
著者:Hendrik N.J. Schifferstein
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0950329308001535
Food Quality and Preference

どんなもの?

 食べ物の容器の特性が飲料を飲むときの経験に及ぼす影響を調べた。2つの実験で、異なる素材で作られたカップを使用して、空のカップを持ったときの体験と、カップから飲み物を飲むときの体験を比較し、カップの違いがそのカップから温かいお茶や冷たいソフトドリンクを飲むときの体験に影響を評価する。実験の結果、判断する属性によってカップの材質が試飲の体験にどのように影響するのかは異なるということがわかった。また、食べ物を食べるときに使用する容器が、食品の経験や評価に大きな影響を与えていることがわかった。

先行研究と比較してどこがすごい?

 食べ物を食べるときには、素材や形状、外観など様々な容器を選ぶ。容器を選択することは、消費中に食べ物がどのように知覚されるのかにも影響する。容器の感覚的な特性は、食べ物を食べるときの体験にも影響を与えることがわかっている。(包装紙のパリっとした音がパンの新鮮さを感じさせる) この研究では、食べ物の容器が食べ物の消費体験にどのような影響を与えるのかを判断する方法を開発した。

技術や手法のキモはどこ?

 いくつかの種類のカップに、空(何も入れない)、温かいお茶、冷たいソフトドリンクを入れて提示する。
 実験1で使ったカップの素材は、ガラス、釉薬をかけた陶器、ステンレス、ポリスチレン、低密度ポリエチレン、厚紙、発砲ポリスチレンを選んだ。素材は違うが、形や大きさはほぼ同じものを選んだ。
 実験2で使ったカップの素材は、ガラス、セラミックス、不透明プラスチック、半透明プラスチック、メラミンを使用した。(実験1のときよりもカップ間のサイズと形状の違いをさらに小さくした)

どうやって有効だと検証した?

〇実験1
 空の状態、温かいお茶、冷たいソフトドリンクをそれぞれ7つのカップで提示する。その後、温かい-冷たい、柔らかい-固いなどの感覚的な側面と、優しい-厳しい、壊れやすい-頑丈といった意味的な起源を持つ側面、興奮-冷静といった感情に関連する側面を評価してもらう。

 23項目の項目(「温かい-冷たい」等)に対して、1つの刺激に対する1人の被験者の回答をケースとして、各条件においてバリマックス回転を用いた主成分分析(PCA)を行った。3つの分析のうち、対応する因子への因子負荷が高い項目を用いて、合計尺度を作った。
 23の個別項目すべてを従属変数とし,7つのカップについて繰り返し測定する二重多変量分散分析(MANOVA)を行った。合計尺度の得点と個々の項目の評価を、条件を参加者間因子、カップの材質を参加者内因子として、別々の単変量反復測定分散分析(ANOVA)で評価した。

→柔らかさの評価において、ガラス製のカップは温かいお茶が入っているときの方が、空のときやソフトドリンクが入っているときよりも高くなった。快感の評価は、ガラス、釉薬をかけた陶器、ステンレスのカップで高く、他のカップでは低かった。ただ、ソフトドリンクを飲むときは陶器製のカップの快感の評価は比較的低くなった。

 液体を入れるとガラス、釉薬をかけた陶器、ステンレスのカップでは、弱さの評価が上がり、ガラスと釉薬をかけた陶器では壊れやすさの評価が下がった。また、釉薬をかけた陶器のカップで試飲した場合、「不快・気持ち悪い」の評価が比較的低かった。ガラス製の陶器やプラスチック製のカップでは、温かいお茶を入れると温かい評価が高くなり、冷たいソフトドリンクを入れるとカップの温度は変わらないが「温かい」評価が減少した。

 ガラス製や陶器製のカップの方が金属製のカップよりもお茶を飲むのに適している。ポリスチレン、低密度ポリエチレン、厚紙、発砲ポリスチレンのカップはお茶を飲むのに適していない。ソフトドリンクを飲むときには、コップが透明であることが最も重要であるとわかった。

〇実験2
 空の状態、温かいお茶、冷たいソフトドリンクをそれぞれ5つのカップで提示する。
 被験者は、カップに触れたときやカップから飲んだときに体験したことを単極性の項目(1「全くない」から7「非常にある」まで)を31個の7段階で評価する。
 二重多変量(ANOVA)を使って評価した。

→温かいお茶を飲むのに適しているのは陶器とガラスで、ソフトドリンクを飲むときに適しているのは透明なカップだった。(実験1と同じ結果)
 温かいお茶や冷えたソフトドリンクに適したカップは、より楽しい、好ましい、刺激的、美しい、澄んでいる、純粋である、そして悪さや甘さが少ないと評価された場合に増加することが明らかになった。

 ガラス製,不透明なプラスチック製,メラミン製のカップは,アイテムの甘さに対して有意であることがわかった。(下の表通り(左から空の状態・温かいお茶・冷たいソフトドリンク))


〇実験全体
→カップの材質が試飲の体験にどのような影響を与えるのかは、判断する属性によって異なる。(抽象的な項目を含む多くの属性では、試飲の体験は空のカップに対する回答と一致する。「温かい」の項目では、カップの外側の温度に関連した回答が得られるが、実際はカップの材質によって熱伝導率が代わってくるので空の状態のときと評価が代わる。)
 食べ物を食べるときに使用する容器が、食品の経験や評価に大きな影響を与えることがわかった。(カップを評価するときの「壊れやすい」という感覚は「使っているうちに壊れてしまう」や「床に落とすと壊れてしまう」などといった経験に関連している。)

議論はある?

 温かいお茶を入れたときに、全てのカップの温度が同じように上がるわけではない。これは実験に影響しないのか。
 カップの形や大きさを同じようなものにしても、見た目の素材が違うのでは?

次に読むべき論文は?(気になった論文)
  3‐D printed texture spoons for food flavor and satiety


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