【論文紹介】FoodFab: Creating Food Perception Illusions using Food 3D Printing

論文:FoodFab: Creating Food Perception Illusions using Food 3D Printing
著者:Ying-Ju Lin, Parinya Punpongsanon, Xin Wen, Daisuke Iwai, Kosuke Sato, Marianna Obrist, Stefanie Mueller
https://dl.acm.org/doi/pdf/10.1145/3313831.3376421
CHI2020

どんなもの?

 食品の3Dプリントをして、定義されたカロリー量の満足感のレベルを制御するための知覚的な錯覚を作り出すことを研究した。FoofFabは、3Dプリントと2つのパラメータ(インフィルパターンとインフィル密度)を用いて、食品の内部構造を変更し、食べ物の摂取量をコントロールすることができるシステムを開発した。実験の結果、インフィルのパターンと密度を変化させることで、実際に咀嚼時間を変化させることができ、満腹感のコントロールが可能であることがわかった。

先行研究と比較してどこがすごい?

 先行研究では、食べることを我慢するという考え方は食べ物の手がかりをより魅力的なものにしているということがわかっている。この研究では、3Dプリントされた食品の構造を変えることで、より目立たず、被験者が気付きにくい方法で被験者の食品摂取に影響を与えることを研究した。

技術や手法のキモはどこ?

 FoodFab:被験者の食べ物の摂取量をコントロールすることをサポートする食物3Dプリントシステム。同じ量のカロリーで異なる咀嚼時間の食品構造を作成するために、インフィルパターンとインフィル密度を変える。

〇実験1:インフィルのパターンが咀嚼時間と満腹感に与える影響の調査
 同じ物理的質量、同じカロリーでインフィルパターンが異なる3種類(ハニカムインフィルパターン・ヒルベルトインフィルパターン・レクティリニアインフィルパターン)のクッキーと、比較のための普通のクッキーを用いた。
 4種類のクッキーはそれぞれ違う日に1種類ずつ食べてもらう。最初に被験者の満腹感についてアンケートをとり、クッキーを10枚食べてもらう。その後、最初と同じアンケートをとり満腹感の評価をしてもらう。

〇実験2:インフィルの密度が咀嚼時間と満腹感に与える影響の調査
 実験1と同じ手順で、インフィルの密度の違いが咀嚼時間と満腹感に与える影響を調査した。3種類のクッキーのインフィルの密度を変えた。インフィル密度を変えると大きさも変わる。

どうやって有効だと検証した?

〇実験1
 一元配置分散分析(ANOVA)とbonferroni法を用いた事後解析を行った。
→ハニカムインフィルパターンのクッキー、ヒルベルトインフィルパターンのクッキー、レクティリニアインフィルパターンのクッキーの順番で咀嚼時間が長かった。ハニカムインフィルパターンのクッキーを食べた後の方が他のと比較して空腹感を感じなかった。満腹感のパターン間での有意差は認められなかった。

〇実験2
 一元配置分散分析(ANOVA)とbonferroni法を用いた事後解析を行った。
→ハニカムインフィルパターンのクッキー、ヒルベルトインフィルパターンのクッキー、レクティリニアインフィルパターンのクッキーの順番で咀嚼時間が長く、空腹を感じなかった(満腹感が増えた)。インフィル密度は、満腹感に有意な影響を与えることがわかった。

議論はある?

 食品構造モデルの特徴が異なる食べ物でもこの技術が使えるようにする方法はないのか。
→より多くの種類の食品に一般化するためには多くの食材や食品の形状についての研究が必要になる
 インフィルパターンとインフィル密度以外のパラメータを変更することで咀嚼時間や満腹感は変わらないのか。
 インフィル密度を変えたときにクッキーの大きさも変わったがこれは満腹感に影響はなかったのか。

次に読むべき論文は?(気になった論文)

 Spot-Light: Multimodal Projection Mapping on Food.
 Illusion Cup: Interactive Controlling of Beverage Consumption Based on an Illusion of Volume Perception
 Changing Drinking Behavior and Beverage Consumption Using Augmented Reality


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