【論文紹介】Tasting spoons: Assessing how the material of a spoon affects the taste of the food

論文:Tasting spoons: Assessing how the material of a spoon affects the taste of the food
著者:Betina Piqueras-Fiszman, Zoe Laughlin , Mark Miodownik, Charles Spence
https://reader.elsevier.com/reader/sd/pii/S0950329311001765?token=071E8D882B46B157CB79F2140258151A0CF456F5C5072CF2797BE639347230995E5405317F907D636159E2EFD89A98D4&originRegion=us-east-1&originCreation=20210614063648
(スプーンの材質に関する論文)
Food Quality and Preference

どんなもの?

 特定の金属の味が食品の知覚に与える影響を調査した。金、銅、亜鉛、ステンレスの金属でメッキされたスプーンを用いて、甘味、酸味、苦味、塩味、プレーンのクリームを試食した。その結果、亜鉛と銅のスプーンは、やや金属的で苦い味がする。また、亜鉛と銅のスプーンは、それぞれのクリームの味を引き立てることがわかった。亜鉛と銅のスプーンの金属味は、心地よさに影響を与えないこともわかった。これらの結果から、カトラリーの素材となる金属が知覚に与える影響は、食品の組成に金属塩を加えたときと異なることがわかった。

先行研究と比較してどこがすごい?

 先行研究では、同じヨーグルトを食べるときに金属製のプラスチックスプーンで試食した場合とステンレス製のスプーンで試食した場合とでは、被験者の品質判断と嗜好判断が大きく異なり、ステンレス製のスプーンのほうが高い結果になった。このように、先行研究では食品を食べるときに使うカトラリーは食生活に影響を与えていることがわかっている。しかし、この結果がスプーンの重さや温度などの物理的性質の違いによるものか、それとも全体的な記号論理的評価(プラスチックと金属のスプーン)によるものなのか不明だった。食事の際に使用するカトラリーに焦点を当てた論文はほとんどなかった。
 カトラリーの味が、そのカトラリーを使って味わった食べ物の味の認識に影響を与えるほど強いかどうかを報告した研究はまだない。

技術や手法のキモはどこ?

 Laughlinらの研究で使用されたものと同じスプーンを利用。同じスプーンを4つ用意した。ステンレス製のスプーン3本に金、亜鉛、銅の電気メッキを0.01mmの厚さで施し、4本目はステンレス製のままにした。
 砂糖、レモン果汁、lemonpith、食塩を用いて味・風味の異なるクリームを4種類、プレーンのクリームを1種類用意した。

どうやって有効だと検証した?

 目隠しした状態で、5種類のクリーム(苦味、酸味、塩味、甘味、プレーン)の苦味、甘味、塩味、金属味に対する金属の影響を調べる。これらの組み合わせに対する快楽的反応を評価する。次に、目隠ししない状態で、スプーンの見た目が食品の知覚に影響を与えるかどうかを調べる。

 苦味、塩味、甘味、金属味、快感の知覚に有意な影響を与えるかどうかを調べるために、これらの要因を独立変数として、消費者、スプーンの種類、試食品、およびそれぞれの相互作用を変動要因として、データの分散分析を行った。
 スプーンの外観が評価に影響するかを調べるために、目隠しした状態としてない状態の2つの条件で、金のスプーンとステンレスのスプーンの評価について別々のANOVAを行った。

→亜鉛と銅のスプーンは、ステンレスと金のスプーンよりも苦いと評価した。
甘味はスプーンに影響されなかった。亜鉛と銅スプーンはより塩味を強く感じた。
銅と亜鉛のスプーンで試食したサンプルは、ステンレスと金のスプーンで試食したサンプルに比べて、有意に金属的な味がすると感じられた。銅と亜鉛のスプーンで試食した甘いサンプルが最も好まれ、若干の甘さを感じることができた。しかし、亜鉛と銅のスプーンで食べた塩味のクリームは、最も嫌われた。甘いクリームと酸味のクリームは同じように好まれた。

→異なる金属でコーティングされたスプーンは実際に味が異なり、その違いは食べ物の味や心地よさの知覚に影響を与えるほど大きかった。
 金やステンレスのスプーンに比べて、銅や亜鉛のスプーンは金属味が強く、甘いサンプルの苦味が強調された。しかし、銅や亜鉛のスプーンは甘味をわずかに増強し、塩味を抑制できた。また、苦いクリームや酸味のあるクリームでは、苦味や塩味が強く感じられた。
 この結果は、Keast(2003)の結果と対照的である。(彼は、亜鉛を甘味料と苦味料に添加すると、甘味と苦味がそれぞれ強く抑制されることを発見した。)
 塩味のクリームでは、銅と亜鉛のスプーンによって苦味と塩味が強調され、結果的に心地よさが減少するという結果が得られた。
→亜鉛と銅のスプーンは、それぞれのクリームの味を引き立てることを示した。また、スプーンの種類は快楽的にも影響を与えた。ある金属が実際の食品に添加されたときに食品の知覚に及ぼす影響は、食器の金属が及ぼす影響とは全く異なることが明らかになった。

議論はある?

 クリームの刺激は単純で実験しやすいが、より複雑な食べ物(オムライスとか)に対する金属味の影響はどうなのか。(他の食べ物の特性を考慮してみたら面白そう。)
 スプーンの金属が金属感覚に影響を与えているのなら、スプーンも食べ物の全体的な風味に影響を与えているのではないか。

次に読むべき論文は?(気になった論文)

 Laughlin, Z., Conreen, M., Witchel, H. J., & Miodownik, M. (2011). The use ofstandard electrode potentials to predict the taste of solid metals.Food Qualityand Preference, 22, 628–637

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